バー開業に必要な資金の目安 │ コストを抑えたい場合に注意すべきことも解説!
「これまでのバーでの勤務経験を活かして独立したい」「未経験だけど、自分のお店を持つのが夢」と考える方もいらっしゃるでしょう。
今回は、バー開業に必要な資金や資金調達のポイントを解説します。バー開業を目指す方がスムーズにバーを開業できるよう、準備すべきポイントを解説していきますので参考にしてください。
バー開業に必要な資金の目安
バー開業にはどのような目的のためにどのくらいの資金が必要なのでしょうか。まずは、バー開業に必要な資金について解説します。
初期費用の予算相場は500〜1,000万円
バー開業に必要な資金の予算相場はおよそ500~1,000万円といわれています。それぞれどのような項目に対してどれくらいの資金が必要なのか確認しましょう。
物件取得費
物件取得費には、店舗を借りる際の礼金や仲介手数料、保証金、そして初回に支払う賃料などが含まれます。保証金は、一般的に賃料の10ヵ月分といわれます。これに礼金や手数料などを含めて、賃料の12ヵ月分を物件取得費の初期費用として準備する必要があります。
例えば、賃料を月額25万円とすると物件取得費は300万円が目安です。物件取得費は開業に必要な資金全体で大きな割合を占めるということがわかります。
どの立地にどのような規模の店舗を出店するかという物件選びはそのまま集客力にも直結するため、開店後のバーの経営においてとても重要です。しかし、人気のエリアや人通りが多いエリアなどの地域、物件の条件によっては賃料が高く、初期費用もまとまった額が費用になる場合もあります。
物件取得費を抑えるためには、一定期間賃料が無料になるフリーレント期間を交渉する、居抜き物件を検討するという方法が考えられます。
居抜き物件とは、以前使用されていた内装や設備のまま残っている物件を指します。照明やカウンターなどの内装、厨房設備などをそのまま利用できれば、内外装費や設備、備品にかかる費用を抑えられる可能性があります。居抜き物件は、設備の状態や物件の契約条件をしっかり確認して検討しましょう。
内外装工事費
内外装工事費とは、店舗の内装や外装を整えるために必要な費用です。特に近年はSNSの発達により、内外装の美しさで人を惹きつけられるかが重要なポイントとなります。特にバーは、店内のインテリアや雰囲気がお客様の満足度に影響を与えやすい要素です。
内装工事には、カウンターや座席の設置、照明や壁、調理スペース、トイレの改装費などが含まれます。外装工事には、店舗の外観の改装費や看板の設置費用などが考えられます。
居抜き物件では、内装や設備を活用できれば費用を抑えることができます。内装や設備がすべて取り払われた状態から自由に内装を設計できるスケルトン物件の場合は、店舗のコンセプトにぴったりの内装を整えられるメリットがある反面、内装工事にかかる費用が高くなりやすいのがデメリットといえます。
バーの内外装工事費の相場は、居抜き物件の場合は15~30万円/坪、スケルトン物件の場合は30~60万円/坪が目安です。
厨房区画の排水管やガス管設置などの基礎工事、空調設備の導入にはまとまった金額が必要になることも多いので、居抜き物件を検討する場合はそのまま使用することができそうか確認するのがポイントです。内装費はこだわればこだわるほど天井知らずの金額になってしまいがちです。バー開業には内装費のほかにも費用がかかります。開業後もランニングコストも含め、資金には余裕を持って慎重に検討しましょう。
なお、内外装の工事費は法人税法上、固定資産として計上されます。それぞれの耐用年数に応じて将来の費用として計上されるため、バー開業して2年目以降の法人税を減らすアイテムとして残り続けます。初年度は資金支出が苦しいですが、2年目以降は税金の負担が少なくなっていくため、バー経営の観点では初年度にどれだけ資金を確保して対応していけるかがポイントともいえます。
設備・備品費
お酒を飲む場所であると同時に社交の場でもあるバーは、店舗の雰囲気が重要です。テーブルや椅子、カウンターなどの什器や備品によって高級感のある店なのか、カジュアルな店なのかといった、お客様が受ける印象が大きく変わります。内外装工事費と同じくこだわるほど費用がかさみますが、空調設備などの設備やお客様が使用する備品はお客様の居心地の良し悪しに直結するので、予算とのバランスが難しい項目でもあります。
ランニングコストの予算相場は1ヵ月50〜80万円程度
バーを開業するためには、開業のために必要な資金だけではなく開業後のランニングコストも準備しておく必要があります。
ランニングコストとは、運営していくために必要な継続して支払う費用のことを指します。バーの運営を継続するための費用と考えましょう。バーのランニングコストの予算相場は1ヵ月50~80万円程度です。バーの場合は、最低でも3ヵ月、できれば半年分のランニングコストを用意しておくのがよいでしょう。
ここからは、バー開業後のランニングコストについて解説します。
家賃や水道光熱費
