イタリアンレストラン開業で成功!必要な手続きと成功の秘訣

イタリアンレストラン開業で成功!必要な手続きと成功の秘訣

イタリアンレストランは、多くの人々に愛される人気の業態です。魅力的なお店を開業し、成功させるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

この記事ではイタリアンレストランを成功させるためのポイントと、必要な手続きについて解説します。

イタリアンレストランの種類

イタリアンレストランといっても、その種類は実にさまざまです。リストランテ、トラットリア、タヴェルナ、オステリアなど、それぞれ異なる特徴を持つレストランがあります。

コース料理なども提供する格式が高いお店はリストランテと呼ばれ、ドレスコードやテーブルマナーなどが求められることもあります。

リストランテよりもカジュアルに利用でき、伝統的な料理を中心に提供するお店がトラットリアです。

大衆食堂や居酒屋は、タヴェルナオステリアと呼ばれます。

タヴェルナとオステリアはどちらもカジュアルな雰囲気のお店ですが、タヴェルナは大衆食堂、オステリアは居酒屋のようなイメージです。 

そのほかにもピザを専門にするピッツェリア、パスタを専門にするスパゲッテリア、ワインバーであるエノテカ、立ち飲みができるバール、ケーキやお菓子を扱うパスティッチェリアなどがあります。

イタリアンレストランを開業するための準備

イタリアンレストランを開業して成功させるためには、事前の入念な準備が大切です。どのようなことを考えておくべきか解説します。

顧客ターゲットの設定

まず、どのようなお客様に来ていただきたいかを明確にすることが重要です。そのために、マーケティングでよく使われる「ペルソナ」を設定してみましょう。

ペルソナとは昔演劇で使われた仮面を意味する言葉であり、マーケティングでは提供する製品・サービスにとってターゲットとなるユーザーモデルのことをいいます。具体的に一人の人間を想定し、細かい点までそれに肉付けして、典型的な顧客モデルを作り上げていく方法です。

まず、氏名・年齢・性別・居住地・職業や勤務先・年収や家族構成などの特徴を設定します。さらに生い立ち・身体的特徴・性格的特徴・ライフスタイル・趣味嗜好なども決めていきます。似顔絵や顔写真など、ビジュアル要素を用意するとよりイメージがはっきりするでしょう。このようにまるで実在するかのようなリアルなモデルを作り上げます。これがペルソナです。このペルソナを呼び込むことを目指して、お店の戦略を立てていきます。

ペルソナを作ったら、いつもそのペルソナを念頭に置きながら戦略を練っていきましょう。お客様のイメージを明確化することにより、お店の戦略が立てやすくなるだけでなく、ブレにくくなります。

ペルソナは時間帯別で異なる人物像を設定するとよりいいでしょう。ランチタイムならランチタイムに来てほしいペルソナ、夜は夜に来てほしいペルソナを考えます。

ペルソナの設定は、お店作りと絡めて考えます。こういうお客様が来そうだなと考えるより、こういう方にお客様になってもらうためにはどういうお店やメニューにすべきかと考えるのがポイントです。

立地・物件・設備の選定

最適な立地は、業態によって異なります。例えば「空腹を満たす」ことに対応するなら学生街や繁華街に出店し面積10坪程度、テーブルと椅子なども簡素でいいでしょう。

「くつろぎたい」顧客に対応するならビジネス街や繁華街を選び、店舗面積は15〜30坪程度、中程度の設備にします。

「会話を楽しみながらの食事」を提供するなら繁華街や郊外の住宅地が適し、店舗面積は40坪程度と広くして居心地を良くします。

「雰囲気や味を楽しむ」顧客のためにはさらに客席間をゆったりと取り、インテリアにもお金をかける必要があるでしょう。

必要な厨房機器は、提供するメニューによっても変わります。特に調理場はメニューによるところが大きく、オーブンやシンクなどの基本設備のほかに、ゆで麺器、ピザ窯など必要に応じて揃える必要があります。

ドリンク関係では製氷機やシンク、冷蔵ショーケース、ビールサーバー、ワインセラーなどが必要になると考えられます。必要に応じて、食洗機など業務を効率化するための設備も必要でしょう。

物件を契約するときには、営業可能時間の確認も大切です。テナントビルの上層部に住居が入っている場合は、夜の営業時間に制限があることもあります。営業したい時間帯にお店を開けられるかどうかもあらかじめ確認しておきたいポイントです。

