飲食店の開業費用の相場はいくら?資金調達方法・開業までの流れを解説

飲食店の開業費用の相場はいくら?資金調達方法・開業までの流れを解説

飲食店の開業には、一般的に1,000万円以上の費用がかかります。

自己資金ですべて支払える場合には問題ありませんが、これだけの資金を準備するためには時間がかかってしまうでしょう。そのため、多くの人が公的機関や金融機関から資金を調達して開業しています。

この記事では、飲食店の開業費用の相場や資金調達の方法、飲食店開業までの流れをご紹介します。飲食店の開業をご検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

飲食店の開業費用の相場はいくら?

開業費用の相場は2023年日本政策金融公庫の調査によると、平均は1,027万円中央値は550万円となっています。開業費用の相場はすべての業種が含まれており、飲食店以外の開業も対象です。

開業費用の内訳を見ると、自己資金の平均は280万円金融機関などからの借り入れが平均768万円となっており費用全体の約89%を占めます。飲食店では物件取得費用、内装や仕入れなどの店舗設備費用、備品や宣伝などの運転資金が必要となってくるため費用が高額になりやすいです。そのため必要な費用を把握し計画的に資金を集めることが大切です。

主な資金調達方法

資金調達方法には、多くの選択肢があります。資金調達する際に主な資金調達方法を知っておくことが重要です。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫の融資では、年齢性別問わず幅広い方の創業を新規開業支援資金として支援しています。利用できる人は新しく事業を始める方や創業おおむね7年以内の方です。ただ、事業計画に無理がなく、遂行できる能力が十分にあると判断された場合に限ります。判断をする材料として事業計画書の提出が必要です。

資金の使用用途は次の目的に限られます。

  • 新たに事業を始めるため
  • 設備資金
  • 運転資金

上限融資額は7,200万円でそのうち運転資金は4,800万円までです。

返済は翌月から始まり、返済期間は設備資金が20年以内運転資金が10年以内です。

さらに、女性や35歳未満の若者、55歳以上の中高年の人はより有利な利率で融資が受けられます。ほかにも廃業歴などがあり創業に再チャレンジする人は、以前の事業に関する債務を返済するために資金の使用が可能です。返済期間も運転資金が15年以内と通常より長く設定されています。

民間金融機関の融資

民間金融機関からの融資を受ける際は、全国信用保証協会の信用保証制度が活用できます。利用条件は飲食業の場合、資本金5,000万円以下で従業員数は50人以下の場合が対象です。小規模企業者のときは5人以下が条件となります。

保証限度額は、中小企業信用普通保険の限度額2億円と無担保保険の限度額8,000万円を合わせた上限2億8,000万円です。保証人は原則として必要ありませんが、保証人が必要となる場合があるので注意が必要です。

助成金や補助金を利用した資金調達

助成金や補助金はどちらも国や地方自治体から支給されるお金です。ただし、誰でも支給されるわけではなく、申請後に支給される条件が満たしているかの審査があります。

助成金は事業主に長時間労働の改善などの課題を解決するために支給されるお金です。申請から受給までに時間がかかるので要件を満たす場合は早めに申請をしておくとよいでしょう。補助金は仕入れ費や施設の増築・改装、デジタル化などの費用を補助する仕組みで、件数や金額が制限されていることがあるためすべて受給できるとは限りません。また、補助金は後払いとなっていることが多いので、資金を準備しておく必要があります。

飲食店の開業までの流れ

飲食店の開業までの一連のプロセスは以下のステップに沿って進められます。

  1. 事業計画
  2. 店舗の契約
  3. 資格取得
  4. 開業

事業計画から飲食店開業するまでに1年程かかることが少なくありません。条件によっては1年以上かかる場合もあるため、余裕を持って手続きを進めることが重要です。

事業計画

飲食店を開業するためには、最初に事業計画の作成が重要です。

融資を受ける場合は、金融機関や公的機関に事業計画書を提出する必要があり、審査の際に利用されます。事業計画書にはお店のコンセプトやビジョンお店を創業したい理由も書きましょう。しっかりとビジョンを持ち、自分の持つ強みを活かすことで、より説得力が増しますよ。

