レストラン開業に融資は必要?飲食店の主な資金調達方法も解説
レストラン開業には、物件や資金が必要です。開業するうえで気になるのが、資金調達方法や融資の受け方です。
そこで今回は、レストランを開業するときに融資は必要なのかや融資の種類、レストラン開業費用を抑える方法を解説します。レストランや飲食店の開業を考えている方は、こちらの記事を最後まで読んでみてください。
レストラン開業に融資は必要?
レストラン開業には物件取得費用、内装、備品、運転資金など、一般的に1,000万円ほどの資金が必要とされています。
これだけの資金を準備するためには時間がかかるため、公的機関や金融機関から融資を受けて資金を準備することが少なくありません。しかし、自己資金や出資金でまかなえる場合は必ずしも融資を受ける必要はありません。
レストラン開業の資金調達方法
レストランを開業するためには、初期費用や運営資金をどのように確保するかは大きな課題となります。自己資金に加え、融資や補助金などさまざまな資金調達の選択肢を知ることで、経営を安定させることができるでしょう。
ここからはレストラン開業に必要な資金を調達するための方法と、そのポイントを解説します。
自己資金を充てる
融資を受けることなく自己資金だけでレストランを開業できれば、金融機関への返済義務も生じません。ただし、自己資金で開業する時に陥りやすいのが資金不足です。日本政策金融公庫が行った2022年度の新規開業実態調査によると、開業時に苦労したのは、資金繰りや資金調達であり、その割合は57.1%でした。
レストラン開業にあたり、適切な予算の計画・準備をして進めないと予定以上に資金を使ってしまい、想定外のコストが発生する場合も考えられます。その場合、今後のビジネス存続が脅かされる可能性があります。資金不足にならないよう、レストラン開業前に詳細なプランを作成し開業費のリストアップ、そして予想外の事態に備えて予備資金もプランに含めておくとよいでしょう。
自治体の補助金を利用する
レストラン開業時の資金調達には、自治体や国が提供する補助金制度や助成金を利用する方法もあります。キャリアアップ助成金や地域雇用開発助成金など、厚生労働省が提供する制度のほか、都道府県が提供する開業者向けの給付金や助成金制度があります。この制度は、新規開業者に向けた設備投資・採用・教育などにかかる費用の補助になるでしょう。しかし、制度により利用条件や方法が異なるため、利用する前に内容を確認のうえ検討することが必要です。
金融機関から融資を受ける
金融機関から融資を受けることは、レストラン開業資金の一般的な調達方法です。
詳しくは後述しますが、まずは日本政策金融公庫のような政府系金融機関からの融資を検討しましょう。日本政策金融公庫には創業予定者向けの融資制度があり、地方銀行や都市銀行よりも審査が通りやすいといわれています。無保証・無担保で融資を受けることが可能な場合もあるため、金融機関からの融資を検討している方は利用してもよいかもしれません。
どの方法を利用する場合でも、窓口で相談をして申し込みを行い、その後審査や面談・契約・融資を受け返済するというのが基本的な流れとなっています。必要となる条件や書類は、それぞれ異なりますので事前に確認しておきましょう。
血縁者・知人からお金を借りる
血縁者や友人からお金を借りて開業資金にすることは、当事者同士の話し合いで資金のやり取りができるため、身近な方法です。両親からお金を出してもらうケースもあるでしょう。一見手軽に資金が調達できる方法に見えますが、お金を借りる場合は、借用書と金銭消費貸借契約書のどちらか一枚が必要となります。返済に関してトラブルやもめごとが起きた時には、交わした書類の内容で解決することになります。月々の返済額や返済期日が明確となり、管理もしやすくなるという点は契約書を交わすメリットです。借用書や金銭消費貸借契約書がないと、贈与とみなされ贈与税の対象となるため、親しい間柄や親族でも書類のやり取りが必要です。
投資家からの出資を受ける
投資家から出資を受けてレストランを開業する場合、融資と違い返済義務はありません。
投資家から出資を受けるメリットは、資金の返済義務がないことや、銀行などの融資よりも短い期間で資金調達ができる場合があることです。起業や経営に関するアドバイスを受けられること、人脈や取引先を紹介してもらえることもあることも挙げられます。融資ではないため返済義務はありませんが、投資家は資金のリターンを目的として出資しているため、事業を成長させ、最終的な出口戦略(イグジット)を目指す必要があります。イグジットは、創業者やファンド(ベンチャーキャピタルや再生ファンドなど)が株式を売却し、利益を手にすることです。
投資家から出資を受けるデメリットには、多額の資金調達が難しい、経営権が投資家に握られるというリスクが挙げられます。
クラウドファンディングを活用する
資金の調達方法として注目を集めているのが、クラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、インターネットを通じて多くの人から資金を集める方法です。少額から資金を集めることができ、融資ではないため返済義務はありません。クラウドファンディングのメリットとしては、資金を調達するだけでなく、レストランの認知やファンを増やすことにもつながります。しかし、資金を調達するためには多くの人から魅力的だと思ってもらえるプロジェクトの提示や、見合った活動が必要です。
レストラン開業資金の主な融資元
レストラン開業資金の主な融資元は以下の4つです。
- 日本政策金融公庫
- 信用保証協会
- 自治体による融資制度
- 銀行などの民間金融機関
それぞれ詳しく解説していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、国が100%出資をする金融機関のことであり、国民生活事業・農林水産事業・中小企業事業の3つにわかれています。事業に分かれて、融資や各種支援、情報提供などを行っています。日本政策金融公庫は民間の金融機関では補えない部分を補完する役割があり、はじめて起業する人にも寄り添った融資制度があります。
