カフェの開業手続きではどのような届出が必要?必要な資格・手続きの流れも解説
カフェの開業前には資金調達や開業手続き、開店準備などやるべきことがたくさんあります。開業手続きでは、必要な許可の取得や届出、資格の取得を事前に済ませなければなりません。
今回はカフェの開業を検討している方に向けて、開業手続きの流れと必要な資格、届出、各種申請を紹介します。
カフェの開業手続きの流れ
カフェを開業するなら、まず必須になるのが食品衛生責任者の資格の取得です。
食品衛生責任者は、カフェなどの飲食店では店舗に1名以上配置することが義務付けられています。資格取得には、各都道府県が行っている食品衛生責任者養成講習会を受講し、修了する必要があります。栄養士や調理師免許を持っている方は、講習会の受講が免除され、申請のみで取得できるのが利点です。
食品衛生責任者の資格がないと営業許可の申請ができないので注意してください。
カフェを開業する場所と物件が決まったら、飲食店営業許可の申請が必要です。
ここでポイントなのは、内装・外装の工事を行う前に管轄の保健所へ事前に相談することです。保健所の基準に従い工事を行い、工事が完了する数日前に保健所に飲食店営業許可の必要書類を提出します。飲食店営業許可の申請には、管轄の保健所に営業許可申請書と、その他の必要書類を提出する必要があります。
保健所が書類をもとに施設の確認検査を行い、すべての基準をクリアすると営業許可証が交付されます。
基本的には、営業許可書が交付されれば営業を開始することはできます。しかし、どのようなカフェにするのかに応じて、その他の手続きが必要になります。
例えば、防火管理者・菓子製造業許可・深夜の酒類提供飲食店営業などがあります。届出先はそれぞれ異なっていて、消防署・保健所・警察署の生活安全課などです。
カフェの開業までに必要なこと
カフェを開業するには手続き以外にもいくつものステップを踏まなくてはなりません。個人経営の場合を例に、開業までに必要な項目を以下にまとめました。
- コンセプトの決定
- 資金調達
- 事業計画書の作成
- 物件選び
- 外装・内装の工事
- メニューの決定
- 営業に必要な設備や備品の購入
- スタッフの雇用
- プロモーション・宣伝
- プレオープン
コンセプトの決定はとても重要です。コンセプトがしっかり作り込まれていないと売上にもつながってこないでしょう。
コンセプトが決定したら、事業計画書を作成します。事業計画書の作成方法は、いくつものビジネス関連のサイトで紹介されているので活用できます。最近では、必要項目を入力するだけで事業計画書を作成できるインターネットサービスもありますので、活用してみてはいかがでしょうか。
カフェを開業するには資金調達も必須です。カフェの規模にもよりますが、一般的にカフェを開業するのに500万〜1,000万円程の資金が必要になります。自己資金で賄えない場合は、日本政策金融公庫などから借り入れをすることが一般的です。どこから資金調達するのかも熟考する必要があるでしょう。
物件選びもカフェの売上を左右するので重要です。立地・人通り・賃料など物件選びのポイントはさまざまあります。実際コンセプトに合った物件を探すのは骨が折れるかもしれませんが、コンセプトに合わない物件を選ぶと事業計画にも支障が出るため、物件選びは慎重に行いましょう。
物件選びができたら、店舗の外装・内装の工事です。コンセプトに合ったお店にするには、建設業者にコンセプトや店舗イメージをしっかりと伝え、納得いくまで話し合う必要があります。コンセプトに合ったメニューの決定や営業に必要な備品・設備の購入、スタッフの雇用、宣伝、プレオープンの準備など、やるべきことをリストアップして漏れがないように準備しましょう。
カフェの開業に必要な資格
カフェの開業に必要な資格は以下の2つです。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
カフェの開業をするうえで必要な資格なので、余裕をもって計画を立てて資格を取得することが重要です。
食品衛生責任者
