【10坪店舗の内装費】費用相場や費用を抑えるポイント、デザインのコツを解説!
街を歩いていると10坪程度の店舗をよく目にします。この広さは飲食店開業を目指す人にとって、ちょうど良い規模感です。自由な発想や個性的なデザインで他店との差別化を図りやすいという魅力もあります。
本記事では、10坪店舗を開業する際に必要な内装工事費用の相場、費用を抑えるためのポイント、そして、魅力的な内装デザインを実現するためのコツを詳しく解説します。
坪単価の相場とは
坪単価とは、不動産や建築の分野でよく使われる指標です。主に店舗においては、1坪(約3.3平方メートル)あたりの賃料を表します。坪単価は、物件選びや事業計画を立てる上で重要な判断材料となります。坪単価は以下の計算式で算出できます。
- 坪単価=店舗の月額賃料 ÷ 店舗の坪数
全国的に見ると東京の坪単価は高額です。しかし、同じ東京23区内でも、エリアや条件によって坪単価は大きく異なります。東京23区内の坪単価の平均は約20,000円と言われています。坪単価を左右する主な要因は以下の通りです。
- 立地条件(最寄りの駅からの距離など)
- 業種や業態
- 建物の築年数・構造
- 敷地面積
- 建物延床面積
特に首都圏ではこれらの要因によって賃料が大きく変動します。そのため、出店を検討しているエリアについては詳細な事前調査が不可欠です。同じエリア内でも通りが一本違うだけで坪単価が大きく異なるケースも珍しくありません。
【業種別】10坪店舗の内装工事の費用相場
一般的な10坪店舗の内装工事費用は、坪単価20〜40万円、総額で200〜400万円程度が相場です。
内装工事全体を依頼する場合は、一括施工で坪単価を基にした見積もりを依頼するのが良いでしょう。ただし、物件の状態によって内装工事費用は大きく変わるため注意が必要です。また、アスベストやPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質の除去が必要な場合には、想定外の追加費用が発生する可能性があります。
飲食店の内装工事費用は業種によって大きく異なります。ここでは、主な飲食店の内装工事費用の相場を見ていきましょう。
レストランやカフェ、バーなどの軽飲食店
レストラン、カフェ、バーなどの軽飲食店は、10坪程度の店舗で開業しやすい業種と言えます。特に、居抜き物件で前店舗が同業種だった場合、水回りや厨房設備などをそのまま利用できることが多く、初期費用を抑えられる点が魅力です。
一方、前店舗と業種やコンセプトが異なる場合には、内装工事費用が高額になる可能性があります。また、10坪規模の店舗は水回りやガス配管が特殊なケースも多く、追加工事が必要となる場合もあります。そのため、予想以上に費用がかかる可能性があるため、注意が必要です。
物件の種類別内装工事費用の相場は以下の通りです。
- 居抜き物件:20〜40万円/坪
- スケルトン物件:30〜50万円/坪
- 新築物件:50〜65万円/坪
これらの相場を参考に、物件選びの段階から計画的に資金管理を行うことが重要です。
焼肉店などの重飲食店
焼肉店などの重飲食店は他の業態の飲食店と比べて内装工事費用が高額になる傾向があります。なぜなら、火を扱う飲食店特有の排煙設備や吸排気設備などの空調工事費用が必須となるためです。
また、10坪という限られた広さの店舗では、大型店舗のように、スペースに余裕がないため、煙がこもらないよう、より高性能な設備の導入が必要不可欠です。近年主流となっている無煙ロースターは高額なものが多く、導入費用が工事費用全体を押し上げる要因となります。さらに、煙や油汚れに強い内装材や汚れが目立ちにくい床材などを選ぶ必要があり、他の業態と比べて費用がかさむ傾向にあります。
物件の種類別工事費用の相場は以下の通りです。
- 居抜き物件:40~60万円/坪
- スケルトン物件:60~80万円/坪
重飲食店は工事費用が高額になりがちです。しかし、10坪という限られたスペースを最大限に活かし、他店にはない付加価値の高い店舗を作ることで競争の激しい飲食業界でも差別化を図ることができるでしょう。
居酒屋
居酒屋は比較的少ない資金で開業しやすい業態です。特に、居抜き物件を活用すれば、既存の調理器具や設備をそのまま、または一部改装して利用できるため、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
居酒屋の内装工事では、回転率を高める効率的な店舗レイアウトが重要なポイントとなります。来店客にとって居心地が良い、快適な空間を作ることはもちろん、従業員がスムーズに移動できる、効率的な動線を確保することが求められます。
物件の種類別内装工事費用の相場は以下の通りです。
- スケルトン物件:30〜50万円/坪
- 居抜き物件:20〜30万円/坪
居酒屋の店舗づくりを成功させるためには、物件選びや内装工事の計画段階でしっかりと予算管理を行うことが重要なポイントとなります。

10坪店舗は居抜き物件とスケルトン物件どちらがおすすめ?
