蕎麦屋開業で成功をつかむ!開業手順、資格、資金調達を徹底解説
蕎麦は、日本の伝統食として長く愛されています。近年では、日本食ブームの影響もあり、海外でも人気が高まっています。
現代の蕎麦屋には、立ち食い蕎麦、昔ながらの蕎麦屋、手打ち蕎麦専門店など、多様な営業形態があります。
今回は、蕎麦屋を開業する際の流れや必要な資格、開業資金などと併せて成功させるためのポイントも解説します。
蕎麦屋開業の手順
蕎麦屋を開業するためには、必要な手順を整理して計画的に準備を進めなければなりません。まずは蕎麦屋を開業する手順と、どのようなことをポイントにして準備を進めていくと良いか解説します。
コンセプトの設定
開業するうえで、コンセプトの設定は他店との差別化を図るためにとても重要です。コンセプトが曖昧だと経営方針がぶれてしまい、うまく売上につながらない恐れもあるでしょう。
ターゲット層は誰か、どのような蕎麦を提供するのかなど、市場調査に基づいてコンセプトを明確にすることが重要です。
また、コンセプトは事業計画書の作成にも必要なので、時間をかけてしっかり考えましょう。
物件探し
物件は蕎麦屋の売上を左右する重要なポイントになるので、しっかりとリサーチする必要があります。コンセプトに合わない物件を選ぶと事業計画にも支障が出るため、考案したコンセプトに合った物件を慎重に探さなければなりません。
まず、考案したコンセプトやターゲット層に合う地域で探すことが物件を探す際のポイントです。開業する地域の目途が立ったら、周辺地域の立地調査も必要になります。競合する他店舗がどのくらいあるのかや人通りなどを考慮し、物件を探しましょう。
店舗物件は、大きく分けて居抜き物件とスケルトン物件の2種類があります。居抜き物件は、前のテナントの内装や設備が残っている物件です。一方、スケルトン物件は、内装や設備が撤去された、躯体だけの状態の物件です。
居抜き物件の設備や内装を利用することで、時間とコストの節約が可能です。開業資金の節約やスムーズな開業などのメリットがある一方、レイアウトの自由度の低さや設備の劣化などによる改修工事などの追加費用が発生する可能性など、デメリットもあります。
スケルトン物件は一から設計できるためコンセプトにぴったりの店舗を作り上げられる可能性がありますが、工事などに費用と時間がかかります。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、予算と照らし合わせながらコンセプトに合う物件を選べるよう下調べが必要です。
希望の物件が見つかったら、予算や条件面をしっかり確認しましょう。例えば、条件の良い物件でも採算が合わないような賃料では、経営は成り立たなくなります。
内装・外装工事
店舗のデザインは、集客や売上にもつながる重要なポイントです。近年はSNSの影響もあり、店舗のデザインは集客に大きな影響を与えます。
座席の位置、フロアやキッチンが従業員にとって効率の良い動線になっているかなど、顧客目線と従業員目線の両方から設計を考えるようにしましょう。
コンセプトに合ったお店にするには信頼できる建設業者を選ぶことも大切です。建設業者にコンセプトや店舗イメージをしっかりと伝え、納得いくまで話し合うことが内装・外装工事を成功させるポイントとなるでしょう。
設備・備品の調達
蕎麦屋を開業するには、厨房設備、空調、照明、看板、テーブル、椅子、食器、調理器具、レジなど、さまざまな設備・備品が必要です。
設備・備品を調達する前に、何が必要なのかリストを書き出し整理しましょう。特に厨房設備は、保健所の基準を満たす必要があるので設備選びでは注意が必要です。
また、店舗の規模や開業後の集客状況を考慮して、備品に必要な数量もしっかり計算する必要があります。設備・備品の導入時期も考え、調達は計画的に進めましょう。
メニュー開発
飲食店を開業するのになくてはならないのが、メニュー開発です。メニューの考案は、コンセプト設計と同時に行うことも可能です。蕎麦粉の割合やつゆ、出汁などコンセプトに合ったおいしい蕎麦を提供するために、こだわりのメニューを開発して、売上や集客につなげましょう。
また、単品メニューだけでなくセットメニューや日替わりメニューなどがあると集客もしやすくなります。
考案したメニューを完成させるために、蕎麦粉や食材の仕入れ先の選定も重要です。産地や供給量などを加味して、仕入れ先を選ぶと良いでしょう。
