飲食店の開業計画とは?事業計画書の必要性や書き方・作成のポイントを解説
自分のお店を持ってみたいと、想像したことがある方も多いのではないでしょうか。
毎年多くの飲食店が市場に参入しておりますが、事業を継続するのは難しく3年以内の廃業率は70%、5年廃業率は80%以上といわれています。
飲食店事業を長く続けていくためには、起業前にしっかりとした事業計画書を作成することが非常に重要です。
この記事では、飲食店の開業に必要な事業計画書の書き方・作成のポイントを解説していきます。
飲食店の開業計画とは?
飲食店の開業では、飲食店を始めたいと考えてから、おおよそ3〜5年の準備期間が必要です。
- 開業費用を準備する
- 飲食店経営のノウハウを蓄積する
- 調理の技術を磨く
- 必要な資格を取得する
さまざまな準備が必要となりますが、何年も継続させていくために重要となるのがどのようにお店を経営していくのか、という事前の計画と準備です。
そしてスムーズな開店準備を行ううえで重要なのが、事業計画書の作成です。
事業計画書の必要性
「なぜ事業計画書を作るの?自分で把握していれば事業ができるよね?」「投資や融資をしてもらうところ向けにだけ書けばいいんじゃない?」と考える方もいるのではないでしょうか。しかし事業を始めるうえで事業計画書は<strong class=”main”>とても重要なアイテム</strong>です。その理由を以下で説明します。
プランを客観視できる
事業計画を作成する目的の一つは、自身の頭の中で描いている構想を整理し、目標や事業内容を具体化し、プランを客観視することです。
事業内容をいろいろ考えていると、次々と新しいアイデアが浮かんでくるものです。柔軟な発想でアイデアを出すことは大切ですが、思いついたままアイデアを加えていくと、改めて事業全体を通してみたときに、つじつまの通らない事業内容になってしまう場合があります。
計画書の作成は、自分の頭の中を整理して、事業化に向けた行動を明確にするために必要です。
また、作成した計画書は、計画した事業の進捗管理や経営の意思決定の拠り所として活用できます。自分の事業を成功させるための指標となるのが事業計画書です。
必要な資金が明確になる
どれくらいの資金でどのような準備をするかは、飲食店の開業を考えるうえで重要なポイントです。
起業を計画するのは、事業内容を決めることであるとともに、開業資金のやりくりを同時に考えることになります。
- 事業に必要な機械・備品の導入費用などの設備資金
- 開業までに準備する備品や事務用品の費用、開業に必要な事務手続きや登記関連費用、保証金などの諸費用
開業資金は大きく分けて2つありますが、特に考えるべきなのが設備資金です。
例えば、立地にこだわるのであればそれなりの店舗取得費、調理機材にこだわるのであれば相応の機械設備費が必要となります。事業のイメージに合わせて、無理のない範囲で検討しなければなりません。
特徴のある店舗作りを考えると、開業資金に多額の内外装費が必要になる場合もあります。こだわりのメニューを提供するために厨房機器や新しい設備が必要な場合は、設備費用も重要となるでしょう。
事業内容と設備資金項目の検討は、強い関連があることを忘れないでください。
他者に説明して理解を得やすくする
事業計画書は、金融機関から開業資金の融資を受ける・事業に一緒に取り組む仲間を集めるなど、関係者の協力を得るためという重要な目的があります。
仲間や従業員を集めるには、事業の魅力や将来性などのきちんとした説明が必要です。
自分一人で起業する場合はともかく、経営に必要な人材や資金を集めるためには、関係者の信頼を獲得できる計画書が不可欠になります。
そのため他者が読んだときにわかりやすく、事業への熱意が伝わる内容のものを作成する必要があります。
事業計画書の書き方
「事業計画書が必要なことはわかった。でもどうやって書けばいいの?」という方に向けて、事業計画書の書き方を解説します。
自分で書式を作る、ネットや書籍からテンプレートをもらうなど、作成方法は人それぞれですが、必要不可欠な要素を以下で挙げていきます。
事業計画書を作ることを目的とせず、事業を成功させるための情報整理ができるよう心がけてください。
創業の動機
事業を始める動機や目的は重要です。社会的に有意義な事業であることも、創業を通して自己実現をするという点で大きな目的となります。