事業計画をもとに立地やターゲット主力商品営業時間などを細かく計画し、お店のイメージを固めていきます。その後に売上計画や投資計画、損益計画などを作成していきます。計画を作成する際に数字の整合性が取れていることが重要です。数字に根拠がないと融資を受けられないことがあります。

店舗の契約

店舗がなければ飲食店を開業できません。店舗の契約前に資金を準備するという考えの方もいますが、事業計画に合う店舗が見つけられなければ開業準備を進められません。長ければ半年ほど物件探しに時間がかかる場合もあるため、資金調達と物件探しを並行して進めるのもおすすめです。資金が調達できる前に理想とする物件が見つかった場合は、可能なら仮押さえすることでリスクを回避できます。

資格取得

飲食店を開業するためには、食品衛生責任者の資格が必須です。客席が30席以上の場合は防火管理者の資格も必要です。

食品衛生責任者とは食品衛生上の危害発生防止のために、食品の管理や衛生上必要な措置を徹底させ、食品衛生上の管理運営にあたるものです。都道府県知事などが行う食品衛生責任者になるための講習会の受講修了者が取得できるほか、栄養士や調理師免許などの特定の免許を持っている人も食品衛生責任者になることができます。

防火管理者は火災などによる被害を防止するために防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理業務を計画的に行う責任者です。防火管理を適切にできる監督的立場の人が防火管理講習を受講して資格を取得するのが一般的です受講する際は事前に予約が必要になります。

ほかの飲食店との差別化をはかるために、お店のコンセプトに合わせて調理師免許やソムリエなどの資格も取得するのもよいですね。

開業

開業に際して、開業届や飲食店営業許可申請、防火管理者選任届などを提出します。

開業届は、店舗所在地を管轄する税務署に開業から1ヵ月以内に提出します。書類は税務署や国税局のホームページから入手可能です。

飲食店営業許可申請は、開業前にあらかじめ店舗所在地を管轄する保健所に提出して、営業を許可してもらう必要があります。まず、工事着工前に事前相談で基準を満たしていることを確認してから内装工事を着工します。工事完成の10〜14日前に申請書や食品衛生責任者の証明書類を提出し、店舗の検査を受け、合格すれば許可証が交付されます。

防火管理者選任届は、防火管理者の資格を持つ人を選任して、店の所在地の管轄消防署に提出する必要があります。店舗の面積によって300㎡未満の乙種防火管理者と、300㎡以上甲種防火管理者の二種類があるため、店舗面積に合わせて届け出をするようにしましょう。

場合によっては建物使用1週間前までに防火対象物使用開始届や、工事開始1週間前までに防火対象物工事などの計画届出書、火を使用する設備などの設置届が必要となる場合があります。お店が該当するかどうか、図面が出来上がった時点で保健所や管轄の消防署に相談しておくと安心です。

開業費用の内訳

飲食店を開業するためにはさまざまな費用がかかります。開業費用の内訳を把握して準備しましょう。

物件取得費用

物件取得費用とは店舗の購入代金や仲介手数料、保証金、開店前の家賃などが含まれます。

飲食店の場合の相場は保証金が家賃の半年分、礼金が2ヵ月分、仲介手数料が1ヵ月分です。オープンまでの家賃を3ヵ月分とすると、物件取得費用は家賃の12ヵ月程度になります。保証金または敷金は立地・物件によって異なるのであらかじめ確認が必要です。ほかにも物件によっては造作譲渡料など、居抜き物件にのみ必要となる費用があります。設備を修理しなければならない場合、かえって割高になることがあるので注意しましょう。

店舗設備費用

店舗設備費用は、大きく厨房設備と店内設備に分けられます。

厨房設備とは設置が義務付けられている給湯設備や冷蔵設備、洗浄設備などの設備と衛生面に関する手洗設備や駆除設備など調理のために設置する設備です。

店内設備には、設置が義務の換気設備・サービス向上のための音響設備・照明設備・通信設備などがあります。設置が義務付けられている設備は管轄する保健所ごとに規定があり、内容が変わることもあるため、店舗予定地の管轄する保健所に聞いてみましょう。

導入する設備は飲食店の種類によって大きく異なります。例えば、焼肉店だと排煙用のダクト、寿司店だとネタを置くための冷蔵機能を備えたガラスショーケースといったものが必要となります。必要となる設備は希望によって異なるので、デザインが決まっている場合は内装業者に相談してみましょう。

