居酒屋の開業資金はどのくらい必要?開業までにかかる費用や開業後のランニングコストとは
居酒屋の開業を考える際、まず頭を悩ませるのが開業資金の問題でしょう。開業資金の金額は、店舗の立地や規模、内装のこだわり次第で大きく変動します。
また、開業にあたっては開業準備にかかる費用だけでなく、開業後の運営資金も考慮しなければなりません。
本記事では、開業資金の目安や開業後に発生するランニングコスト、費用を抑えるポイントなど、これから居酒屋を開業したいと考えている方に、居酒屋の開業資金について役立つ情報をお届けします。
居酒屋開業のために必要な費用
まずは居酒屋開業のために必要な費用にはどのようなものがあるのか解説します。
物件取得費・賃貸借費
居酒屋を開業する際に最も大きな費用となるのが、物件取得費や賃貸借費です。
物件取得費とは、居酒屋を営業するために物件を購入する際の費用を指します。物件を賃借する場合の費用は賃貸借費です。
賃貸借費には、敷金や礼金、保証金などの初期費用が含まれます。初期費用は物件の立地や広さによって大きく異なりますが、賃料の12か月分ほどを準備しておくのが一般的です。
人気のエリアや人通りが多い場所では物件取得費や賃貸借費が高額になる可能性が高いため、初期の段階でより多くの資金を準備しておかなければならないケースもあります。
また、居酒屋として使用する場合、物件自体の条件も重要です。例えば厨房の設置が可能かどうか、配管や電力供給の条件が整っているかといった条件を満たす物件は、物件取得費や賃貸借費が高くなる傾向があります。
内外装工事費
内外装工事費とは、店舗の内装や外装を整えるために必要な費用のことで、居酒屋の雰囲気を決定づける要素でもあります。お客様にとって居心地の良い空間を作ることは、リピーターを増やすためにも重要です。
内装工事では、カウンターや座席の設置、照明や壁、厨房、トイレの改装費などが含まれます。
特に居酒屋では、温かみのある照明や独自のインテリアが求められることが多く、店舗の雰囲気は顧客満足度にも影響します。デザイン性にこだわるためにはまとまった予算が必要となります。
外装工事は、看板や店舗の外観を整えるために必要な費用です。店の外観は通りがかりの人々を引き付ける大事な要素なので、建物正面の魅力的な外観や目立つ看板は集客に大いに貢献します。
機械・什器・設備費
機械・什器・設備費は、店舗の運営に直結する重要な費用です。
飲食業の基盤となる冷蔵庫やガスレンジ、フライヤーなどの厨房機器を含む業務用の機械は耐久性や効率が求められるため、初期投資が大きくなる傾向にあります。
什器とは、テーブルや椅子、カウンターなどの店舗内の家具や備品を指します。居酒屋の雰囲気作りだけでなく、テーブルの大きさや椅子の座り心地はお客様の居心地の良さに直結します。
設備には、レジやPOSシステム、冷暖房機器、照明などが含まれます。POSシステムとは店舗の売上を支援・管理・分析するためのさまざまな機能を搭載したシステムのことで、売上管理や在庫管理を効率化するために重要な役割を果たします。
機械・什器・設備費は、店舗運営の効率性や顧客満足度に大きな影響を与える要素です。
運転資金
運転資金とは日々の営業活動を支えるために必要な資金のことで、開業後の店舗運営が安定するまでの間は特に重要です。
運転資金には、食材の仕入れ費用や人件費、光熱費、広告宣伝費などが含まれます。これらの費用は毎月発生し、売上が安定するまでの間は特に負担が大きくなります。
居酒屋は開業直後に集客や認知度の向上が課題となるため、売上が計画通りに伸びないことも考慮し、余裕を持った運転資金を確保することが大切です。また、季節や天候による影響で客足が減少することもあるため、予測しづらい売上の変動にも対応できる資金計画が求められます。