2021年6月の食品衛生法改正により、すべての食品等事業者は食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(HACCP支援法)に基づく衛生管理が義務付けられました。これに対応した衛生管理計画の策定と実施が必要ですので、注意が必要です。
食品衛生責任者は、各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで資格を取得できます。通常1日の講習会で取得可能ですが、栄養士・調理師・製菓衛生師などの有資格者は、講習会が免除されます。
食品衛生責任者は、オーナーもしくは従業員の中から選任できます。食品衛生責任者の資格がなければ営業許可の申請ができないので、なるべく早い時点での取得が望ましいでしょう。
防火管理者
防火管理者とは、多くの人が出入りする建物で火災が起きないよう防火管理の計画を作成し、防火業務を行う責任者のことです。
消防法では一定規模の対象建物の管理権原者(所有者・借受人・代表者など)は、有資格者の中から防火管理者を選任して、防火管理業務を行わなければならないとされています。防火管理者になるには講習会を受講する必要があります。講習会は管理する建物の使用用途・延べ面積・収容人員によって受講する種別が異なるため、どの講習を受講すべきかは、管轄の消防署に問い合わせてください。防火管理者の講習は、一般社団法人日本防火・防災協会や各都道府県知事・消防本部・市町村の消防長が行います。
カフェの開業手続きではどのような届出が必要?
カフェを開業するときは、関係各所にさまざまな届出が必要です。
午前0時以降に酒類を提供する場合は深夜酒類提供飲食店営業営業開始届出書を所轄の警察署の生活安全課へ提出する必要があるなど、カフェのコンセプトによって異なります。コンセプトが決まったら必要な届出についてしっかり調べて準備しましょう。
ここでは、代表的な届出についてご紹介します。
消防署への届出
前項でお伝えした防火管理者が必要な場合は、選任または講習会を受講した後に消防署に届け出る必要があります。
また、外装・内装工事で店舗等の修繕・模様替え・間仕切り変更などの行為をする場合は、工事を着手する日の7日前までに防火対象物工事等計画届出書を管轄の消防署へ届け出る必要があります(火災予防条例第56条)。
さらに、建物を使用開始する日の7日前までに、防火対象物使用開始届出書の届出が必要です(火災予防条例第56条の2)。
届出に必要な書類は、管轄の消防署に確認しましょう。その他に消防署へ提出が必要な届出は、消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書です。この届出は、建物の用途や規模に応じて、消防法令上の設置する義務がある消防用設備などを設置した際に提出が必要になります。
税務署への届出
カフェに限らず、新規に開業する場合は個人事業主となるため、個人事業の開業・廃業等届出書を、事業開始後1か月以内に管轄の税務署へ提出する必要があります。
カフェの開業に必要な許可申請
続いて、カフェの開業に必要な許可申請は以下の2つです。
- 飲食店営業許可申請
- 菓子製造業許可申請
許可証の交付までに時間がかかるため、余裕をもって計画し、早めに申請することをおすすめします。
飲食店営業許可申請
カフェの営業を行うには所轄する保健所に営業許可申請を行い、基準に合った店舗を作り保健所の営業許可を得なければなりません。営業許可証の交付までの流れを以下にまとめました。
- 保健所への事前相談
- 営業許可申請の書類提出
- 施設検査
- 営業許可証の交付
カフェを営業する施設が決まったら、工事の着工前に保健所に事前に相談します。このとき、施設の設計図を持参するとよいでしょう。営業許可申請の書類提出は、保健所の基準に沿って工事を行い、工事完成予定日の10日前までに済ませるのがおすすめです。
申請後、保健所による施設の確認検査が入るので、一緒に立ち合いましょう。施設基準が満たされていたら、営業許可証の交付が受けられます。基準に満たない場合は、改善後に再検査を受ける必要があります。交付まで数日かかるため、開店日の設定には余裕を持たせましょう。
菓子製造業許可申請
