焼き鳥屋の開業資金|開業資金の目安や調達方法、融資元の種類や注意点まで解説
甘辛いタレがたっぷりついた皮やネギマ、塩でさっぱりと食べるぼんじりやナンコツなど、焼き鳥は食べ方のバリエーションが豊富な料理です。
焼き鳥屋の開業を考えている方の中には、開業資金はどのくらいかかるのか、どのような調達方法があるのかについて不安に感じている方もいるでしょう。
そこで今回は、焼き鳥屋の開業資金の目安と資金調達方法、融資を受ける際の注意点などを解説します。
焼き鳥屋の開業資金の目安
焼き鳥屋の開業に必要な資金は、開業する土地や店舗の大きさ・お店の規模などによって変わります。まずは、焼き鳥屋の開業資金の内訳や用途を確認しましょう。
焼き鳥屋の初期費用の相場
初期費用には、物件にかかる費用、内外装工事費、設備類の費用が含まれます。どこにお金をかけて、どこを節約するか考えるための参考になるので、どのような用途にどれくらい必要になるのか目安を知っておくことが大切です。
30坪ほどの店舗だと仮定した場合、焼き鳥屋の初期費用の目安は500〜800万円です。
物件取得費・テナント賃借費
焼き鳥屋を開業するための店舗には、物件を買う方法とテナントを借りる方法があります。店舗の立地は、集客や売上に大きく関わってくる重要な要素です。コンセプトやターゲット層を明確にして候補の物件を絞り込んでいきましょう。
立地によりますが、焼き鳥屋の物件取得費の目安は300〜600万円とされています。
内外装工事費
焼き鳥屋にかかる内外装工事費の目安は、120万円程度です。
焼き鳥屋は調理の工程で煙が発生するため、ある程度の広さと適切な換気のシステムを作る必要があります。その反面、焼き鳥屋は大衆的なイメージが強いため、店舗のコンセプトによっては内外装費を抑えやすいという側面もあります。
機械・什器・設備費
焼き鳥屋の開業には、焼き鳥を焼くための設備や店内に必要な家具、備品が多数必要です。
- 調理器具
- 食器
- レジ
- 消毒など衛生用品
- 掃除用具
- ビールサーバー
- テーブルや椅子
- メニュー表
- アイスペール(氷を入れる容器)
- 喫煙可の店なら灰皿
値段はもちろん、機能性や容量、店舗に合ったデザインかなども考慮する必要があります。焼き鳥屋の機械、什器、設備費の目安は50〜100万円です。
焼き鳥屋の運転資金の相場
次に、焼き鳥屋の開業に必要な運転資金について考えてみましょう。
焼き鳥屋のオープン直後は、いろいろと雑務も発生しやすい時期です。運転資金の心配をせずに運営に集中できるよう、最低でも3ヶ月分を用意しておくことをおすすめします。
焼き鳥屋の運転資金の相場は1ヶ月あたり250万円です。1ヵ月の売上を300万円と仮定した場合の内訳を解説します。
家賃や水道光熱費
地域によって変動しますが、テナントを借りた場合の家賃の平均は月30万円です。焼き鳥屋にかかる水道光熱費の平均は20万円ですので、家賃と水道光熱費だけで1ヶ月50万円かかる計算となります。
人件費
カウンターのみの小規模なお店であれば一人で経営できますが、規模を大きくしたり席数を増やしたりする場合は従業員の雇用が必要です。店舗の規模を考慮しながら、現実的な費用をもとに人件費を考える必要があります。
焼き鳥屋の人件費の目安は、売上の30%なので、1ヶ月の売上が300万円だと90万円が目安となります。
仕入れや材料のための費用
焼き鳥の原料である鶏肉はもちろん、調味料類、飲み物、サイドメニューの材料費などがかかります。焼き鳥の材料自体はコストが少ないですが、バランスよく仕入れないと大量の廃棄を出す可能性もあります。
焼き鳥屋にかかる材料費の目安も売上の30%程度なので、90〜100万円程度が必要になると考えましょう。
広告宣伝費
店舗の認知度を高めるためには、広告や宣伝が必要です。看板やチラシを使った方法は高齢層への宣伝に向いています。若年層向けには、自社ホームページやSNSなど、インターネットを活用する方法が主流です。自店のターゲット層を考えながら広告戦略を練る必要があります。
焼き鳥屋にかかる広告宣伝費は約10万円程度が平均です。宣伝方法によって必要な費用は異なるため、資金と相談しながら宣伝方法を決めることをおすすめします。
焼き鳥屋の開業資金の調達方法