自治体から補助金を受ける場合は、実施される補助金制度の主旨を踏まえ、
- なぜその事業に取り組むか
- 将来どのような効果が得られるか
上記の視点のストーリー性も盛り込まれて記載されているかもポイントです。そのほか、
- 創業への準備度合い
- 支援者の協力
- 経営方針
- 立地選定理由
などを具体的に記載しましょう。
経営者の経歴・実績
経営者の略歴や過去の事業経験、資格や習得技能なども記入しましょう。創業しようとしている業種での勤務経験があるとノウハウが活かせます。
勤務先・勤務年数のみを伝えるだけでは自分の強みを伝えきれません。勤務時の役職・待遇などを具体的に記載することにより、自分の実力を客観的に伝えることができます。
普段から勤務時に取り組んだことを記録・記憶し、自らのセールスポイントを第三者目線で説明できるようにしておきましょう。
取り扱い商品・サービス
どういうコンセプトに基づいて、どのようなイメージの内外装にして、どんな商品・サービスを提供するのかを具体的に考えておくことが必要です。言葉で表現しづらい場合は、パース(内外装のデッサン)、提供する料理の写真などを用いると相手に伝わりやすくなります。
この分野に詳しくない人でも直感的にわかること、読んだ人がまたほかの人に説明できることが鍵となるでしょう。
取引先・取引関係
お店に来てもらいたい顧客ターゲットを具体的にイメージし、
- 立地
- 内外装設備
- 什器や備品
- 商品やサービス(メニュー)
などを考えておく必要があります。
販売先に一般個人と記載するだけでは、見込み客や新規客の獲得のイメージがつきません。新規客の獲得のイメージなどを周辺環境を交えて記載しましょう。
可能なら
- 10〜20代の女性
- 30〜50代で周辺ビルに勤務している男性
- 小さい子どもがいるファミリー層
- 外国人観光客
など年齢層や性別、社会的背景の要素も組み込むとより具体的にイメージできるでしょう。
仕入先との関係も記載するとさらによいでしょう。また、良質で安価な材料(商品)をどこから仕入れるか 、安定的に調達できるかという要素も仕入計画のポイントです。
従業員
それぞれの業務に人材が何人必要か考えていきます。1年目は必要最低限で予定し、2〜3年目は売上計画の上昇に応じて増員を検討していきます。
常時使用する従業員の人数を記入し、事業主や法人の役員などは含みません。名目や臨時雇いであっても、実質常時雇用されている場合は従業員に含みます。正社員だけで取り組むのか、パート・アルバイトも雇用するのかといった視点も重要な検討案件でしょう。
作業時間や作業量の検討を行い、販売計画とも整合した無駄のない人員数を決めることがポイントです。
借入れの状況
借入金の状況は現在負担している非事業性を含む借入金などで、今回の資金調達計画によるもの以外を記入します。経営者本人が負担している保証債務を含みます。
法人の場合は、代表者の私的な借入金(住宅ローンなど)も記入します。
必要な資金と調達方法
事業が軌道に乗るまでの当面の運転資金を記入します。目安は3ヵ月以内です。
立地(家賃水準)や内外装のグレード(価格)に応じて、売上の見込み額が大きく変わってきます。目指すべき事業規模や調達できる金額をにらみながら、出店予定地の選定や設備内容を吟味していく必要があります。
自己資金の割合が高ければ高いほど、借入金額が少なく、創業後の日々の返済が楽になります。また自己資金に余裕があれば、赤字が長引いたときなど、創業後の不足の事態に備えることができるでしょう。無理のない範囲での投資と借入が健全経営の第一歩です。創業後は、思ったように売上が上がらないこともあります。赤字の期間も資金が不足しないように運転資金には余裕を持たせておきましょう。
事業の見通し
予想どおりの売上高が見込めないケースを想定し、手堅い収支計画を立てる必要があります。売上高は低め、経費は多めのような具合に試算し、それでも経営が成り立つような収支計画なら万全です。
創業後、意外と経費がかかったという声がよく聞かれます。勤務時から何にどれくらいの経費がかかるのかを把握しておく必要があります。
事業計画書の作成のポイント
どのようなことに注意すれば、自分の考えを整理でき、かつ他者が協力したくなるような事業計画書を作成できるのでしょうか?