信用保証協会
信用保証協会とは、信用保証協会法に基づいて設立された公共機関で、小規模事業や中小企業の円滑な資金調達の支援を目的とした機関です。はじめて起業する人や、市中の中小企業が融資を申請する際、大企業と比較すると経営リスクが高まります。返済能力などの信用面を考慮するとハードルが高くなり、融資を調達するのは容易ではありません。しかし、信用保証協会が開業者の債務保証をすることで、金融機関からの融資が受けやすくなります。信用保証協会の債務保証があることで、金融機関が融資した企業が倒産などで返済が不可能となった場合でも、信用保証協会は金融機関へ残債を代わりに返済するためお金を回収することが可能です。この制度があることで、金融機関は開業者や中小企業への融資が容易になります。
自治体による制度融資
自治体が起業したい人への支援に力をいれているのにはさまざまな理由がありますが、そのひとつとして経済効果が挙げられます。低金利・無保証・無担保など、融資を受ける利子の一部、もしくは全額を補助する制度を実施している自治体もあります。しかし、必ず融資を受けられるわけではなく、融資を受けられても融資開始までは時間が必要となるケースも少なくありません。
自治体では起業する人のための塾や個別相談、セミナーなどを開催していることもあり、地域の特性や現状を理解した的確なアドバイスを提供されています。
銀行などの民間金融機関
銀行などの民間金融機関からは、創業者向け融資を受けることができます。創業者向け融資とは、信用保証付きの自治体が行う創業者向けの制度を中心に取り扱ったものです。自治体の支援制度の融資を受けるのが難しく、金融機関が起業者を支援する場合、独自の創業者支援制度を用いることがあります。
融資を受けるメリット・デメリット
融資を受けるメリットは以下のとおりです。
- 資金繰りを安定させ、倒産リスクを抑える
- 実績を作り、新たな融資を受けやすくする
融資を受けることで手元に資金が残り、その分倒産リスクを抑えることが可能です。資金に余裕がないと資金確保にばかり目がいってしまい、本来のビジネスの方向性が逸れてしまう可能性や、事業に集中できなくなってしまいます。そうしたリスクを事前に防ぐ意味でも、融資を受けて現金に余裕がある状態を維持しておくとよいでしょう。また、融資を受けられるのは銀行だけではなく、信用金庫からも受けることができます。融資を受ける際は、融資の受けやすさや対応の丁寧さなども考慮してみましょう。
一方、融資を受けるデメリットは以下のとおりです。
- 資金調達まで時間がかかる
- 返済が経営を圧迫することもある
融資を受けるには必ず審査が必要です。審査に通れば融資を受けることができますが、審査に落ちれば資金調達ができなくなります。融資を受けるには、融資する側と起業者との信用性や、返済可能かなどの観点から審査が行われます。また融資の審査には、3週間から1ヵ月程時間がかかるため、審査に通ったとしてもすぐに資金調達はできません。すぐに資金が必要な場合は、融資ではない選択肢も検討してみましょう。
融資を受ける際の注意点
融資を受ける際にはいくつか注意点があります。
- 無理のない範囲での返済計画
- 開業資金を最小限に抑える
- 返済不要の補助金や助成金の利用
融資を受ける前に事業計画や収益の予測を立てて、月にどのくらい返済が可能なのかを計算し、ご自身の経済状況なども考慮したうえで融資する金額を決めましょう。無理な返済は事業がうまくいかない原因になってしまいます。
また、融資は必要な金額だけを借りることが大切です。過剰に借り入れてしまうと返済リスクが高くなり、審査に通りにくくなってしまうため注意が必要です。資金は必要最小限に抑え、国や自治体の補助金や助成金を活用して、融資での借り入れを減らし事業資金を確保しましょう。
レストラン開業資金を抑える方法
レストランを開業するには、さまざまな費用がかかりますが、少し工夫することで初期投資を抑えることが可能です。資金を効果的に抑えつつ、質の高いサービスを提供するための方法について解説します。
低コストの物件を探す
レストラン開業資金を抑えるためには、低コストの居抜き物件を探すのがおすすめです。居抜き物件とは、営業していた状態をそのまま残して売りに出されている物件です。レストランのように、飲食店の居抜き物件であれば最初から設備が整っているため、開業資金も抑えることができます。設備の老朽化やデザインの変更が難しいというデメリットがあるため、その点も考慮したうえで探してみてください。
備品は中古品を検討
レストラン開業時の備品は、必ずしも新品ではなくてはいけないという決まりはありません。中古の備品であっても、きちんと手入れがされていれば問題なく使用できます。近年では、リサイクルやエコの考え方が広がり、SDGsの観点からも、選択肢が多様化しています。
リース契約の活用
リース契約を活用し、開業に必要な備品をリースで契約することで開業資金が抑えられます。リースは長期で貸し出すことを目的としているため、レンタルよりも金額が割安となり、費用を抑えることができます。
リース商品の所有権はリース会社にあるため、リースしている備品の固定資産税がかからない点もメリットといえます。備品など、かしこくリースを利用するのがおすすめです。
まとめ
レストラン開業のためには多額の資金が必要になり、融資を受けた場合は開業後から返済の義務が生じます。しかし融資を受けることで、手元の現金が増えて経営が安定するため、資金不足の心配も軽減されます。
レストラン開業をする店舗も、設備や備品をそのまま残した居抜き物件や、中古の備品の購入やリースの利用でコストを抑えることが可能です。
しっかりと開業までの計画を立て、必要な資金を明確にすることで、今後のビジョンも明確になりますよ。
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この記事を監修した人
木下洋平
経営コンサルタント
中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント、日商簿記1級を保有する。株式会社リクルートなどの勤務を経て現職。