バー開業のための許可申請は?必要な資格や注意点・助成金についても解説

バー開業のための許可申請は?必要な資格や注意点・助成金についても解説

行きつけのバーがある方や、お酒を楽しむことが好きな方などは、自身でもバーを開業したいとお考えかもしれません。バーを開業するにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

今回は、バーを開業するために必要な許可・届出・資格を紹介するとともに、バー開業にあたって注意する点や利用できる融資・助成金について解説します。

バー開業に必要な許可申請

バー開業に必要な許可申請は5つあります。それぞれの詳細を見ていきましょう。

個人事業の開業届

個人事業の開業届とは新たに事業を開始したときに必要な手続きで、事業の開始日から1ヵ月以内に税務署に届け出ます。書面で届出書を作成して税務署に持参もしくは送付するか、パソコンからのe-Taxソフトで届出書を作成して提出する方法があります。
書面でマイナンバーを記載した申請書を提出する場合は、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。

食品衛生許可申請

飲食店を開業する場合は、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。
申請先は地域の保健所の窓口ですが、厚生労働省の食品衛生申請等システムを使用してインターネットでも許可申請が可能です。ただし申請手数料は窓口への納付となります。

図面上で施設の基準に適合するかの確認の後現地調査に入り、現地調査終了後に営業許可証が交付されます。交付までに約2週間かかることもあるため、遅くとも開業開始日の2週間前までに余裕を持って申請しましょう。
営業許可には期限があり、期限終了後も引き続き営業する場合は、期限満了の20日程度前には許可更新申請の手続きが必要です。

深夜酒類提供飲食店営業開始届出

深夜(午前0時から午前6時まで)の時間帯に主として酒類を提供する場合には、必要な書類を管轄の警察署に提出しなければなりません。必要書類は以下のとおりです。

  • 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
  • 営業の方法を記載した書類
  • 営業所の平面図の写し
  • 住民票の写し
  • 飲食店営業許可証の写し
  • 用途地域の確認書類

届出をしてから10日後に営業が開始できるので、遅くとも営業開始日の10日以上前の届出が必要です。ただし、この届出だけでは接待行為はできません。接待営業をするには風俗営業の許可が必要となります。

防火管理者選任届出

収容人数30名以上の店舗の場合は、防火管理者を選任し、管轄の消防署に届け出なくてはなりません。防火管理者には2種類あり、延べ面積300平方m以上の店舗では甲種防火管理者が、それ以外では乙種防火管理者が必要です。
防火管理者は資格を持っていなくてはなりませんが、指定の講習を受講し効果測定試験に合格すれば資格を得られます。甲種防火管理新規講習は2日で約10時間、乙種防火管理新規講習は1日で約5時間です。

特定遊興飲食店営業許可

風営法に基づき、深夜(午前0時から午前6時まで)の時間帯にダンスやショーなどの遊興を提供する飲食店は、特定遊興飲食店営業許可が必要です。自店が該当するかどうかは、管轄の警察署に確認してください。

特定遊興飲食店営許可を取得する前に飲食店営業許可を受けておく必要がありますが、特定遊興飲食店許可は警察の管轄、飲食店営業許可は保健所の管轄と許可の申請先は異なります。申請は予約制のところがあるためその点も事前に確認しておきましょう。
特定遊興飲食店営業許可の取得には実査を受けますが、実査の日程は申請から早くても1週間、多くの場合2週間程度かかることが一般的です。

バー開業に必要な資格

バー開業に必要な資格

ここからは、バーを開業するために必要な2つの資格を確認しましょう。

食品衛生責任者

食品衛生責任者とは、食品を提供する店舗で衛生管理を行うために必要な資格です。各都道府県の衛生管理協会が行う講習を受講すれば取得できます。講習は講習日に会場に赴いて受講する集合形式のほか、eラーニングでも受講可能です。受講時間は6時間、受講料は10,000円です。すでに調理師免許や栄養士免許を持っている方は、あらためて取得する必要はありません。

防火管理者

バーでの収容人数が30名以上の場合は防火管理者を置かなくてなりません。

防火管理者は店舗の管理や火災の予防を行うための国家資格で、講習を受ければ取得できます。店舗(防火対象物)の延べ面積が300平方m以上の場合は甲種防火管理者、300平方m未満の場合は乙種防火管理者の資格が必要です。甲種新規講習は2日間でおおむね10時間、乙種新規講習は1日でおおむね5時間の講習です。講習会に参加するほかに、オンラインでも受講できます。

