居抜き物件の内装工事にかかる費用相場は?費用を抑える物件の選び方なども解説!
飲食店を開業する際、居抜き物件を選ぶことで、内装工事費用を大幅に抑えられる可能性があります。しかし、居抜き物件の内装工事費用は、業種や物件の現況によって大きく異なるため、事前に費用相場を把握しておくことが重要です。費用相場を知ることで予算配分の優先順位を明確にできます。
この記事では、居抜き物件の内装工事にかかる業種別の費用相場と内装工事費用を、さらに抑えるための方法を解説します。
居抜き物件の内装工事にかかる業種別の費用相場
飲食店の開業で多くの人が頭を悩ませるのが内装工事費用です。内装工事とは、壁、床、照明などの装飾や、給排水、ガス、電気配線などの設備工事を指します。前テナントの設備をそのまま引き継げる居抜き物件は、内装が全くない状態のスケルトン物件に比べて、内装工事費を大幅に節約できる可能性があります。
内装工事の費用相場は一般的に、一坪あたりの工事費用である「坪単価」で表されます。内装工事費用は、物件の広さによって大きく異なります。そのため、ご自身が検討している物件の坪数と費用相場の坪単価を掛け合わせることで、おおよその費用目安を算出できます。
飲食店は、業種によって内装工事の費用相場が大きく異なるのが特徴です。これは、提供する飲食物の種類によって必要となる設備や内装が異なるためです。
ここでは、代表的な飲食業種別に内装工事費用の相場を解説します。
軽飲食と重飲食とは
飲食店は、大きく「軽飲食」と「重飲食」に分類されます。軽飲食と重飲食の明確な区別の基準はありません。しかし、一般的には調理によって発生する煙や臭いの量によって区別されます。本格的な調理を行い臭いや煙が多く発生する飲食店は重飲食とみなされます。一方、軽飲食は、カフェやバーのように、飲料や軽食の提供がメインで、煙や臭いがほとんど発生しない飲食店を指します。
重飲食の場合は、煙や臭いを効果的に排出するための高性能な換気設備が不可欠です。また、厨房や調理設備にも大掛かりな工事が必要となるケースも少なくありません。そのため、一般的に、軽飲食よりも重飲食の方が内装工事費用は高額になる傾向があります。
また、物件によっては、重飲食の場合は契約不可としている物件も少なくありません。そのため、重飲食での開業を検討している場合は、物件選びの際に特に注意が必要です。
カフェやラーメン店、バーなど
飲料や軽食の提供がメインであるカフェやバーは、軽飲食に該当します。そのため、内装工事費用は、重飲食と比べて安価に抑えられる傾向があります。また、ラーメン店は重飲食に分類される場合もあります。しかし、大掛かりな厨房設備や調理設備を必要としないケースが多く、坪単価の費用としてはカフェなどとあまり変わらないと考えて良いでしょう。
居抜き物件の設備をそのまま使用でき、壁や床などの内装も大きく変更しない場合、内装工事費の坪単価は20~30万円程度が相場です。
レストラン
本格的な調理を必要とするレストランの場合、厨房設備に多くの費用がかかるケースも少なくありません。居抜き物件でレストランを開業する場合、内装工事費の坪単価は30~50万円程度が目安です。ただし、厨房の給排水設備やガス配管などをそのまま利用できる居抜き物件の場合は、必要な調理設備を導入するだけで済むため、さらに費用を抑えられる可能性があります。
焼肉店や中華料理店など
焼肉店や中華料理店などは、調理に伴い多量の煙が発生するため、高性能な排煙設備の導入が不可欠です。特に、焼肉店は、多くの場合、テーブルごとに排煙設備を設置する必要があるため、排煙設備だけでも高額な費用がかかります。また、中華料理店では、強い火力のコンロなど、厨房設備に費用がかさむ傾向があります。さらに、焼肉店や中華料理店は、調理に大量の油を使用するため、排水から油分を除去するグリストラップの設置が義務付けられています。そのため、居抜き物件を選ぶ際には、グリストラップの有無を必ず確認しましょう。
また、油汚れに強く掃除しやすい床材や壁紙を採用すると、さらに費用がかさむ場合もあります。
内装工事の坪単価は80万円程度になることも珍しくありません。そのため、内装工事費用を抑えたい場合には、排煙設備やグリストラップが既に設置されている居抜き物件を探すことが、重要なポイントとなります。
和食店
和食店は、高級感や落ち着いた雰囲気を演出するために、一般的なレストランよりも内装工事費が高額になる傾向があります。和食店では、厨房と向かい合う大きなカウンター、畳敷きの座敷、新鮮な魚介類などを展示するための生け簀などが、特徴的な内装として挙げられます。
木製のカウンターや畳は経年劣化が起こりやすいため、注意が必要です。特に、居抜き物件の場合、カウンターの補修や畳の交換が必要となるケースも多く、その場合は別途費用が発生します。そのため、居抜き物件を選ぶ際には、これらの状態を事前にしっかりと確認することが重要です。
パン屋など特殊な厨房機器が必要な飲食店