広告・宣伝
お店に来てもらうためには、効果的な広告や宣伝を打ち出す必要があります。現代では、SNSを活用した広告・宣伝が効果的です。まずはお店のSNSアカウントを開設し、開業前からしっかりと宣伝をして集客につなげましょう。
また、オープン記念の特別メニューやクーポンなどがあると、来店のハードルが下がりやすくなるでしょう。
蕎麦屋の特徴
蕎麦は日本で昔から好まれています。蕎麦屋やうどん店は外食産業全体でみても、市場規模は広いといえます。総務省および経済産業省が行う令和3年度の経済センサス活動調査で、蕎麦・うどん店は全国に約22,000店あり、今も多くの日本人が好む食事であることがわかるでしょう。
また、提供スタイルやメニューなどを時代の流れに合わせて、臨機応変に対応している蕎麦屋も増えています。ここからは、蕎麦屋の特徴について紹介します。
回転率が高い
蕎麦屋は、提供から食事終了までの時間が短いため、お客様の回転率が高い傾向にあります。特に、立ち食い蕎麦のような業態では、回転率がさらに高くなり、一日の平均客数は100人を超えるというデータもあります。
原価率がよい
蕎麦の原価は、蕎麦の原材料である蕎麦粉100gで一人前50~100円程が相場です。ゆでることで約2.5倍に増えるため、さらに原価が下がると考えることもできます。
蕎麦屋の原価率は20%程です。一般的な飲食店の原価率は30〜35%程度が理想なので、飲食業界のなかでも蕎麦屋は原価率が良いといえるでしょう。
価格設定においては人件費や技術の手間のコストを反映させて、収益につなげる必要がある点には注意が必要です。
安定した需要がある
蕎麦は手軽に食べられる食事として好まれています。例えば、立ち食い蕎麦屋は昼食時間が限られている会社員や、昼食にあまり時間をとれない方などによく利用されています。年配の方やヘルシー志向の方などにも人気です。
また、暑い季節はざるそば、寒い季節は温かいそばなど、季節によって食べ方を変えられるのも蕎麦の需要が安定しているポイントでしょう。
蕎麦屋開業に必要な資格・届出
蕎麦屋を開業するためには、必要な資格や届出があります。取得先や提出先がそれぞれ異なるので、計画的に資格を取得や届出を行うことが重要です。
蕎麦屋を開業するために必要な資格や届出について詳しく解説します。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、飲食店における衛生管理の責任者です。現在は食品衛生法により、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の実施が求められています。HACCP(ハサップ)とは、安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。原材料の入荷から料理の提供まで、工程ごとに管理を決めることで食中毒菌汚染や異物混入などの危険を低減させることを目指します。
食品衛生責任者は、各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで資格を取得することが可能です。通常一日の講習会で取得可能ですが、栄養士・調理師・製菓衛生師などの有資格者は、講習会が免除されます。
食品衛生責任者は、オーナーもしくは従業員の中から選任できます。食品衛生責任者の資格がなければ営業許可の申請ができないので、なるべく早い時点での取得が望ましいです。
防火管理者
防火管理者とは、建物で火災が起きないよう防火管理の計画を作成し、防火業務を行う責任者のことです。
消防法では一定規模の対象建物の管理権原者(所有者・借受人・代表者など)は、有資格者の中から防火管理者を選任して、防火管理業務を行わなければならないとされています。
防火管理者になるには講習会を受講する必要があります。講習会は管理する建物の使用用途・延べ面積・収容人員によって受講する種別が異なるため、どの講習を受講すべきかは、管轄の消防署に問い合わせましょう。
防火管理者の講習は、一般社団法人日本防火・防災協会や各都道府県知事・消防本部・市町村の消防長が行います。
飲食店営業許可
飲食店の営業を行うには、食品衛生法で定められた営業許可が必要であるとされています。営業許可は、所轄する保健所で申請を行います。
以下に、営業許可証の交付までの流れをまとめました。
- 保健所への事前相談