一般的には、最低でも半年から1年分の運転資金を確保しておくことが推奨されます。これにより、予期せぬ出費や売上不振に対応でき、安定した経営が可能になります。これは、コロナ禍のような不測の事態にも当てはまります。しっかりとした資金計画を立て、運転資金を多めに確保しておくことが、居酒屋開業の成功を支える大きな要素となります。
居酒屋開業資金の平均額
では、居酒屋開業のための資金はこれらの費用を合わせてどのくらい必要なのでしょうか。
物件の立地や規模、内装によって異なりますが、居酒屋の開業資金の平均額は1,000〜3,000万円とされています。この額には、物件取得費や賃借費、内外装工事費、厨房設備費、什器やインテリア、広告宣伝費、そして運転資金が含まれます。
都心部や人気エリアでは物件の賃借費が高く、初期費用が1,500万円以上になることもあるでしょう。一方、郊外や地方での開業では賃借費が抑えられるため、1,000万円前後での開業も可能なケースもあります。
居酒屋開業のための費用を抑えるポイント
居酒屋の開業にはさまざまな費用がかかることがわかりました。ここからは、開業資金の総額を抑えるためのポイントを解説します。
居抜き物件とスケルトン物件の違い
物件取得費・賃貸借費は、予算の大部分を占めるだけでなく居酒屋開業の成功を左右する重要な要素です。店舗を開業する際に選択肢としてよく比較される居抜き物件とスケルトン物件の違いを確認し、より費用を抑えられる物件を検討してみましょう。
居抜き物件とは、前テナント入居者が使用していた内装や設備がそのまま残っている物件を指します。厨房設備やカウンター、照明などがそのまま利用できるため、初期費用を抑えつつ早期に開業できる可能性があります。しかし、既存の設備が開業予定の店舗に合わない場合は改装費用がかかります。
また、物件の契約条件によっては希望の業態で営業できない可能性もあります。居抜き物件の場合は、物件の契約条件や設備の状態をしっかり確認することが重要です。
スケルトン物件は、建物の骨組みだけが残された状態で内装や設備がない物件です。コンセプトに合わせて店舗を一から作り上げることができますが、その分、内装工事や設備の設置費用が高額になり、開業までの期間も長くなる可能性があります。
中古品やリース契約の活用
居酒屋開業のための費用を抑えつつ効果的に設備を整えるためには、中古品やリース契約の活用がおすすめです。
中古品は、新品に比べて大幅にコストを削減できる点が魅力です。什器や設備だけでなく食器や店内の小物は、良質な中古品を選べば十分に使用することが可能です。業者やインターネットを通じて入手しやすく、選択肢が豊富なのもメリットです。
一方、リース契約は設備や機器を購入するのではなく、リース会社にリース料を支払って設備や機器を長期間利用するという方法です。大型の厨房機器や業務用冷蔵庫など、高額な設備をリース契約で導入することでまとまった資金が不要になり、資金繰りに余裕が生まれます。また、リース契約には保守や修理が含まれることがあり、突発的な修理費用を抑えられる点も大きなメリットです。
内装を整えるためにかかる費用や機械・什器・設備にかかる費用は開業資金の中でも予算をオーバーしやすく、頭を悩ませる部分でもあります。中古品とリース契約を上手に組み合わせることが、初期費用を抑えて開業資金を抑えるポイントです。
使い道の優先順位をつける
居酒屋開業に際しては、限られた資金をどのように使うか優先順位を決めることが費用を抑えることにつながります。
まずは開店に必要最小限なものをリストアップしてみましょう。リストアップした内容に優先順位をつけると、今すぐ必要ではないもの、後回しにできるものを可視化することができます。
経営方針やコンセプトによって優先順位は異なりますが、メインではない看板の設置やホームページなどの宣伝費を後回しにしたり、内装のグレードを下げたりといったことが考えられます。
限られた資金を効率的に使うために、中古品やリースを活用してコストを抑え、資金の使い道に優先順位をつけ、計画的に経営をスタートさせることが成功への鍵となります。
居酒屋を開業後のランニングコストは?