運転資金を3ヶ月分用意すると仮定すると、運転資金750万円、開業資金300〜600万円、合計で1,000〜1,400万円ほどの資金を準備することになります。この金額を自己資金のみで準備することが難しいこともあります。
以下に、焼き鳥屋の開業資金の調達方法について解説します。
自己資金を充てる
融資を受けることなく必要な金額を自己資金だけで用意できれば、金融機関への返済義務が
生じません。しかし、想定外のコストが発生するなどの理由で資金不足に陥ることがないよう、注意が必要です。適切で無理のない予算計画を立てなければ、せっかく開業した焼き鳥屋の存続が難しくなる可能性もあります。
資金不足にならないように、想定外の事態に備えて予備資金も準備できるよう、資金計画を立てましょう。
また、融資を受ける際にも自己資金があるかどうかも重要なポイントです。自己資金が多いほど、受けられる融資額が増加するケースもあるため、可能な限り自己資金は準備しておきましょう。
融資を受ける
焼き鳥屋に限らず、飲食店を開業する場合、金融機関から融資を受けることは一般的な資金調達方法です。
日本政策金融公庫の融資制度には、創業予定者向けの融資制度があり、地方銀行や都市銀行よりも審査が通りやすいと言われています。無保証・無担保で融資を受けられる場合もあるため、まずは検討してみると良いでしょう。
融資を受けたい場合は窓口で相談を行い申し込みを行い、審査や面談をクリアする必要があります。しっかりと事業計画書を準備し、ある程度の自己資金も確保しておくようにしましょう。
出資を受ける
投資家から出資を受ける方法もあります。出資には返済義務がありません。経営に関するアドバイスを受けたり、取引先を紹介してもらえたりすることもあります。しかし、経営に関する大きな決定を自分でできなくなる可能性があるなど、考慮すべき点があります。
助成金・補助金を利用する
飲食店が対象の助成金・補助金制度を国や地域から受けることも、資金調達の一つの方法です。
従業員の雇用を考えている場合、以下の助成金を受けられる可能性があります。
- キャリアアップ助成金
- トライアル雇用助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 人材確保等支援助成金
また、業務効率化や集客経営サポートに関する助成金・補助金として以下があります。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 受動喫煙防止対策助成金
厚生労働省や出店したい県・市町村の公式ホームページを見て、自分の店が該当するか調べてみましょう。
クラウドファンディングを活用する
開業資金や設備費用を一般の方から出してもらうクラウドファンディングは、近年注目を集めている資金調達の方法です。クラウドファンディングでは、出資者へのリターン方法が複数存在しています。
- 売上の一部や株式を提供する金融型
- お礼の言葉や活動報告のみでリターンは発生しない寄付型
- 商品やサービスをリターンとして提供する購入型
たとえば購入型を選択した場合、お店の優先予約権やテイクアウト商品、オリジナルグッズを提供するリターン方法を考えることができます。出資者に「この店に出資してよかった」と思ってもらえるリターンを考え、魅力的だと思ってもらえるようなプロジェクトを立案することが必要です。
また、クラウドファンディングを通じて開店前から開業予定の焼き鳥屋を知ってもらうことで、ファンを増やすチャンスがあります。
焼き鳥屋の開業資金を節約するポイント
焼き鳥屋の開業には多額の資金が必要ですので、節約できるところは節約するに越したことはありません。
以下に、焼き鳥屋の開業資金を節約するポイントを解説します。
居抜き物件を検討する
居抜き物件とは、以前の借主が内装や設備をそのまま残している物件のことを指します。
焼き鳥屋は煙が発生するため、適切な換気システムが必須となります。そのため、内装費にある程度のコストを費やす必要がありますが、以前焼き鳥屋をしていた物件を居抜きで使えれば、そのまま活用できる部分もあります。
居抜き物件を利用する際は、改装費がかかりやすい水回りの使いやすさや店舗の動線、コンセプトと間取りのマッチも考慮しましょう。
中古の備品・リース契約を活用する