10坪の店舗で開業を目指す場合、居抜き物件とスケルトン物件のどちらを選ぶべきかは、何を最優先に考えるかによって異なります。どちらの物件にもメリットとデメリットがあるため、それぞれの特徴をよく理解することが重要です。
居抜き物件とは、前の店舗の内装、設備、什器などを、そのまま、または一部改装して利用できる物件です。初期費用を大幅に抑えられる点が最大の魅力と言えるでしょう。特に、飲食店や美容室など、設備投資の割合が大きい業種に適しています。一方、スケルトン物件とは、建物の躯体のみ、つまり、内装や設備が一切ない状態の物件です。そのため、間取りや内装デザインを自由に設計できます。自身の店舗のコンセプトに合わせて内装を一から作り上げたい方に適した物件です。
それでは、それぞれの物件の特徴について詳しく見ていきましょう。
10坪店舗の居抜き物件とスケルトン物件の費用の違い
居抜き物件は初期費用を抑えたい場合に、スケルトン物件は内装デザインの自由度を重視する場合に、それぞれ適しています。
居抜き物件は、前の店舗の設備や什器をそのまま、または一部改装して利用できるため、初期費用を大幅に抑えられます。さらに、内装工事の工程を削減できるため、早期の開業が可能です。ただし、老朽化した設備の撤去費用が発生するリスクがあること、前店舗のイメージが残ってしまい新しいコンセプトを表現しにくい場合があることなどを考慮する必要があります。スケルトン物件は内装や什器を自身の店舗のコンセプトに合わせて自由に設計できる点が最大の魅力です。しかし、居抜き物件と比較して内装工事費用が高額になること、退去時に原状回復費用がかかることなどを理解しておく必要があります。
前述のように、業種によって相場は異なります。しかし、一般的に居抜き物件の内装工事費用の相場は坪単価20〜30万円、スケルトン物件は坪単価30〜50万円程度です。同じ10坪の店舗でも、選択する物件によって数百万円の差が生じる可能性があります。そのため、物件選びは、予算と店舗のコンセプトを考慮して慎重に判断することが重要です。
居抜き物件がおすすめの人
初期費用を抑え短期間で開業できることが魅力の居抜き物件。以下のような方に特におすすめです。
- 開業の初期費用をできる限り抑えたい方
- 早期の開業を最優先に考えている方
- 店舗運営の経験が浅い初心者の方
- 集客に不安を感じている方
居抜き物件は、内装工事費用や設備投資を大幅に削減できます。その分の予算を食材の仕入れ、こだわりのインテリア、広告宣伝費などに振り分けることが可能です。また、内装工事の期間を大幅に短縮できるため、スピーディーな開業が実現します。さらに、前の店舗のレイアウトや設備をそのまま利用できるため、店舗運営の実践的な経験を積める可能性もあります。そのため、店舗運営の初心者の方にも適した選択肢と言えるでしょう。
さらに、前店舗の知名度やイメージをある程度引き継ぐことができるため、一定の集客効果が期待できます。特に、立地条件の良い物件の場合は、その効果をより実感できるでしょう。
このように、居抜き物件は初期費用を抑えられるだけでなく、店舗運営の経験を積む上でも様々なメリットがあります。そのため、初めて開業する方やできる限りコストを抑えたい方に適した物件と言えるでしょう。
スケルトン物件がおすすめの人
内装デザインの自由度が高いスケルトン物件。以下のような方に特におすすめです。
- こだわり抜いた理想の店舗を一から作り上げたい方
- 長期的な視点で店舗経営を考えている方
- 開業資金に十分な余裕がある方
スケルトン物件は、床、壁、天井から照明に至るまで、店舗の全てを自由に設計できます。そのため、オリジナリティ溢れるこだわりの空間を作り上げることが可能です。また、導入する設備は全て新品となるため耐久性が高く、長期的な経営の視点で見ても最適な投資と言えるでしょう。このように、自身のコンセプトを細部まで反映させたこだわりの店舗を作りたい方に、スケルトン物件は最適な選択肢となります。
ただし、初期費用は居抜き物件よりも高額になる傾向があります。そのため、開業資金に余裕があり、理想の店舗を作るためには投資を惜しまない、という方に適した物件と言えるでしょう。