パン屋を開業する場合、パンを焼くためのオーブンなど、特殊な厨房機器が必要です。特殊な厨房機器を必要とする飲食店では、初期費用の多くをそれらの機器が占めることになります。前テナントが同業種であるパン屋だった居抜き物件であれば、特殊な機器をそのまま譲り受けられる可能性があります。その場合、初期費用を大幅に抑えられるでしょう。そのため、必要な機器がどの程度揃っているかが、物件選びの非常に重要なポイントとなります。
居抜き物件を選ぶメリット・デメリット
飲食店の物件選びでは、まず、居抜き物件とスケルトン物件のどちらを選ぶかを検討する必要があります。居抜き物件とスケルトン物件では、内装工事などにかかる初期費用が大幅に異なるため、予算計画自体を見直す必要が生じる場合もあります。居抜き物件とスケルトン物件のどちらを選ぶべきか迷っている場合には、それぞれのメリットとデメリットを慎重に比較検討しましょう。ここでは、居抜き物件のメリットとデメリットを解説します。
メリット
飲食店を開業する際に、居抜き物件を選ぶ主なメリットは、以下の3つです。
- 内装工事費を大幅に抑えられる
- 開店までの工事期間を短縮できる
- 前テナントの既存顧客に認知されやすい
居抜き物件の最大のメリットは、内装工事にかかる初期費用を、大幅に抑えられることです。スケルトン物件と比べて、必要な工事が少なく、工事期間も短いため、スムーズな開店が可能です。内装工事費用を抑えられた分、他の部分に、予算を充てられることも、大きなメリットと言えるでしょう。
また、前テナントと、同業種の飲食店を開業する場合、前テナントの顧客に、認知されやすいというメリットもあります。例えば、「以前、ここには〇〇というお店があったはず」と、考えて来店するお客様や、「以前の店が、新しいお店に変わったみたいだから、行ってみよう」と、興味を持ってくれるお客様などの、一定の集客効果を期待できます。そのため、開店当初から、集客がしやすく、広告宣伝費を、削減できる可能性もあります。
デメリット
飲食店を開業する際に、居抜き物件を選ぶ上で注意すべきデメリットは、主に以下の3つです。
- 店舗の独自性を表現しにくい可能性がある
- 設備が経年劣化している可能性がある
- 前テナントのイメージを引きずってしまう可能性がある
前テナントの設備をそのまま使用する場合、店舗の独自性を表現しにくくなる可能性があります。また、既存の設備を撤去し間取りを変更するためには、高額な費用がかかります。そのため、ある程度の妥協を余儀なくされるケースも少なくありません。自身のイメージと居抜き物件の現況が大きく異なる場合には、スケルトン物件の方がかえって内装工事費を安く抑えられる可能性もあります。
また、前テナントの営業年数や使用状況によっては、既存の設備が経年劣化しているケースも考えられます。特に、厨房機器や空調設備などの状態は、契約前に入念に確認しましょう。
前述の「前テナントの既存顧客に、認知されやすい」という点は、メリットとして紹介しました。しかし、これは、見方を変えればデメリットにもなり得ます。なぜなら、前テナントが、何らかのトラブルを起こして閉店や移転をしていた場合、その悪いイメージを引き継いでしまう可能性があるからです。そのため、可能であれば、前テナントがなぜ撤退したのか、その理由を事前に確認しておくと良いでしょう。

内装工事費用を抑えるための居抜き物件の選び方

居抜き物件を選ぶ際には、物件の選び方を間違えると、想定していたほど費用を抑えられなかったり、イメージ通りの店舗を実現できなかったりと、失敗してしまう恐れがあります。そのため、居抜き物件を選ぶ際には、以下のポイントに注意しましょう。
- 内装のイメージがコンセプトに合う物件を探す
- 開業予定の業態に合う物件を探す
- 設備や内装の状態を確認する
- 造作譲渡料を確認する
ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
内装のイメージがコンセプトに合う物件を探す
居抜き物件の内装工事費用を抑えるためには、自身の店舗コンセプトと内装イメージが合致する物件を選ぶことが重要です。せっかく居抜き物件を選んでも、コンセプトと大きく異なる内装では、既存設備の撤去や変更のために余計な費用がかさんでしまいます。そのため、立地条件、間取り、壁や床の素材、色などが、自身のコンセプトに合致する物件かどうかを、慎重に見極めることがポイントです。
開業予定の業態に合う物件を探す
飲食店では、業種によって必要となる設備が大きく異なります。そのため、前テナントが同業種の居抜き物件を優先的に探すことをおすすめします。特に、排煙設備、グリストラップ、特殊な厨房機器などは、新規で導入すると高額な費用がかかります。これらの設備が既に設置されている物件であれば、初期費用を大幅に削減できるでしょう。
設備や内装の状態を確認する