店舗運営資金

店舗運営資金とは一般的に運転資金のことを指し、売上に対して変わってくる変動費と売上とは関係なく一定にかかる固定費があります。

変動費は食材の仕入れなどにかかってくる費用です。固定費は、店舗の家賃・従業員の給料・保険料など毎月一定でかかる費用で、売上がなかったとしても発生します。

適切な資金管理のためには、変動費と固定費のバランスを理解し、予測しておくことが重要です。さらに、運営資金は繁忙期のための在庫の確保や急な設備故障などのトラブルにも対応できるように十分に確保しておく必要があります。

店舗運営資金を十分準備しておくことで、季節や市場のニーズに対応するための新メニュー開発などにも資金が活用できます。お店が安定して長く繁栄するためにも、店舗運営資金は重要です。

飲食店の開業費用を抑えるためには

飲食店の開業には、物件取得費用・物件設備費用・店舗運営資金など、多額の初期費用が必要です。これらの初期費用を抑えるための方法を紹介します。

事業計画・物件の条件を変更

開業費用が予算を上回っている場合は、費用を抑えるために事業計画の見直しが必要です。

お店のコンセプトやイメージに近づけるために理想のデザインに凝ってしまうと、あっという間に予算オーバーとなることも少なくありません。必要に応じて事業計画を見直し、どこを重視して内装費をかけるか調整しましょう。

物件の条件を変更することでも費用を抑えられます。物件のコストを決める要因は立地や面積などです。面積を減らすと席数を減らす必要があるかもしれませんが、検討する余地はあるでしょう。また、駅から少し遠い立地の物件や幹線道路に面していない立地の物件に変更することでも費用を抑えられます。

事業計画とコンセプトに沿い、妥協できる部分とできない部分に仕分けして妥協できる部分のコストを下げることで費用を抑えることが大切です。

居抜き物件の検討

居抜き物件の検討

飲食店の開業費を抑えるためには居抜き物件を検討してみるのもひとつの手段です。居抜き物件とは、前のテナントの設備や内装をそのまま使える物件のことです。

開業したい業態のお店の居抜き物件を選ぶことができれば、内装費や設備費を大きく削減できます。特に水回りの工事は費用が高くなりやすいので不要ならば大きく費用を削減可能です。ただし、造作譲渡料がかかる可能性がある点と、造作譲渡の設備などに修理が必要かどうかは判断が重要な点には注意が必要です。造作譲渡料と修理費用を計算して、総合的に判断することが重要です。

中古の備品・リース設備の使用

飲食店の開業費用を抑えるためにはテーブルや椅子、厨房器具などの中古の備品やリース設備の使用も挙げられます。特に、冷蔵庫などの厨房器具はテーブルなどに比べると高額のものが見受けられるので中古品の購入やリース契約で大幅に費用削減が可能です。ただし、リース契約の場合は毎月料金がかかってくるので店舗運営資金に組み込んでおきましょう。

開業資金の計算方法

開業資金の計算方法は次の計算式で求めることができます

開業資金=物件取得費+店舗設備費用+店舗運営資金×3ヵ月分

物件取得費:店舗の購入代金、仲介手数料、保証金、開店前の家賃など

店舗設備費用:内装費などを計算

店舗運営資金:想定できる現実的な売上予測、売上に対する原価率、原価以外に毎月発生する経費を仮で計算し、原価と合計

まとめ

飲食店開業に必要な資金の調達方法と開業までの流れを解説しました。

飲食店の開業には店舗などの物件取得費用、内装など店舗設備費用、人件費や仕入れなど店舗運営資金が必要です。

費用を賄うためには新規開業者向けの日本政策金融公庫の融資や金融機関の融資、国や自治体から助成金・補助金の調達などの手段があります。

融資を受けると返済義務が生じるため、慎重に計画を立てましょう。居抜き物件の活用や中古品やリース契約を利用することで、開業資金を抑え、返済負担を軽減できるかを検討してみましょう。

飲食店の開業を検討している方は、まず管轄の保健所に事業計画書を持って相談してみるのがおすすめですよ。

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この記事を監修した人


木下洋平

木下洋平

経営コンサルタント
中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント、日商簿記1級を保有する。株式会社リクルートなどの勤務を経て現職。