ラーメン屋の開業に必要な資格は?経営者に必要な素質・失敗しないポイントも解説
ラーメン屋を開業したいという思いはあるものの、どのような資格や手続きが必要なのかわからず不安な方や、失敗せずに経営できるか不安な方もいるのではないでしょうか。
ラーメン屋は競争の激しい業界でもあるため、開業するときはしっかりと準備を進めなければなりません。
本記事では、ラーメン屋の開業に必要な資格をはじめ、経営者に必要な素質や失敗しないポイントについて解説していきます。
ラーメン屋の開業に必要な資格は?
ラーメン屋を開業するには、事前に取得しておかなければならない資格があります。本章では、ラーメン屋を開業するために必要な2つの資格について解説します。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、飲食店を営業するためには必須の資格です。各店舗に1名在籍している必要があります。各都道府県知事が実施する食品衛生責任者養成講習会を受講し、試験に合格すると資格を取得できます。講習時間の目安は以下のとおりです。
- 食品衛生学 2時間30分
- 公衆衛生学 30分
- 食品衛生法 3時間
栄養士や調理師・製菓衛生師の資格所持を持っている方や大学などで所定の課程を修めた方は、講習会が免除されるため試験を受けるだけで取得することができます。営業許可を申請する際に必要なので、早めに取得しましょう。
防火管理者
防火管理者は、建物内で発生する火災被害を防止するために、防火管理に必要な業務を取り仕切る責任者です。ラーメン屋などの飲食店の場合、収容人員30人以上の店舗では、防火責任者を専任させる必要があります。
防火管理者には甲種防火管理責任者と乙種防火管理責任者があり、建物の面積によって取得しなければならない種類が異なります。建物全体の延べ面積が300平方メートル以上は甲種、300平方メートル未満の場合は乙種が必要です。また、講習時間は甲種の場合は約10時間、乙種は約5時間です。
消防設備点検資格者(特種・一種・二種)や自衛消防業務講習修了者は一部講習が免除されます。免除対象資格を所持している方は事前に申請が必要になるため、忘れないように準備しておきましょう。
ラーメン屋の開業時に必要な申請
ラーメン屋を開業するには事前に複数の申請が必要です。申請ミスや漏れがあると、開業が予定より遅れてしまう可能性があります。事前にしっかり確認しておきましょう。
保健所での申請
ラーメン屋を開業するためには、開業するお店の地域を管轄する保健所に申請が必要です。店舗が完成する10日前には提出する必要があり、以下の書類が必要です。
- 営業許可申請書
- 施設設備の構造図面・配置図
- 登記事項証明書
- 食品衛生責任者の資格証明
- 水質検査成績書
- 許可申請手数料
登記事項証明書は法人の場合に必要です。水質検査成績書は貯水槽・井戸水使用の場合のみ対象になります。
営業許可申請書、施設設備の構造図面・配置図、食品衛生責任者の資格証明、許可申請手数料は必ず必要です。
書類を提出した後は、保健所の担当者が基準に基づいているか、店舗を直接確認します。検査は営業者の立ち合いが必須であり、不合格の場合は再検査になるため、書類不正や提出期限の遅れなどはくれぐれも注意しましょう。
消防署での申請
防火管理責任者の選任届は管轄の消防署に届け出さなければなりません。防火管理責任者の講習後に修了証が発行されるため、選任届と修了証を持って管轄の消防署に申請します。また、選任届のみでなく、消防計画の作成および提出も必要です。
消防計画は、火災を防ぐための日常管理や、火災発生時の避難経路などをまとめたものです。消防法第8条により、防火管理者が作成する必要があります。消防計画は随時見直しを行い、変更した場合は再度管轄消防署へ届け出なければなりません。
消防計画を届け忘れていた場合は、消防法に違反するため行政処分の対象となり、場合によっては違反建物として公表される可能性もあります。店舗のイメージダウンになりかねないため注意しましょう。
警察署での申請
深夜0時から午前6時の時間帯に酒類を提供しながら飲食店を営業する場合は、深夜酒類提供飲食店営業開始届を警察署に提出する必要があります。