家賃は支払い金額が毎月変わらない固定費なので、どれだけ金額を抑えて契約できるかがポイントです。
バーの家賃は物件によって異なりますが、東京23区のバーの家賃の平均相場を確認してみましょう。中央区や港区、渋谷区といった中心部では、家賃の相場は月額18〜30万円程度となっています。足立区や葛飾区などの郊外エリアでは、月額5〜12万円程度が相場です。
家賃は、立地条件や物件の広さ、最寄り駅からの距離などに大きく影響されますが、一般的には売上の10%以内が望ましいとされています。
水道光熱費は月によって金額が変動しますが、発生する金額が大きく変わることが少ないため固定費として考えることもできます。
水道光熱費の平均的な相場は売上の3~7%程度です。固定費を少なくすることは売上から変動費を控除した限界利益で損益分岐点が下がることにつながります。そのため、利益を残して経営していくためには、売上を伸ばすだけでなく日々の水道光熱費を抑えながら営業することも大切です。
水道光熱費を下げるために、以下のような工夫が考えられます。
- 消費電力が少ないLED照明の使用
- 空調設備のメンテナンスや使用方法の見直しでエネルギー効率を上げる
- 節水型の蛇口や食器洗浄機の導入
- トイレの水量調節装置の設置
これらの方法は開業時の内装工事の際に取り入れることもできるので、開業前に検討してみるのがおすすめです。
人件費
人件費には、従業員の給与、社会保険料、福利厚生費などが含まれます。深夜営業のバーの場合は、深夜手当や時間外労働の割増賃金も発生するでしょう。
店舗が忙しい時間帯や曜日でスタッフの数を変えることができるので変動費の要素もありますが、ある程度まとまった金額が必要なので固定費と考えることができます。人件費は効率的なシフト管理が重要です。お客様の利便性を損ねることのないよう、繁忙期やピークタイムには十分なスタッフを配置できるように準備しましょう。
仕入れ費用や材料費
仕入れや材料は、魅力ある商品をお客様に提供するためにも重要な費用です。
バーの仕入れ費用は、主に以下のような項目で構成されます。
- アルコール類:バーの主力商品であるビール、ワイン、ウィスキー、カクテルのベースとなるスピリッツなど、幅広い種類のアルコールを取り揃える必要があります。これらの仕入れ価格は、商品のブランドや品質によって大きく異なり、高品質なものほどコストが高くなる傾向にあります。
- ノンアルコール飲料:ソフトドリンクやノンアルコールカクテルの材料として、ジュース、シロップ、トニックウォーターなどが含まれます。
- 食材:軽食やおつまみを提供するバーでは、食材の仕入れも重要なコストです。チーズ、ナッツ、クラッカー、フルーツ、ホットメニュー用の食材(ピザ、サンドイッチの材料など)、カクテルを作るためのガーニッシュと呼ばれるレモン、ライム、ミントなど、料理やカクテルに飾りつける食材などが考えられます。新鮮な食材を適切に管理し、ロスを最小限に抑えることが求められます。
- その他の備品:ストロー、ナプキン、グラス類なども仕入れの一部として考慮する必要があります。
このように、バーではさまざまな商品を仕入れる必要があるためランニングコストのなかで大きな部分を占めます。一般的には、人件費と材料費を合わせて売上の60%以内に収めることが望ましいでしょう。
広告宣伝費
バー経営における広告宣伝費は、集客と認知を高めるための重要な投資であるといえます。特に新規開業時や特別なイベントを行う際には、効果的な広告が来店者数を大きく左右するでしょう。
広告宣伝費には、SNS広告、ウェブサイトの運営、チラシ配布、ポスティング、看板制作費などが含まれます。SNS広告はターゲットを絞った配信が可能で、少額から始められる広告方法です。グルメサイトや地域情報サイトへの登録など、出店エリアと来てほしい顧客ターゲットに合わせて、費用対効果を考えながら長期的な集客効果を維持できるよう予算を考える必要があります。
バー開業資金の調達方法
バーの開業にはまとまった資金が必要だということがわかりました。ここからは、バー開業のための資金の調達方法を解説します。
補助金や助成金を利用する
バー開業時に活用できる補助金や助成金には、主に国や地方自治体が提供するものがあります。代表的なものとしては創業補助金や小規模事業者持続化補助金が挙げられます。
創業補助金は、新規開業者に対し、設備投資や店舗改装費、宣伝費などの一部を助成する制度です。小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化を目的とした取り組みに対して支援されます。
また、各自治体独自の助成金や、女性起業家向けの支援制度もあるため、地元の商工会議所や自治体のホームページを確認することが重要です。
自己資金を準備する
補助金や助成金以上にわかりやすい方法としては、退職金や貯蓄などの自己資金を利用する方法があります。
この方法は借入れのリスクがなく、資金提供者や金融機関からの制約を受けにくく、経営方針や事業内容を自分の判断で決められるメリットがあります。自分のビジョンに沿った店舗作りができるのが大きなメリットといえるでしょう。