バー開業にあたっての注意点

バーを開業するには次のような点に気をつけてください。

用途地域

日本では、地域ごとに建築できる建物の種類や用途に制限があり、これを用途地域といいます。
用途地域には13種類があり、飲食店開業が許可される地域が決まっています。また開業はできても面積の制限を受ける地域があり注意が必要です。契約する物件で希望の飲食店を開業することができるか、契約前にしっかり確かめましょう。用途地域の確認は各市区町村役所でできます。役所がインターネット上に用途地域を記した地図を公表していることもあるでしょう。

深夜酒類提供飲食店営業届が必要なお店が営業できる地域は、都道府県によって異なります。例えば、東京都の場合、以下の用途地域で営業が可能です。

  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域

また、上記の用途地域ルール以外に学校や病院などの保全対象施設の近くでは営業ができません。

店内の明るさ

バーや飲食店などの施設では、営業形態に応じて、以下のような照度(明るさ)のルールが設けられています。

  • 飲食店施設:50ルクス以上
  • 飲食店の客室:10ルクス以上
  • 深夜酒類提供飲食店の客室:20ルクス以上
  • 接待飲食店・低照度飲食店の客室:5ルクス以上

バーのように飲食をお客様に提供する営業で、営業所内の照度を10ルクス以下とするものは風営法で低照度飲食店とされ、開業にあたっては風俗営業(2号営業)として都道府県公安委員会から許可を受ける必要があります。
低照度飲食店であっても10ルクス以下が認められるのは客室に限り、客室以外では少なくとも10ルクス以上の照度を保たなくてはなりません。ちなみに飲食店での客室とは、客に飲食あるいは遊興をさせるために客に利用させる場所のことです。

衛生面

バーをはじめ、飲食店は衛生面での配慮が強く求められるため、保健所の検査を受けて飲食店営業許可を取得しなければなりません。

保健所の検査をパスするために気をつけるべき点の一例を確認してみましょう。

  • 壁:清掃しやすく防火性のあるものが望ましい
  • 床:清掃しやすく水はけがよいもの
  • 天井:配管がむき出しになっている場合、地域によっては認められない可能性
  • 着替え用の部屋:衛生面から厨房とは別に設置
  • 換気扇:十分な換気ができるもの
  • シンク:地域によっては定められた温度より低いお湯しか出ない場合は不合格
  • 調理設備:すべて厨房に納める
  • トイレ:従業員数に応じた数を適切な場所に設置し、設置場所は厨房から近すぎない配慮が必要
  • お客さま用と従業員用の手洗い場:照明は定められたルクス以上で、規定寸法以上の手洗い場、ハンドソープやアルコール消毒などの設置も検査対象
  • 食器:すべて扉付きの食器棚に収納
  • ゴミ箱:厨房内に蓋付きのゴミ箱を1つ以上設置

保健所の検査で不合格になると、開業までのスケジュールを変更せざるを得なくなる場合もあります。許可申請の前に保健所に相談しておくのが重要です。

客室の面積

深夜酒類提供飲食店には営業所の構造および設備の基準が設けられています。それによると客室が2つ以上あるときには、1つの客室の面積がそれぞれ9.5平方m以上なければなりません。客室が1つしかなければ9.5平方m未満でも構いませんが、2つ以上になると制限が生じます。9.5平方mに満たない部屋があっても深夜営業の届け出はできますが、9.5平方m以下の部屋は午前0時から午前6時までの間は使用できません

客室の数に関して注意しなくてはならないのは、一般の感覚では1室と考える場合も法律上は2室以上になってしまう場合があることです。それには見通しを妨げる設備の概念が関係するため、次の項目で解説します。

見通しを妨げる設備

深夜酒類提供飲食店には客室の内部に見通しを妨げる設備を設けてはいけない決まりがあります。1m以上の高さのものは見通しを妨げる設備と見なされるため、パーテーションの高さや椅子の背もたれの高さ、観葉植物の高さも1️mを超えるかどうかが判断基準となります。
それに加えて高さ1.2mの胸壁に囲まれた小部屋も天井まで壁がある部屋と同じ扱いになり、それだけで1室と数えられるため全体では2室以上があるとされ、各室9.5平方m以上の広さが必要です。