申請書類は以下のとおりです。
【個人・法人共通】
- 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
- 営業方法を記した書類
- 店舗の図面
- 照明・音響設備の配置図
【個人の場合】
- 住民票の写し
【法人の場合】
- 定款の写し
- 登記簿謄本
- 役員の住民票
必要書類は各都道府県によっても異なります。営業許可通知書やメニュー表、地域証明書などが必要な場合もあるため、必要書類を管轄の警察署に確認しましょう。
また、キッチンカーや屋台のような移動できる形式で営業する場合は道路使用許可が必要です。申請する際は以下の3つの書類を準備しましょう。
- 道路使用許可申請書2通
- 道路使用場所または区間付近の見取図
- 道路使用方法または公安委員会が必要と定めた書類
道路使用許可はオンラインで申請することも可能です。
ラーメン屋の開業にあるとベターな資格
ラーメン屋を開業するうえで必須の資格を紹介しました。ラーメン屋の開業においては、必須ではありませんがあると役に立つ資格があります。ここからは、ラーメン屋の開業のために持っているとベターな資格を紹介します。
調理師免許
調理師免許は食の知識や調理技術を証明する資格です。開業に必須ではありませんが、持っているとお客様へ安心感を与えられます。
調理師免許を取得するには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 中学卒業以上の者または旧制国民学校高等科の修了者
- 調理師法施行規則第4条に定める施設で2年以上調理業務に従事した者
また、申請をする際は、以下の書類が必要です。
- 調理師免許申請書
- 資格を証する書類
- 医師の診断書
- 戸籍抄本
- 手数料
調理師免許は国家資格で、すぐに取得できる資格ではありません。しかし、飲食店を営業する方が持っておくと競合との差別化やお客様からの信頼を獲得できます。
日本ラーメン検定
日本ラーメン検定は誰もが気軽に受けられる検定の1つです。初級〜プロ級まで難易度があり、地域によって複数の検定に分類されます。初級のみ無料でインターネット受験が可能です。そのほかの級の受験料は以下のとおりです。
- 中級:ラーメンエリアマスター 7,900円
- 上級:ラーメンセミスペシャリスト 10,000円
- 上級:ラーメンスペシャリスト 15,000円
- プロ級:ラーメンプロフェッサー 15,000円
ラーメン検定はラーメンの文化や歴史を知ることができる検定で、さまざまな知識が身につけられます。ラーメン検定を取得することでラーメンに関する知識を深めることができ、お客様へのアピールポイントにもなるため、興味のある方はプロ級まで挑戦してみましょう。
ラーメン屋の経営者に必要な素質
ラーメン屋を開業するには、資格だけでなく、経営者としての素質も重要です。どのような素質が必要なのか、一緒に確認してみましょう。
ラーメンへの情熱
ラーメン屋を開業するうえで経営者に欠かせない素質はラーメンへの情熱です。
ラーメンは麺、スープ、トッピング、すべてにおいて手を抜くことはできません。商品開発や仕込みなどに手間や費用がかかります。そのため、ラーメンに対する情熱がなければ続けていくことは困難でしょう。
実際に、ラーメン屋は常においしいラーメンを提供するために、開業後も開発・研究を続けている店舗が多数あります。ライバル争いが激しい業界でもあるため、ラーメンへの情熱がなければ周りに圧倒される可能性もあります。ラーメン屋を開業する方は、情熱やラーメン愛を忘れないようにしましょう。
高い接客スキル
ラーメン屋をはじめ、飲食業は接客スキルも求められる職業です。店舗の評価はラーメンの味と接客力で決まります。おいしい料理と高い接客スキルがあれば、必然的にお客様から高評価をもらえるでしょう。
接客態度の悪い飲食店は、お客様を不快な気持ちにさせてしまいます。すべての従業員が挨拶や笑顔などを当たり前にできるようにし、お客様が気持ち良く食事を楽しめる場所を提供しましょう。
長時間働ける体力