事業計画書の作成のポイントを要点、強み、根拠の要素で解説していきます。
わかりやすく要点を伝える
計画書を作成するときは、事業に関しての事前知識がない人が読んでもわかるように書くことが大切です。専門用語やカタカナ用語はかっこいいかもしれませんが、そればかり列挙した計画書は理解しづらいものになってしまいます。なるべく平易なことばで表現し、専門用語を記載するときは括弧書きや注釈をつけて、説明を加えるとよいでしょう。
また、よりわかりやすくするために、図表や画像を加えるなどの工夫も有効です。文字だらけの計画書は、読み手が疲れてしまい、内容が十分伝わらない可能性があります。
計画書は関係者に賛同されてこそ意義のあるものになります。わかりやすくを常に心がけて書きましょう。
お店の強み・コンセプトを明確にする
事業計画書に記載するうえでは、まず自社・事業の強みを整理、分析していきます。自社の取り巻く経営環境のうち、将来の変化を踏まえながら、直接的なコントロールが利く事象をピックアップすることが必要です。経営戦略の考え方にSWOT分析というものがあります。
- 強み(Strength) 例:社員同士の連携が強い
- 弱み(Weakness) 例:資金力がない
- 機会=外部環境の強み(Opportunity) 例:提携できる起業が多い
- 脅威=外部環境の弱み(Threat) 例:事業自体の知名度がない
といった4点を書き出すものです。自社や経営者の要素を分析するのに繋がるので、ぜひ使用してみてください。
事業コンセプトは、アイデアをカタチにするときの骨格になる部分で、起業のアイデアをビジネスの構想として具体的に整理したものです。よく5W1Hでの説明は効果的だと言われますが、誰に(Who)・何を(What)・どのように(How)の3つの視点でまとめることで、事業概要が端的に表現されます。事業計画書に記載した場合も、第三者がこの部分を読めばどのような事業なのかがイメージできて、興味をもってもらえることが大切です。
数字は根拠のあるものを記載する
融資を受ける場合、事業計画書の内容を実行して、利息を含め、きちんと貸したお金が返済できることがポイントになります。
具体的には、事業計画書の損益計画や資金計画が希望的観測ではなく、実現性の高い数字になっていることです。そのために、売上や費用に対する根拠をしっかりと積み上げることが大切です。
また金融機関では、窓口の担当者だけでなく組織として審査します。ほかの審査をする人が見たときに、事業計画書の書かれている内容に説得力があるか、という視点も意識しましょう。
飲食店開業の流れ
飲食店の開業には、構想から実際のオープンまで、多岐にわたる手順が求められます。
まず、店のコンセプトを確立することが重要です。出店地や物件の選定を行い、市場調査を実施しましょう。この際、人口・性別・年齢・最寄り駅の乗降客数・人口動線・候補地の特徴などを考慮するといいでしょう。商圏内のニーズを予測して競合店の状況を調査するなど、マーケティング活動も欠かせません。
続いて、主力商品(メニュー)・目玉商品・利益商品などを具体的に決定し、これに基づいて事業計画書を作成します。
次に店舗や厨房のデザイン・レイアウトを詳細に検討し、建築業者や厨房機器メーカーとの見積もり・相談を行います。その後、店舗の着工から完成へと進む流れです。同時に、従業員の採用や教育活動を行い、社会保険の手続きも進める必要があります。また、チラシや広告を用いた宣伝活動も重要です。
開店前に開業届などの申請手続きも行わないといけません。飲食店の開業にあたっては、主に以下の手続きが必要です。
- 食品衛生法に基づく保健所の「飲食店営業許可」の取得
- 深夜に酒類の提供を行う場合は、「深夜酒類提供飲食店営業」として公安委員会への届出
- 食品衛生責任者の設置
これらの手続きについては、各地域の保健所や公的機関に問い合わせて、詳細な申請方法を確認しましょう。
創業融資を受ける際の注意点
創業融資の融資元は大きく分けて3つあります。
- 国や地域の公的制度
- 銀行などの金融機関
- ベンチャーキャピタルや個人投資家
創業を支援する公的制度として、政府系金融機関と地方自治体の融資制度のほか、地域によって都道府県や市町村の制度融資も存在する場合があります。政府系金融機関である日本政策金融公庫では無担保・無保証人の融資制度があります。
公的資金には民間金融機関に比べ手続きも簡単、金利が固定で民間金融機関より利率が有利であることが多いなどのメリットがあげられます。
ただし、公的融資とはいえ、返済に困難をきたす事業計画では融資は認められません。いうまでもないことですが、事業化と返済の計画をしっかりと立てておく必要がありますので、注意してください。
金融機関から融資を受けるのに求められることは、事業の実現性が高く、返済能力に問題のないことです。
金融機関に提出する事業計画書のポイントは、大きく分けて3点です。
- なぜお金が必要なのか
- どのように返済していくのか
- 万が一のときはどうするのか
以上の3点の具体的な根拠と明示が大切になってきます。
金融機関の他にベンチャーキャピタルや個人投資家から出資を受ける選択肢もあります。その場合は優れたビジネスモデルを持っているか、高い収益力があるかなどのアピールをする必要があります。
まとめ
投資家や金融機関から融資を受けるため、自分の夢を明確にするため、自分の周りの人の理解を得るためなど、明確にビジョンが書かれた事業計画書は飲食店起業の夢を実現させるために必要不可欠な要素です。
起業をするためには、決して少なくはないお金が動くことになります。各機関から融資を受ける場合、事業計画書は、融資を返済できるかどうかを判断する重要な基準になります。
きちんと見通しのある事業を描けるかで自分自身の人生が大きく変わります。自分の未来のために、根拠を持った具体的な事業計画書を作成し、他社の共感を得られるものを目指しましょう。
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