営業時間

先述のように、午前0時から午前6時の間に営業を行う場合は深夜における酒類提供飲食店営業届出を所轄の警察署に提出しなければなりません。この届出は酒類の提供を中心とするバーや居酒屋などに提出が義務づけられており、米飯といった主食と認められるメニューを常時提供している飲食店は届け出る必要がありません。
しかしバーのように酒類を主として出す店舗で締めにお米のメニューを出している場合はやはり届出が必要です。

深夜営業で客に遊興をさせる場合は特定遊興飲食店営業許可を取得しなければなりません。接待を伴う場合は風俗営業許可の取得が必要ですが、風俗営業許可を取ると深夜営業はできません。

バー開業に利用できる助成金・融資制度

日本政策金融公庫には新創業融資と新規開業資金融資制度がありましたが、2024年3月をもって新創業融資は廃止されました。
代わりに新規開業資金融資制度がより利用しやすくなっています。

新規開業資金融資制度では事業を始める・または事業開始後の税務申告を2期終えていない場合は申し込みの際に無担保・無保証人でも構いません。返済期間は設備資金なら20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金では10年以内(うち据置期間5年以内)です。
自己資金の用意は不要で、融資限度額7,200万円のうち、運転資金として使用できるのは4,800万円までです。
さらに女性・若者・シニアで創業する方・廃業歴があり創業に再チャレンジする方・中小会計を適用して創業する方は金利が優遇されます。
ほかにも自治体が融資制度を用意していることもあるため、開店する場所の自治体の情報を調べてみましょう。

また国が用意している補助金のうち、事業再構築補助金の成長枠・小規模事業者持続化補助金の通常枠・キャッシュレスを導入したときに受けられるIT導入補助金がバーの経営に利用できます。都道府県が補助金や助成金を用意していることもあるため、確認をおすすめします。

営業許可証取得までの流れ

バーを開業するために、さまざまな資格や許可が必要だということが分かりました。ここで一度、バー開業の営業許可証取得までの流れをまとめます。

  1. 物件の契約
    お店のコンセプト決定をし物件探しを経て契約します。物件を探す際には用途地域の確認が必要です。
  2. 食品衛生責任者講習
    栄養士や調理師などの資格を持っていれば受講は不要です。食品衛生責任者講習は1日で完了し、終了後に修了証が交付されます。
  3. 内装業者の選定
    内装業者を選定し工事を依頼します。時間があればDIYで行うことも可能です。契約する物件が居抜き物件かスケルトン物件かでも費用や工期は変わります。保健所への事前相談を店舗着工後に済ませておくと以後がスムーズです。
  4. 立入検査
    工事が終了したら保健所に営業許可を申請し、立入検査を受けましょう。申請から検査まで時間がかかるため、申請は開業1ヵ月前にしておくと余裕が見込めます。検査の結果、問題がなければ営業許可証が交付されます。許可証がなければ開業はできません。業態によっては警察署への届出が必要な場合があります。

資格や許可の取得には時間がかかることが多いため、開業間近になって慌てないように計画的に手続きすることが大切です。わからないことは地域の保健所や警察署など、管轄の機関に相談しましょう。

無許可・無届で営業を行った場合の罰則

資格や許可の申請が漏れていた場合、無許可または無届の営業となります。
飲食店営業許可を受けずに営業を行った場合は2年以下の懲役または2,000,000円以下の罰金が科されます。懲役刑が科されることもあるので注意が必要です。飲食店営業許可は5〜8年で更新をしなければなりませんが、この更新を忘れても無許可営業となるため注意が必要です。

深夜における酒類提供飲食店営業開始届が無届の場合は500,000円以下の罰金が科されます。この罰則を受けると前科がついてしまいます。行政から提出指導を受けたにも関わらず従わなければ最長6ヵ月の業務停止処分を受ける可能性もあるでしょう。

まとめ

バーを開店するためには、5つの許可申請2つの資格が必要です。許可がおりるには数週間の時間がかかることが考えられるため、許可申請は早めに行いましょう。また、申請前に保健所や警察署に事前相談をしておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。

業態や営業時間により必要な許可や届出があるため、自身の計画に必要な許可・届出はあらかじめ確認してください。用途地域の確認も大切です。

バー開業には国が用意する新規開業資金融資制度があるので利用を検討するのもよいでしょう。国のほかにも自治体が補助金を設定している場合があるため、自治体に問い合わせてみてください。

許可や届出を怠ると、懲役刑または罰金刑が科されます。開業前の手続きはしっかりと行い、理想のバーを開業してくださいね。

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