スケルトン物件は内装デザインの自由度が高い反面、居抜き物件と比べて内装工事費用が高額になり手間もかかります。そのため、事前の入念な計画と予算管理が不可欠です。また、内装工事業者や施工管理者と綿密な打ち合わせを重ね、理想と現実のバランスを取りながら計画を進めていくことが成功の鍵となります。
内装工事費を抑えるポイト
内装工事費用をできる限り抑えたい方は、自身の理想に近い居抜き物件を探すことが最も効果的な方法です。特に、前店舗が同業種だった居抜き物件が見つかれば、大幅なコストダウンが期待できます。また、複数の業者から見積もりを取得すること、厨房設備はリースや中古品を活用することも費用を抑えるポイントです。
それでは、内装工事費用を抑えるポイントについて、詳しく見ていきましょう。
複数の業者に見積もりを依頼する
内装工事費用を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取得し、費用や条件を比較検討することが重要です。なぜなら、内装工事業者によって得意とする分野や料金体系が異なるためです。
複数の業者から見積もりを取得する際のポイントは以下の通りです。
- 複数の業者から見積もりを取得する
- 価格以外の要素も比較検討する
- 見積もりの内容を詳細に確認する
- 業者の実績や評判を事前に調査する
最低でも3社、できればそれ以上の業者から見積もりを取得することで、費用の相場感や各業者の得意分野などを把握できます。同じ工事内容でも、業者によって、提示金額や対応は異なります。そのため、複数の業者を比較検討することが重要です。また、見積もり金額だけでなく、担当者の対応、提案力、工期、アフターサービスの内容なども、業者選びの重要な判断材料となります。これらの要素は、工事後の満足度に大きく影響することを考慮しておきましょう。
見積書を確認する際には、工事内容が具体的に記載されているか必ず確認しましょう。曖昧な表現や不明瞭な項目が多い場合は、後々追加費用が発生するリスクがあります。また、業者のホームページや口コミサイトなどで、過去の施工実績や評判などを確認することも重要です。不動産会社や知人からの紹介も信頼できる情報を得るための有効な手段です。
リースや中古品を活用する
厨房機器などをリース契約にすることで導入時の初期費用を抑えることができます。ただし、長期間使用する場合は、リース料金の総額が購入金額を上回る可能性があるため、注意が必要です。そのため、使用頻度や使用期間などを考慮して慎重に検討しましょう。また、リース契約満了後に、必要に応じて最新の機器に入れ替えることで常に効率的な機器運用が可能となります。
厨房機器などを中古品で揃えることで導入費用を抑えられます。中古品は、中古厨房機器専門店やオンラインマーケットなどで購入できます。ただし、中古品は、新品と比べて、品質や状態が製品によって大きく異なるため、慎重な確認が必要です。中古品を購入する際には、以下のポイントを必ず確認しましょう。
- 設置場所と、搬入経路のサイズは適切か
- 電気やガスの仕様は適合しているか
- 保証期間は、どの程度あるか
- 送料は、いくらかかるか
リースや中古品を賢く活用することで費用を抑えつつ、理想の店舗を実現できる可能性が高まります。
10坪店舗の内装デザインを考える際のコツ

10坪という限られた広さの店舗では、テーブルや椅子の配置など、無駄のないレイアウトを設計すること、そして、限られた空間を広く見せるためのインテリアの工夫が重要です。
店舗のコンセプトはお店の雰囲気を大きく左右するため、しっかりと作り込むことが重要です。コンセプトを明確にすることで、使用する什器やインテリアを選びやすくなります。また、コンセプトからイメージを膨らませることで、使用したい色やインテリアなども自然と決まってくるでしょう。
業種に合わせたコンセプトを決める
飲食店のコンセプトは、店舗全体の方向性を決定づける最も重要な指針です。コンセプトによって、「どのような顧客に、どのような体験を提供したいのか」という店舗の目的が明確になります。さらに、コンセプトを軸に考えることで、内装デザインやメニュー構成に一貫性を持たせることができます。
