ハンバーガー屋を開業するには?必要な資格・資金について解説
ハンバーガーは、手軽に食べられる人気のファーストフードです。テイクアウトにも対応しやすく、幅広い層に人気です。こだわりのバンズや具材を使用したハンバーガー屋を開業したいという方もいらっしゃるでしょう。
今回は、ハンバーガー屋の開業に必要な資格や資金、開業までのステップなどについて詳しく解説します。
ハンバーガー屋を開業する方法
ハンバーガー屋には、いくつかの形態があります。ここでは代表的な形態である個人店舗営業・フランチャイズ・移動販売の3つの方法について解説します。それぞれメリットとデメリットがあるため、自分に合った業務形態を考慮することが重要です。
個人店舗営業
個人店舗営業は、独自のブランドを立ち上げて運営するスタイルです。
メニューや店舗デザインを自由に決められるため、独自性を出しやすく、ブランド構築に成功すれば大きな反響を期待できます。流行のスタイルやユニークなコンセプトを取り入れて、他店との差別化を図ることもできるでしょう。
ただし、さまざまなマニュアルや計画をゼロから考える必要があります。
フランチャイズ
フランチャイズは、既存のハンバーガーチェーンのブランド力とノウハウを活用できるため、初心者でも開業できます。集客力も期待でき、開業準備や経営のサポートを受けられるメリットがあります。
ただし、フランチャイズ契約ではロイヤリティーの支払いが必要になるほか、メニューや店舗デザインの自由度は限られます。
移動販売
移動販売は、キッチンカーを利用してハンバーガーを提供する形態です。ほかの営業形態と比較すると設備費用が安く、初期投資を抑えられるのが特徴です。イベントやフェスティバル、オフィス街などさまざまな場所に出店できるため、ターゲットを絞った営業がしやすいでしょう。
しかし、天候や出店場所の許可に左右されやすく、収益が不安定になりやすいというリスクもあります。
ハンバーガー屋開業までのステップ
ハンバーガー屋開業までの大まかな流れは下記のとおりです。
フランチャイズの場合、一部の手順は簡略化されますが、全体的な流れはほぼ同じです。
- コンセプトを決める
- ビジネスプランを作成する
- 店舗や設備を準備する
- 必要な許可を取得する
- スタッフの採用と教育
- オープンに向けた宣伝活動
個人店舗や移動販売での開業を選択する場合に特に重要なのが、コンセプトを決めてターゲット層や価格帯、メニューの特徴などを具体化することです。コンセプトを決める際には市場調査を行い、他店と差別化できるポイントを明確にすると良いでしょう。
次に、上記のコンセプトをもとに資金計画や運営計画を立てます。この段階で必要な設備や予算などを整理し、収支予測を立てましょう。計画に具体性があり収益性も高いと判断されると、開業のための融資を受けやすくなります。
計画と資金の目途が立ったら、店舗となる建物や場所を選び、必要な調理機器やカウンターなどを揃えます。フランチャイズの場合は場所や器具は本部から提供される場合もあるため、提供を受けられるものと自分で集めなければならないものを事前に確認しておきましょう。
店舗の設備や構造から自分で考える場合には、後述する飲食店営業許可の基準を満たすための準備が必要です。ハンバーガー屋の開業に必要な資格の取得・届出などの手続きは、開店の予定に間に合うように計画的に進めるように準備しましょう。
営業開始後の円滑な運営と集客のためには、店舗の規模に応じてスタッフの採用・教育や宣伝にも力を入れると良いでしょう。宣伝には広告のほかSNSの利用も有効です。
ハンバーガー屋開業に必要な資格・許可
ここからは、ハンバーガー屋を開業するために必要な資格や届出、許可などの手続きについて解説します。どのようなことが必要なのか前もって知ることで、開業準備が進めやすくなるでしょう。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、飲食業や食品を取り扱う事業で衛生管理を行う責任者のための資格です。自宅で料理する場合と異なり、食品を調理し消費者に提供する場合には法律で定められた衛生基準を守ることが求められます。
食品衛生責任者の役割は、この基準を遵守するための管理計画を策定し、環境、設備、材料などを衛生的に管理することです。
食品衛生責任者の資格は、都道府県知事などが指定する講習会を受講することで取得できます。講習会は下記の内容で合計6時間程です。