しかし、上記の通りバー開業には多額の資金が必要であり、すべてを自己資金で賄うのは難しい場合も少なくありません。自己資金で賄うのが難しい場合には、ほかの資金調達方法と組み合わせて資金を準備しましょう。
融資を受ける
融資とは、事業資金を金融機関から借りる方法です。必要な金額すべてを借りる全額融資と、自己資金などで足りない分だけ融資を受ける方法があります。ただし、自己資金がないと開業準備が整っていないと判断される可能性があるため、自己資金もしっかりと準備することをおすすめします。
バー開業にあたって融資を受けるには、開業の目的、運営方針、収支計画、返済計画などを詳細に記載した事業計画書を作成し、融資を提供している金融機関の面談や審査を受けます。保証人や担保が必要な場合があることも少なくないので、事前にそういった準備も必要です。
親族の援助やクラウドファンディングの利用
親族の援助をバー開業の資金にすることもあるでしょう。
親族からの援助の場合は低金利や柔軟な返済条件といったメリットがある一方、金銭トラブルが関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。援助を受ける際は、契約書を作成して条件を事前に確認することが重要です。また贈与税などのリスクも発生するので、契約書を作成する際には税理士などの専門家にも相談するとよいでしょう。
クラウドファンディングとは、プロジェクトを立ち上げた個人や法人がインターネットを通じて不特定多数の人々から少額ずつ資金を集める方法です。
資金調達だけでなく事前に顧客を獲得できるというマーケティング効果がありますが、プロジェクトが成功しないと資金が集まらず計画が遅れる可能性があります。また、プロジェクトを進める手間や手数料が発生します。
バー開業資金を安く抑えたい場合に注意すべきことは?
開業資金の総額を抑えられれば、開業後の経営にも余裕が生まれます。しかし、開業資金を安く抑えることを重視しすぎると、コンセプトに合わなかったりお客様の利便性を損なってしまったりといった、開業後の不安につながる可能性があります。
ここからは、バーの開業資金を安く抑えたい場合に注意すべきことを解説します。
立地や物件選びの注意点
バーは立地が売上に大きく影響します。繁華街や駅近は理想的ですが、家賃が高くなりがちです。コストを抑えるためには、やや離れた場所でもターゲット層が多く集まるエリアを選ぶなど、予算に合わせてしっかりとエリアマーケティングすることが大切です。
エリアマーケティングは、地域の特性を活かしたマーケティング手法です。その土地の生活様式、交通インフラ、住民の年齢層や嗜好、産業などの地域性と、バーのコンセプトと合うかなどを調査して物件を選ばないと、せっかく素晴らしいバーを開業しても客足が伸びないということになりかねません。
また、バーの場合は深夜営業が可能な地域かどうかの確認も大切です。
居抜き物件や譲り受けの際の注意点
バーやスナックなどの居抜き物件は、募集条件に造作譲渡が含まれているものもあります。造作譲渡とは、前の借り主が物件内に設置した内装や設備を、次の借り主がそのまま使用できるというものです。
設備が古い可能性や壊れている可能性もありますが、実際に使用して営業されていたものなので、使いやすいように配置されていることも少なくありません。内装や食器類など一から揃えると大きな金額が必要になるものも、状態によってはそのまま使用できる可能性があります。なによりすでに店舗内にあるため、搬入のためにかかる手間や費用がかかりません。
老朽化や故障などの動作確認をして、修理や交換が必要であればどのくらいの修繕費用がかかりそうかを確認しましょう。
また、設備のリース契約が残っている可能性もあります。契約が残っている場合は引き継ぐことになるため、条件を確認して負担が増えないか注意が必要です。
さらに、物件の法的適合性を確認し、消防法や食品衛生法の基準を満たしているかを確認することも大切です。
居抜き物件では、造作譲渡代として費用がかかる可能性もあるので、物件の状態や契約条件をしっかり確認し、あとあと追加の費用が発生しないよう注意しましょう。
まとめ
バー開業に必要な資金と調達方法を解説してきました。
バー開業に必要な初期費用の予算相場は500〜1,000万円、ランニングコストの予算相場は1ヵ月50〜80万円です。開業資金の調達には補助金や助成金の利用、自己資金、融資といった方法だけでなく、クラウドファンディングなどいろいろな方法を組み合わせることができます。
開業後も安定した経営ができるよう、余裕を持って資金を準備し、しっかりとエリアマーケティングして物件を選びましょう。
居抜き物件や譲り受けを検討する際は、契約内容や造作譲渡の条件などを確認して、事業計画やコンセプトと合うかどうかを検討する必要があります。上手に活用して、素敵なバーを開業してくださいね。
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