コンセプトを設計する際には、ビジネスでよく用いられる「5W1H」のフレームワークが役立ちます。5W1Hを活用することで、コンセプトをより具体化でき、内装デザインやサービス内容などの方向性が明確になります。
- Why:選んだ業種やジャンルの理由、そして店名の意味や背景を明確にしましょう。
- Where:店舗がどのような場面で利用されるのか、具体的に想定しましょう。
- When:出店エリアの人の流れを時間帯で把握し、営業時間を設定します。
- What:提供するメニューのジャンルを明確にします。
- Who:ターゲットとなる顧客層(性別・年齢・職業・ライフスタイルなど)を想定します。
- How:集客方法や価格設定を考えるとともに、店舗の雰囲気を具体化します。
上記の5W1Hのフレームワークに沿ってコンセプトを明確化することで、内装工事業者にも自身の理想とする店舗イメージをより正確に伝えられます。その結果、よりイメージに近い理想の店舗を実現できる可能性が高まるでしょう。
回転率を上げる工夫をする
回転率とは、1日のうちにお客様が何回入れ替わるかを示す指標であり、特に狭い店舗においては売上に直結する非常に重要な指標です。
飲食店の回転率は、業種によって異なります。しかし、10坪程度の限られた広さの店舗では、客単価を上げるよりも、回転率を高める工夫をすることが成功への近道と言えるでしょう。そのためには以下のような工夫が効果的です。
- メニューの価格設定:注文を即決できるよう、リーズナブルでわかりやすいメニュー構成を心がけましょう
- 効率的なレイアウト:お客様、従量員、双方の動線をスムーズにするため、カウンター席や少人数用のテーブル席を多く配置しましょう。
- 座席とテーブルの配置:狭いスペースでも、お客様が快適に過ごせるよう、適切な間隔を確保しつつ、できるだけ多くの席数を配置できる設計を心がけましょう。
これらの工夫を取り入れることで、限られたスペースを最大限に活用し、効率的な店舗運営を実現できるでしょう。
インテリアや装飾に統一感を出す
10坪という限られた広さの店舗では、お客様の視界に入る、一つひとつのインテリアや装飾が、店舗全体の印象を大きく左右します。そのため、店舗のコンセプトに基づき、インテリアや装飾に統一感を持たせることが重要です。
色合いや配置を工夫し、狭さを感じさせない開放的な空間を演出しましょう。例えば、壁や仕切りなどの一部にガラス素材を取り入れることで視界が広がり、初めてのお客様でも、入店しやすい雰囲気を演出できます。インテリアや装飾は、全体のバランスを考慮して慎重に選びましょう。また、自分一人で考えるのではなく、時には第三者の意見を参考にすることも効果的です。
色選びに注意する
10坪の飲食店では、清潔感があり、かつ印象的な配色選びが重要です。明るい配色は清潔感を演出しやすく、ファストフード店やカフェなどに適しています。一方、バーや高級レストランなどでは、黒やダークトーンなどの暗めの配色も効果的です。ただし、店内が暗くなりすぎないよう、アクセントカラーを効果的に使い、全体のバランスを調整しましょう。
壁紙や天井の色を選ぶ際には、小さな色見本で確認することが一般的です。しかし、実際に広い範囲に貼ると、色見本で見るよりも明るく感じられることがよくあります。そのため、色選びの際には、イメージよりも少し暗めの色を選ぶことも選択肢の一つとして検討しましょう。
まとめ
10坪店舗は、内装次第で他店との差別化を大きく図ることができる、可能性に満ちた空間です。初めて飲食店を開業する方にとって、10坪という広さは現実的に検討しやすい最適なサイズと言えるでしょう。
10坪店舗は、オーナー一人でも運営しやすい広さです。そのため、人件費などを抑え、その分、内装にこだわった、理想の店舗を実現できる可能性も十分にあります。揺るぎないコンセプトを確立し、理想の店舗を実現しましょう。
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