- 衛生法規(2時間)
- 公衆衛生学(1時間)
- 食品衛生学(3時間)
講習は1日で完了しますが、講習会の空きがなく受講までに時間を要する場合もあるため、日程に余裕をもって予約することをおすすめします。地域によっては会場での受講だけでなく、オンラインでのeラーニングに対応している場合もあるため、会場型の講習会が定員に達している場合や自宅で受講したい場合はこちらも検討してみましょう。
講習を終えると、食品衛生責任者講習修了証が発行されます。この修了証は、開業準備時や保健所の立ち入り検査などで提示を求められる場合もあるため大切に保管しましょう。
なお、下記に該当する人は講習会の受講が免除されます。
- 栄養士
- 調理師
- 製菓衛生師
- 食鳥処理衛生管理者
- 衛生管理責任者(と畜場法に規定するもの)
- 作業衛生責任者(と畜場法に規定するもの)
- 船舶料理士
- 食品衛生管理者
防火管理者
飲食店は火気を扱うため、収容人数が30人以上の店舗では、防火管理者の選任が義務付けられています。防火管理者の主な役割は、施設内での火災予防と火災発生時の適切な対応です。
具体的には、日常的に防火点検や防火設備の管理を行い、火災を未然に防ぐための体制を整えます。また、施設利用者や従業員が火災時に安全に避難できるよう避難計画を作成するほか、従業員がいる場合には避難訓練や防火教育を行い火災が発生した場合の対応方法を指導することも防火管理者の役割です。
防火管理者の資格には、店舗の面積が300平方m以上ある場合の甲種と300平方m未満の場合の乙種があり、いずれも都道府県知事や消防長などが行う講習会の受講により取得できます。講習内容には、火災予防に関する基礎知識や火災時の対応方法、避難計画の策定方法などが含まれます。
多くの場合、甲種防火管理者の講習は2日間、乙種防火管理者の講習は1日間です。
対象となる建物の規模によって必要な資格が異なるため、営業予定の店舗に必要な資格を確認しておきましょう。
講習をすべて受講し終えると防火管理者講習修了証が発行され、防火管理者として活動できます。
なお、消防団で一定期間管理的立場にあった者や防火管理の実務経験がある者などは講習が免除になる可能性があるため、事前に管轄の消防庁・消防局への確認をおすすめします。
また、営業開始7日前までに防火対象物使用開始届出書の提出も必要になるため、必要な場合には防火管理者の取得と併せて手続きを進めておきましょう。
飲食店営業許可
飲食店が営業を始めるにあたっては、厚生労働省令で定める基準を満たす必要があります。届出を行うことで厚生労働省から営業許可が下り、営業を開始できます。届出を行う際は、管轄の保健福祉事務所(保健所)に事前相談をしたうえで営業許可申請を行いましょう。
申請後、施設基準を満たしているかどうかを確認するための現地調査が行われます。ここで基準を満たしていない項目があると、当該項目を満たすまでは営業許可が下りません。調査で基準を満たしていると判断された場合には、調査から1週間程で営業許可書が届きます。
開業届
新たに事業所得が発生する事業を始める場合は、飲食業に限らず開業届を税務署に提出する必要があります。ハンバーガー屋を開業する場合もこれに該当するため、開業届を提出しましょう。
なお、ここまで紹介した資格や届出は営業開始前に取得・提出が必要でしたが、開業届は事業開始から1ヶ月以内の提出で問題ありません。これは、開業届が安全な店舗運営そのものに関わる届出ではなく、個人事業主として所得を得ることを税務署に申請するための書類だからです。
開業届はe-Taxによるオンラインでの提出のほか、郵送したり税務署へ直接持参したりすることも可能です。
ハンバーガー屋開業に必要な資金
ここまで、顧客の安全を守るために必要な資格や許可についてみてきました。
次に、ハンバーガー屋を開業するために必要な資金と資金の目安を解説します。
調理器具など設備費
厨房設備の費用として、調理器具、シンク、ガスコンロ、冷凍冷蔵庫などが必要です。シンクやガスコンロなどは数万円から数十万円程度、冷凍冷蔵庫は数十万円程度かかる場合があります。
例えば、調理器具、シンク、ガスコンロをそれぞれ10万円、冷凍冷蔵庫を20万円とすると、合計50万円となります。