菓子製造業は、食品衛生法で営業許可を必要とする業種の1つと定められています。お菓子やパンを製造・販売する場合は、菓子製造業許可が必要です。営業許可証の交付までの流れは、飲食店営業許可証の交付までの流れと同様です。2021年6月の食品衛生法改正で、以下の変更点がありました。
- 菓子製造業の許可を取得した施設において、客が購入した菓子・パンに飲料を添えて店内で提供する場合は、飲食店営業の許可を要しない
- 菓子製造業の許可を取得している施設で、調理パンを製造する場合は、そうざい製造業や飲食店営業の許可を要しない
カフェのコンセプトによりますが、菓子製造業許可があれば飲食店営業許可が不要な場合もあります。許可申請が必要かどうか判断に迷う場合は、早めに保健所に相談しておきましょう。
飲食店営業許可証の取得に必要なもの
ここでは、飲食店営業許可証を取得するために、保健所に提出する必要な書類についてお伝えします。自治体によって必要書類が多少異なることがあるので、事前に管轄の保健所に確認しましょう。
営業許可申請書
営業許可申請書は、管轄の保健所で入手でき、また自治体のホームページからもダウンロード可能です。申請書の記入方法がわからない場合は、保健所に確認してみましょう。
内装の平面図
内装の平面図は、調理場と施設全体の位置関係を示す図面です。図面は手書きで作成するか、内装の工事業者に依頼して準備しましょう。自治体によっては指定の書式がある場合もあります。
営業設備の大要・配置図
営業設備の大要・配置図とは、営業施設内の設備チェックリストと営業施設内の配置図のことです。
チェックリストと配置図は、保健所の窓口で入手するか自治体のホームページからダウンロードできます。店舗の所在地を示す場所の見取り図を記入する必要がある場合もあります。ただし、東京都の保健所では、施設の構造および設備を示す図面という名称に変わっています。また、東京都の保健所では、施設の構造および設備を示す図面を2通用意しなければなりません。自治体によって書式名や様式が異なることがあるので、管轄の保健所に事前に確認しましょう。
食品衛生責任者の資格を証明するもの
指定の講習会を受講して食品衛生責任者の資格を取得された方は、修了証で証明できます。栄養士や調理師・製菓衛生師などの資格がある方は、免許証で証明が可能です。
水質検査成績書
一般の水道水・専用水道・簡易専用水道以外の水を使用する場合には、水質検査成績書が必要になります。例えば、商業ビルの共用の貯水槽や井戸水などです。水質検査は、基本的に建物を管理している会社や管理者が検査結果を所持しているため、問い合わせてみましょう。
許可申請手数料
営業許可申請には手数料がかかります。開業地域や店舗の形態によって異なるため、管轄の保健所に問い合わせましょう。
登記事項証明書
法人としてカフェを開業する場合には、営業許可申請書に法人番号を記載する必要があります。ただし、営業許可申請書に法人番号を記載しない場合は、登記事項証明書が必要です。登記事項証明書は、法務局または最寄りの登記所で申請するか、オンラインで申請するかが一般的です。登記事項証明書を申請するには所定の手数料がかかるので留意しておきましょう。
まとめ
今回は、カフェを開業する際に必要な手続きや届出などについて紹介しました。
カフェをオープンさせるまでにはいくつものステップがあり、カフェの開業に必要な資格の取得や保健所・消防署など関係各所への届出、許可申請が必要なことがわかりました。手続きや許可申請には時間がかかることもあります。また許可申請にはいくつもの書類が必要です。必要な書類は管轄の保健所にしっかり確認してください。そして、しっかりと余裕をもった計画を立てて取り組みましょう。
費用はかかりますが、許可申請などを代行して請け負ってくれる行政書士に依頼する方法もあるので、検討されてみてもよいかもしれません。
街にある人気のカフェも、これらのステップ・手続きを経て今があります。念願のカフェ開業に向けて、ワクワクした気持ちで取り組んでくださいね。
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