メニューの開発

まずは、自分が得意とする料理や提供したいメニューを軸に考え、ターゲット顧客の好みに合わせたメニューを開発します。看板メニューとなるような、他店との差別化を図れるメニューがあると良いでしょう。ワインにこだわるのも、イタリアンレストランの魅力を高める一つの方法です。

料理の価格は料理のおいしさや希少価値、サービス、お店の雰囲気などに照らして判断されます。お店で得られた経験に見合う価格なら、お客様はリピートしてくれるでしょう。一方、価格に見合うサービスではないと判断されてしまうと、リピートしてもらうことが難しくなります。

広告と宣伝

新規オープンのレストランは、認知度を高めるための宣伝活動が重要です。例えば、以下のような方法が考えられます。

  • チラシのポスティング
  • 新聞折込
  • ダイレクトメール
  • デリバリーサイトへの登録
  • 地域紙・ミニコミ誌への広告出稿
  • 看板やのぼりの設置
  • Googleビジネスプロフィールなどの活用
  • SNS・自店サイト開設
  • Web広告・SNS広告出稿
  • グルメポータルサイト登録

予算や手間、割ける人員、お店のイメージなどに照らしあわせて、実行する方法を選びましょう。

また近年は、インスタグラムなどのSNSアカウントを作って常時発信していくことが盛んです。SNSの利用は、視野に入れることをおすすめします。

開業資金と資金調達方法

開業資金と資金調達方法

イタリアンレストランの開業資金はどの程度必要なのでしょうか。目安と、考えられる資金調達方法を解説します。

開業資金の目安

開業資金には、物件取得費、店舗設備費、広告宣伝費、仕入費用などが含まれます。イタリアンレストランの開業資金の目安は1,000万円程度といわれています。

しかし、都市部など立地のいい場所だと、必要な開業資金や費用が目安を超えることもあります。

一般財団法人 日本不動産研究所が発表したデータによると、2024年度の表参道エリアの賃料は月坪3~4万5,000円が最も多いようです。表参道エリアで20坪、家賃が60万円の店舗を出す場合のシミュレーションをしてみましょう。

物件取得費は家賃の10ヶ月分が相場となるので、必要な物件取得費は600万円です。

内装工事費の坪単価は30~50万円が相場となるので、600~1,000万円が内装工事費として必要です。

店舗設備費は、内装工事費や厨房設備費・家具・什器などを揃える経費です。内装工事費の坪単価は30~50万円が相場となるので、店舗設備費として600~1,000万円必要という計算になります。

広告宣伝費や仕入費用も店舗によって異なりますが、100万円程度かかることもあるでしょう。

これらをトータルすると、表参道エリアで開業する場合の開業資金の目安は2,000〜2,700万円となります。スタッフを雇い入れるなら、人件費についても考慮しなくてはなりません。事業計画によってはピザ窯やワインセラーなど、特別な設備に投資が必要になる可能性もあるでしょう。

このように、開業資金の目安は店舗の坪数や立地、居抜き物件かどうかなどさまざまな条件で大きく変わってきます。

運転資金や当座の生活費など、しっかりと計画を立てて十分に用意することが重要です。

資金調達方法

開業資金を作るには主に3つの方法があります。自己資金・創業融資・補助金や助成金がそれにあたります。

自己資金とは、事業のためにした貯金・退職金・有価証券や不動産の売却・生命保険の解約や契約者貸付制度の利用などでお金を集める方法です。

創業融資は日本政策金融公庫や信用保証協会という政府系金融機関、あるいは各自治体などが事業者を支援するために設定している融資です。

日本政策金融公庫は資金調達が困難な創業期の方を支援するため、複数の創業融資制度を設けています。日本政策金融公庫の融資では新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていない方に優遇措置があります。原則として無担保・無保証人で融資を受けられる、原則として利率が0.65%引き下げられるなどの措置です。

また新規開業資金では長期での返済が可能で、設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内の返済です。日本政策金融公庫では新創業融資制度という融資を行っていましたが、2024年3月で廃止となり、新規開業資金が拡充されています。新規開業資金ではこのほかにも、女性・若者・シニア・廃業歴があり創業に再チャレンジする方・中小会計を適用して創業する方に優遇措置を設けています。

補助金・助成金の活用も検討しましょう。融資と異なり、返済不要という大きなメリットがあります。公益社団法人東京都中小企業振興公社による創業助成金や、都道府県が行っている地方創生起業支援事業などが利用できます。開業予定もしくはお住まいの自治体にどのような補助金・助成金があるのか調べてみると良いでしょう。