導入から長期間経過している設備は、部品が消耗していたり、機能が低下していたりするケースが少なくありません。また、製造から年数が経過している古い機器の場合、メーカーの修理対応が既に終了している場合もあります。そのため、導入後も長期間使用できるか、保証期間はどのくらいかなどを、事前に確認することが重要です。また、内装の劣化具合も確認すべき重要なポイントです。補修や改修が必要な部分が多い場合、内装工事費用がスケルトン物件と同程度かかってしまう可能性もあります。
造作譲渡料を確認する
居抜き物件の場合、前テナントに対して造作譲渡料を支払う必要があります。一般的に、厨房機器、テーブル、椅子などが、造作譲渡の対象となります。しかし、具体的にどこまでが譲渡対象となるのかを、契約前に明確にしておきましょう。また、譲渡対象となる設備などの状態を事前に確認し、提示されている造作譲渡料が妥当な金額かどうかを、慎重に検討することが重要です。設備などの状態によっては、造作譲渡料の値下げ交渉を行うことも検討しましょう。
居抜き物件の内装工事を行う流れ
居抜き物件の内装工事を行うには、まず設計と施工を依頼する業者を選定します。設計の段階では、自身がどのような店舗を作りたいのかイメージを膨らませ、具体的な設計図を作成していきます。この際、居抜き物件の建築図面があれば、工事業者も物件の現況を正確に把握できるため、打ち合わせをスムーズに進められます。
設計と施工を別の業者に依頼する場合は、設計完了後、設計業者と施工業者の間で綿密な打ち合わせを行います。設計図の内容を両者で共有し、合意が得られたら施工業者と契約を締結し着工となります。
内装工事費用の支払いは現金払いが原則であり、ローンを組むことはほとんどの場合不可能と考えてください。支払い時期については、一般的に、着工前に半額、工事完了後に残額を支払うケースや、着工前、中間時(工事途中)、工事完了後の、3回に分けて3分の1ずつ支払うケースなどがあります。
工事中は、業者任せにせず、可能な限り、自身で現場に足を運び、工事の進捗状況を確認することをおすすめします。全ての工事が完了したら、最終確認を行い、引き渡しとなります。
居抜き物件の内装工事にかかる費用の抑え方
居抜き物件は、内装工事費用を安く抑えられる点が大きなメリットです。しかし、満足できる居抜き物件を見つけられた際には、さらに内装工事費用を抑えられないかを検討してみましょう。工事費用を抑えられれば、その分、他のこだわりたい部分により多くの予算を充てることができます。
内装工事費用を更に抑えるためには、主に以下のような方法が効果的です。
- お客様から見えにくい部分には費用をかけすぎない
- 複数の業者を比較し、慎重に業者を選ぶ
ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
目立ちにくい部分にお金をかけない
内装は、店舗の第一印象を大きく左右します。そのため、お客様の目に触れる部分には、妥協せずにとことんこだわるべきです。その一方で、お客様から見えにくい部分やバックヤードなど目立たない部分については、最低限の工事に留め、後回しにすることも一つの有効な方法です。こだわりたい部分には予算を惜しまず、その一方で予算を削減できる部分がないかを、徹底的に洗い出すことが重要です。
業者選びを慎重に行う
内装工事自体の費用を最小限に抑えるためには、工事業者を慎重に選定することが非常に重要です。いくら、低価格で契約できたとしても、工事の品質が低い場合、再工事や追加工事が必要となり、結果的に想定以上の費用がかかってしまう可能性があります。また、経験が不足している業者の場合、施工ミスやトラブルなどによって工期が延び、予定通りに開店準備を進められず、余計な家賃などの費用がかさんでしまう可能性も考えられます。
工事業者を選ぶ際には、見積もりの金額だけを見るのではなく、過去の施工実績、アフターサービスの内容なども含めて総合的に判断することが重要です。そのためには、複数の業者から見積もりを取得し、工事の品質、追加費用が発生する可能性、サービス内容などを、しっかりと比較検討することが大切です。
まとめ
本記事では、居抜き物件の内装工事にかかる費用相場と費用をさらに抑えるための方法を解説しました。
飲食店を開業する際には多額の初期費用が必要となり、その中でも内装工事費用は大きな割合を占めます。しかし、設備がある程度整っている居抜き物件であれば、内装工事費用を大幅に削減できるため、予算を抑えリスクを最小限に抑えた店舗運営が可能となるでしょう。
ただし、居抜き物件は、既存設備が老朽化していたり、前テナントのイメージを引きずってしまったりするリスクも考慮する必要があります。そのため、安易に費用だけで物件を選ぶのではなく、自身のニーズに最適な物件を慎重に見極め、費用を抑えつつ理想の店舗を実現しましょう。
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