設備費のほかに内装費も必要です。内装工事の費用は店舗の大きさなどによっても異なりますが、ハンバーガー屋の内装工事にかかる費用は一坪30~50万円が相場といわれています。
20坪程の店舗で、内装工事費は600~1,000万円程かかるという計算になります。
テナントもしくはキッチンカー料金
テナントを借りる場合、物件取得費が必要です。物件取得費に含まれるのは敷金返金や仲介手数料などです。
物件取得費は家賃の10ヶ月分が相場とされているので、立地や広さによって家賃は異なりますが、家賃が10万円の場合は物件取得費は100万円程になります。
フランチャイズで開業する場合、独自の借入制度などを利用できる場合もあります。ただし借入制度の利用に際して、店舗購入金額に対して必要な自己資金額の割合が決められている場合もあります。フランチャイズでも自己資金は必要だと覚えておきましょう。
キッチンカーで開業する場合、車両そのものの費用のほかにキッチンカーとして利用できるようにするための改修費が必要です。
ロイヤリティーなどランニングコスト
ここまで開業するにあたって必要な費用を挙げてきましたが、開業した後も営業を続けるために継続的にかかる費用があります。こうした費用をランニングコストと呼び、ハンバーガー屋の場合は水道光熱費・テナントの家賃・材料費などがあたります。
従業員を雇用している場合には人件費も考慮する必要があるでしょう。
そのほか、フランチャイズの場合は売上に応じたロイヤリティーが発生します。企業により割合や名目は異なりますが、ハンバーガー屋の一般的なロイヤリティーは売上の1~4%程が目安です。
ハンバーガー屋を開業するメリット
一口に飲食業やファーストフードといっても、さまざまなジャンルの料理があります。そのなかで、ハンバーガーを主な商品とすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
どの時間帯でも集客が期待できる
ハンバーガーは、手早く食事を済ませたいときや移動先でも食べられる昼食、小腹が空いたときの夜食まで幅広い時間帯にニーズのあるメニューです。そのため、時間帯を問わず集客が見込めて安定した売上が期待できるという強みがあります。
テイクアウトサービスの提供ができる
ハンバーガーはテイクアウトと相性が良いため、持ち帰りやデリバリーのニーズに対応しやすいというメリットがあります。
特に、現在では配送を専門とする外部のプラットフォームも発達してきたため、店舗での人員確保が難しい場合でもサービスを利用すればデリバリーに対応可能です。
持ち帰りとデリバリーに特化すればイートインのスペースが不要になるため、店舗面積を小さくして家賃を抑えたり、開業に必要な届出や資格が減らせたりするといったメリットもあります。
特別な資格は不要である
ハンバーガー屋は、調理師のような特別な資格がなくても開業できるため、飲食業未経験者でも参入しやすい業種です。もちろん衛生管理の資格や防火管理の資格は重要ですが、高度な調理技術を要する飲食業に比べて、調理師といった特別な資格を取得せずに開業できる点が魅力です。
ハンバーガー屋は成功できる?経営者の年収は?
ハンバーガー屋は、飲食業界のなかでも成功しやすいジャンルとされています。特にテイクアウトやファストフードの需要がある現代では、顧客が集まりやすい環境が整っているといえるでしょう。
ただし、基本的な収益性は高いものの、立地や提供するハンバーガーのクオリティにも大きく影響されます。そのため経営者の年収は、店舗の規模や運営方針によって大きく異なります。
例えば、都市部のフランチャイズ経営では年収500万円程度が一般的で、ここからロイヤリティなど必要経費が差し引かれます。
一方、個人経営の飲食店の年収は600万円程度といわれています。もちろん、個人店舗であっても人気店に成長させれば、さらに高い年収を目指すことも可能です。
まとめ
ハンバーガー屋は、テイクアウトやキッチンカーでの販売など、多様な形態で開業できます。工夫次第では初期投資を抑えることも可能です。
どのような営業形態でも、計画をしっかりと立てて開業準備を進めることが成功への第一歩です。
飲食業は競争が激しい業界のため、常にメニューや宣伝などの工夫が求められますが、独自の魅力を持つ店舗づくりができれば多くの人に愛されるハンバーガー屋を目指せるでしょう。
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