- 営業許可申請の書類提出
- 施設検査
- 営業許可証の交付
蕎麦屋を営業する施設が決まったら、工事の着工前に保健所に事前に相談します。このとき、施設の設計図を持参し保健所の基準を確認しましょう。営業許可申請の書類提出は、工事完成予定日の10日前までに済ませます。
申請後、保健所による施設の検査がありますので、必ず立ち会いましょう。施設基準が満たされていたら、営業許可証の交付が受けられます。万が一基準に満たない場合は、改善後に再検査を受ける必要があります。
交付まで数日かかるため、開店日の設定には余裕を持たせましょう。
開業届
新規に個人で飲食店を開業する場合は個人事業主となるため、事業開始後1ヶ月以内に個人事業の開業・廃業等届出書を管轄の税務署へ提出する必要があります。
また、税制上の優遇を受けたい場合は、所得税の青色申告承認申請書を一緒に提出しましょう。法人を設立する場合は、法人登記終了後2ヶ月以内に法人設立届出書の提出が必要になります。
蕎麦屋に必要な開業資金
蕎麦屋に必要な開業資金は、一般的に1,000万円から1,500万円程と言われています。ただし、開業資金は物件の状況や出店エリアによって異なるのでこの限りではありません。
開業資金の大まかな内訳分類は以下のとおりです。
- 物件取得費
- 店舗設備工事費
- 什器備品費
- 開業費
高い初期投資は、利益によってはのちの返済が難しくなる恐れがあります。無理なく計画的に返済できる開業資金の計算と準備を行うことが大切です。
蕎麦屋開業の資金調達方法
開業資金の調達方法として、大きく以下の5つが挙げられます。
- 自己資金
- 家族や親戚、友人知人に借りる
- 金融機関の借入
- クラウドファンディング
- 補助金・助成金
開業資金の調達方法として、金融機関からの融資がよく利用されています。借入条件は金融機関によって異なりますが、その中でも日本政策金融公庫は創業者を対象とした新規開業資金の融資制度があり、審査が通りやすいのでおすすめです。融資制度や制度の要件の確認について日本政策金融公庫に相談してみましょう。
また、条件を満たせば自治体によって開業資金の補助金や助成金を受けられる場合があります。ただし基本的に補助金や助成金は後払いとなるうえ、手続きや受給までに時間がかかるため、初期投資には自己資金や借入金の準備が必要になります。
蕎麦屋を成功させるポイント
蕎麦屋を成功させるために意識するポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- コンセプトを意識する
- 回転率・客単価を意識する
- メニュー・サービスを意識する
前述しましたが、コンセプトは開業するのに必須です。コンセプトが曖昧ではターゲットのニーズに合ったメニューやサービスは提供できず、売上にはつながらないでしょう。そのため、お店の基本となる確固たるコンセプトに沿った営業を意識することが大切です。
次に、回転率・客単価を意識することが重要です。例えばランチの会社員をターゲットにしている場合、いかに回転率を高められるかがポイントになるでしょう。また、男性はよく食べる方もいるのでセットメニューやトッピングなどプラスアルファのメニューで客単価アップにつなげます。回転率重視ではない蕎麦屋の場合は、御膳や季節限定メニューの提供など一人ひとりの客単価アップにつなげましょう。
そして、メニュー・サービスを意識することも蕎麦屋を成功させるためには大切です。定番メニューだけでなく、季節に応じたメニューや本日のおすすめメニューは、接客時におすすめしやすく注文につながりやすくなります。サービスの質を低下させないように、常に工夫した新しいサービスを提供することを意識することで、また来たいという再来店のきっかけになるでしょう。
まとめ
今回は蕎麦屋の開業の際の手順や資格・届出、開業資金などについて解説しました。
蕎麦屋の開業には、蕎麦職人としての技術だけでなく、綿密な準備と十分な開業資金が必要です。
一から開業するとなると、時間はかかるでしょう。開業に必要なことはすべてリストアップして、開業準備は余裕を持って計画的に進めることが大切です。
開業まで大変ですが、競合店に負けないコンセプトを掲げて、この記事を参考に開業準備を乗り切ってくださいね。
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