イタリアンレストラン開業のために必要な手続き

イタリアンレストランを開業するためには、保健所や消防署などに対し、各種手続きを行わなくてはなりません。どのような手続きが必要なのか以下で解説します。

保健所での手続き

イタリアンレストランのような飲食店を開業する際には、保健所から営業許可を得なければなりません。保健所での手続きは、事前相談、申請書類の提出、担当者による施設検査の流れで行います。確認検査には営業者か食品衛生責任者の立会が必要です。施設基準に適合したと認められ許可が降りれば営業許可証が交付されますが、不合格となった場合は不適合事項を改善したのち再検査を受けます。

消防署での手続き

消防署へは防火対象設備使用開始届が必要です。居抜き物件で前のテナントから使用形態を変更するための工事を行う場合にも、防火対象物工事等計画届出書を提出しなければなりません。収容員数が30人以上となる飲食店では、防火管理者の選任届も必要です。

警察署での手続き

深夜12時過ぎにアルコールを出す場合は、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を警察署に出さなくてはなりません。管轄の警察署に開業10日前までに届け出ましょう。

税務署での手続き

個人でイタリアンレストランをオープンする場合は、税務署へ開業届を出す必要があります。開業届は開業から1ヶ月以内に提出しなければなりません。開業届(事業の開業・廃止等届出書)は個人事業を開業したことを申告する書類です。開業届と同時に青色申告承認申請書を出すと、最大65万円の特別控除が受けられたり赤字を3年間繰り越したりすることができるようになります。

イタリアンレストラン開業に必要な資格

イタリアンレストランを開業するためには、2つの資格が必要です。

食品衛生責任者

飲食店では、食品衛生責任者の設置が義務付けられています。食品衛生責任者となるには、都道府県知事等が行うもしくは都道府県知事等が適性と認める講習会を受講します。栄養士・調理師・製菓衛生師・船舶料理士などの資格をすでに持つ方は、講習を受ける必要がありません。

防火管理者

消防法により、一定規模の防火対象物の管理権原者は資格を持った方を防火管理者として防火管理業務を行わせなければならないとされています。飲食店を出すには、資格を持った防火管理者を一人置かなくてはならないのです。防火管理者の資格は、一般的には防火管理講習を受けることによって得られます。

イタリアンレストラン開業を成功させるポイント

ここからは、イタリアンレストラン開業のためのポイントを2つ解説します。

コンセプトを作る

コンセプトとは、お店の目指す方向性や提供する価値を一言で表現したものです。これが定まっていないと運営方針が定まらず、ほかのお店との差別化も難しくなります。

コンセプトを考えるにあたっては、3W1Hをキーワードにするといいといわれています。3W1Hとは、お店のサービス内容を表現する何を(What)・誰に(Whom)・どこで(Where)・どのように(How)のことです。

何を誰に届け、どこでどのように集客するのかをはっきりさせましょう。お店の運営していくなかで問題点や解決すべき点にあたったら、このコンセプトに立ち返り、そこからずれていないかを意識しながら改善・変更・修正を行います。

そして何を伝えたい店なのか、コンセプトをお客様に印象付けられるようにすれば集客につながりやすくなるでしょう。

競合店舗を調査して差別化を図る

出店する物件が決まったら、周辺地域の競合店を調査します。物件から駅などに向かう道にある店舗、駅や施設周辺にある店舗などを調査しましょう。イタリアンに限らずランチやディナーを食べられるお店、同じ客単価の店舗なども合わせて見ていくと良いです。

調査によって競合店の特徴をつかみ、そのお店がどのような価値を提供しようとしているかを判断します。そして、それとは異なる価値観を打ち出すように方針を決定しましょう。

まとめ

イタリアンレストランを開業するには、1,000万円以上の初期費用が必要です。

長く営業できるイタリアンレストランを開業するためには、ターゲットを詳細に設定し、お店のコンセプトを明らかにする必要があります。3W1Hや競合店の調査をもとにして、お店が提供する価値をはっきりとさせ、そこからブレないようにしましょう。

開業資金の調達方法には、自己資金や日本政策金融公庫の創業融資を利用する方法が考えられます。自治体による補助金・助成金も調査し、受けられる補助は積極的に受けましょう。

開業にあたっては、保健所の営業許可などクリアするべき手続きが複数あります。手続きには時間がかかることも少なくないので、開業日前に余裕をもって対応できるよう計画を立てることが重要です。

綿密な計画と準備を行い、成功するイタリアンレストランを目指しましょう。

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