開店前の仕込みから閉店後の片付け、翌日の仕込みまで、ラーメン屋の1日は長く、やるべきことが山積みです。特に仕込みは、ラーメンの味を左右するため大変重要であり、時間のかかる作業です。
場合によっては早朝から夜遅くまで働く必要があり、すべての業務をこなすための体力が求められます。そのため、ラーメン屋を経営する方は体力をつけましょう。
また、経営者であればお金の管理や従業員のシフト管理など、事務的な仕事もしなければなりません。
どのような職業でも体力や覚悟は必要ですが、特にラーメン屋を開業する方はスタミナが必須でしょう。
ラーメン屋の開業に失敗しないポイント
ラーメン屋の開業に失敗しないポイントを3つご紹介します。
コンセプトをしっかり決める
ラーメン屋を開業する際は、お店のコンセプトをしっかり決めることが重要です。お店のコンセプトは、メニュー開発や店舗のイメージなどに影響しやすい要素です。他店との差別化やお客様のターゲットを絞るためにもコンセプトは重要になるため、ラーメン屋を開業する際は早めに考えておくことがおすすめです。
また、確立されたコンセプトがあると、商品開発がしやすかったり接客スタイルを決めやすかったりするメリットも考えられます。コンセプトを気に入ってくれたお客様がリピーターになる可能性もあるため、時間をかけてしっかり考えることが大切です。
お店の目玉商品を作る
目玉商品は、お客様を惹きつけるための看板メニューです。ラーメン屋は競合が多いので、近隣の店舗の中からご自身の店舗を選んでもらわなければなりません。そのため、お店の看板ともいえる目玉商品は重要です。
目玉商品は味や見た目のクオリティはもちろん、価格設定などさまざまな要素を加味してお客様に興味を持ってもらう必要があります。そのため、日頃から競合調査や流行の分析などを行い、お店のコンセプトにぴったりの目玉商品を作りましょう。
ラーメン屋に適した立地を選ぶ
ラーメン屋の開業に失敗しないためには、適した立地選びも大切です。人通りや車通りの数、駐車場の有無などで売り上げが大幅に変動する可能性があります。
立地選びでは、ターゲットとするお客様層が頻繁に利用する場所を選ぶことが重要です。例えば、30~40代のサラリーマンをターゲットにしてラーメン屋を営業する場合、オフィス街や駅チカの場所が良いでしょう。オフィス街であれば休憩時間にサクッと食べられ、駅チカであれば仕事帰りに寄ってもらえる可能性があります。
また、人通りや車通りがある場所は人の目に入りやすいため、集客が見込みやすいでしょう。食事場所を探していた通行人がフラッと立ち寄ってくれる可能性があります。
一方で人通りの少ない路地裏やラーメン屋のコンセプトと雰囲気が一致しない地域に開業すると、集客や売り上げが伸びない恐れがあります。立地選びは適当に行わず、慎重に行いましょう。
ラーメン屋の開業に必要な資金
ラーメン屋の開業資金は店舗規模にもよりますが、約1,000~1,400万円必要といわれています。以下は開業資金が必要な項目の一例です。
- 物件費
- 外装費
- 内装費
- 設備費(厨房・空調)
- 備品
- 広告費
- 手数料
- 講習費
また、開業後も人件費や原材料・光熱費・賃貸料などが発生します。店舗を運営するために必要なこれらの費用を運転資金といいます。
運転資金は店舗によって異なります。1ヶ月店舗を運営するために必要な金額を試算し、運転資金として2~3ヶ月分を準備しておくと良いでしょう。資金の調達前にどのくらい必要か試算しておくと、資金の準備をスムーズに進めることができます。
まとめ
ラーメン屋を開業するには、食品衛生責任者と防火管理者の資格取得が必須です。開業の申請を提出する際にも必要になるため、ラーメン屋を営業したい方は計画を立てて早めに資格を取得しましょう。
ラーメン屋は競争が激しい業界のため、開業の際はしっかりと計画を立てて資金準備を行うことも大切です。
経営者としてラーメンへの情熱を持つことで、良いメニューの誕生やお店作りにつながります。お店のコンセプトをしっかり考えて目玉商品や魅力的なメニュー開発を行い、お客様に満足してもらえるように準備していきましょう。
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