居酒屋を開業した後、経営を安定させるためにはランニングコストの管理が欠かせません。
ランニングコストとは、家賃、水道光熱費、人件費、材料費、広告宣伝費など、店舗を持続的に経営するために必要な費用のことです。ランニングコストには上記のような毎月かかるもののほか、火災保険料やリース料など、年単位でかかる可能性があるものもあります。
売上に対してランニングコストの割合が大きすぎると、利益を圧迫する原因となります。居酒屋を含む飲食店では売上の多くの部分がランニングコストを占めるといわれているため、売上が多ければよいという考え方では、長期的に居酒屋を経営していくことは難しくなります。収支バランスの構成を踏まえて、売上目標を設定することが重要です。
居酒屋開業資金の調達方法
居酒屋の開業にはまとまった資金が必要です。資金の調達方法では、自己資金や融資が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。ここからは、さまざまな資金の調達方法を解説します。
自己資金で準備する
自己資金には、普通預金や定期預金などの預貯金、有価証券や不動産などの売却可能な資産が挙げられます。
開業資金を自己資金で準備することは、経営の自由度を高められるメリットがあります。借入金に伴う返済義務がないため、初期の経営リスクを軽減することができます。また、融資や投資を受ける際に必要な審査や手続きも不要なので、スピーディに開業準備を進められる点も魅力です。
しかし、居酒屋など大きな金額が開業資金として必要な場合は、必要な金額をすべて自己資金で賄うことが難しいことも多いでしょう。生活のために必要なお金を開業資金にしてしまわず、必要に応じてほかの調達手段で補完することで、長期的な成功を目指しましょう。
融資を受ける
融資を受けることにはメリットとデメリットがあります。
メリットとしては、自己資金が不足している場合でも融資を活用して必要な開業資金を確保し、計画通りに開業を進めることが可能になる点です。また、運転資金としても利用できるので、開業後の資金繰りを安定させる助けとなります。
一方、デメリットは融資に伴う返済義務が生じる点です。返済が滞ると経営に大きな負担がかかり、店舗の継続が難しくなることもあります。利息負担も利益を圧迫する要因となり得るでしょう。また、融資を受けるための審査は場合によっては時間がかかることや、希望額を借りられない可能性もデメリットといえます。
助成金・補助金の利用
居酒屋を開業する際、助成金や補助金の利用は資金調達の一つとしておすすめの方法です。助成金や補助金で用意した資金は基本的に返済不要なので、事業の初期投資や運営資金の負担を軽減する大きな助けとなります。特に、地域活性化や創業支援、雇用創出を目的とした助成金・補助金は、居酒屋の開業に適したものが多く存在します。新規創業者向けの助成金や、商店街の振興を目的とした補助金など、さまざまな制度が用意されているので、開業を予定している地域の制度を確認してみましょう。
ただし、助成金や補助金の申請には期限があり、交付が決定するまでに時間がかかることが多い点には注意が必要です。資金計画の中で助成金や補助金の利用を検討する際には、他の資金調達手段と併用し、リスク分散を検討しましょう。
その他の方法
資金調達にはほかにも、出資を受ける、親族からの援助を受ける、クラウドファンディングを利用するなどの方法があります。
クラウドファンディングでは、開業のアイデアやコンセプトに共感した多数の支援者から小口の資金を集めることができます。これにより、自己資金や融資では賄いきれない資金を補うことが可能です。また、クラウドファンディングは資金調達だけでなく、開業前から店舗の存在を広く知らしめるプロモーション効果もあります。
しかし、クラウドファンディングでは、リターンの設定やプロジェクトの運営が必要で、成功させるには魅力的なコンテンツと綿密な計画が重要です。また、目標額に達しない場合、資金が集まらないリスクもあるため、他の資金調達手段と組み合わせて活用することが推奨されます。
まとめ
居酒屋開業にはさまざまな費用がかかるため、まとまった額の開業資金としっかりとした準備・計画が大切です。
開業資金の調達には自己資金や融資、助成金・補助金の利用、さらにはクラウドファンディングなど、多様な手段を組み合わせることができます。
開業のための費用を抑えるためには居抜き物件や中古品、リース契約の活用がポイントです。収支バランスを考慮した無理のない事業計画を立てて準備することが、長期的な居酒屋経営の成功を支える鍵となります。
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