近年の業務用備品は中古でも長持ちするものが多く、コストカットをしたい開業初心者にはうってつけです。専門の店舗什器販売サイトやオークションサイトで手軽に中古備品を購入できます。傷や汚れ、店舗で使いやすい大きさかなど、購入時には状態やサイズ、価格などを、じっくり照らし合わせて考える必要があります。
また、購入だけでなくリース契約という選択肢もあります。
備品の購入時はまとまった資金を用意する必要がありますが、リース契約は毎月のリース料の支払いになるため、初期費用を抑えられます。リース契約の場合、備品の所有者はリース会社にあるため、固定資産税や保険料はかかりません。リース会社によっては、備品のメンテナンスも請け負ってくれます。
しかし、リース料にはリース会社の手数料や金利、諸費用も含まれているため、長期使用する備品の場合は購入の方が総額が安くなることがある点には注意が必要です。
資金の使い道の優先順位をつける
内装、外装、設備すべてを理想通りにするために資金をかけることは難しいです。ここだけはどうしても譲れないというポイントを決め、そこには重点的に資金を使うようにするなど、資金の使い方にもメリハリが必要です。
優先して確保したいのは、物件取得費です。賃貸料を抑えようと立地の悪い場所を選ぶと、客足が減り収入が不安定になる可能性があります。
逆にコストカットしやすいのは、テーブルや食器などの什器、備品、材料費です。下ごしらえや調理の技術を磨けば、原材料の重要度は低くても、一定のクオリティの料理を出すことができます。
開店に必要最小限のものの優先順位をつけ、今すぐ必要ではないものを後回しにすることも必要です。
焼き鳥屋の開業資金は回収しやすい?
計画的に営業して順調に売上を上げられれば、焼き鳥屋は開業資金を回収しやすいといわれています。
ここからは、焼き鳥屋が開業資金を回収しやすい理由について解説します。
原材料費を抑えやすい
焼き鳥の原材料である鶏肉は、牛肉や豚肉と比べて低コストで入荷できます。時期による価格の変動も少ないため、仕入費用を抑えやすいと言えます。高級な素材にこだわらなくても、味付け次第で店舗独自の味を開発できる点も、原材料費を抑えやすい理由です。
調味料や野菜なども、仕入先との交渉で低コストで準備しやすいです。旬の野菜を使った限定メニューなどを取り入れれば、原材料費も安く済み、季節感のあるメニューで他店と差別化できます。
また焼き鳥と一緒にビールやサワーを飲む方も多いですが、アルコールの粗利率は20〜30%と高い傾向にあります。焼き鳥屋はアルコール類の注文も入りやすいため、高い利益率が見込めるでしょう。
年齢層が広く需要が安定している
焼き鳥はお酒のおつまみだけでなく、鶏肉をタレや塩で味付けする手軽さと味のシンプルさから小さい子どもや成長期の学生にも親しまれています。また、近年ではヘルシーさから女性に人気が高まっています。
このように、焼き鳥は子どもから年配の方まで、年齢・性別を問わず楽しめる料理です。
また、1年を通して需要が安定しているのも、安定した売上を出しやすい要素の一つです。
従業員の教育にコストがかかりにくい
焼き鳥屋の調理は、鶏肉を焼くことが中心で、焼き鳥を焼くための特別な資格は必要ありません。また、メニューもシンプルであることが多く、覚えるのに長い時間はかかりません。従業員教育に長い時間や手間がかからないため、開業して早い段階で安定した運営が見込めることも、開業資金を回収しやすい理由です。
メニューがシンプルで利益を見込みやすい
どこまでサイドメニューにこだわるかですが、焼き鳥自体のメニューは非常にシンプルです。焼き鳥の部位はいろいろありますが、人気部位の数種類に限定して提供したり、大量に入荷できた部位で日替わりメニューや盛り合わせを提供したりする工夫で、コストを抑えて利益を上げる可能性があります。
まとめ
鶏肉を伝統的な塩や醤油で味付けした焼き鳥は、日本のソウルフードと言えるでしょう。
特別な技術が必要ないため、開業しやすく、原材料費を抑えやすい、需要が安定している、利益を見込みやすいといった特徴から開業資金も回収しやすいと言えます。
競合が多い中で生き残れる焼き鳥店を作るためには、しっかりとコンセプトとターゲットを設定し、ニーズを分析し、自店の魅力が伝わるメニューを作る必要があります。
本記事が焼き鳥屋の出店を検討している経営者の方々の手助けになれば幸いです。
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