カフェ開業資金はどのくらい?初期費用の見積もりが大事!?

カフェは友人や知人との交流の場として、あるいは一人でくつろぐための憩いの場として、多くの方が日常的に利用しています。近年ではリモートワークの普及により、カフェは時には仕事場としても活用され、ますますその存在感を増しています。

今回は、カフェ開業を考える方に向けて、開業に必要な資金の目安や資金を調達する際に注意すべきポイントを解説します。

カフェ開業に必要な費用は?

カフェを開業するためにはどれくらいの資金が必要なのでしょうか。まずは、カフェ開業に必要な費用について解説します。

統計的なデータから全体像を把握

カフェなど飲食店の開業資金は多くの要素の影響を受けます。そのため、まずは統計データなどを参考に、開業のために必要な費用にはどのような種類があるのか、それぞれどのくらいの金額が必要なのか、開業資金の全体像を把握しましょう。

厚生労働省が発表している統計データでは、10席以下の小規模なカフェの開業資金の全国平均はおよそ700万円、27席以上のカフェの開業資金の全国平均はおよそ1,360万円です。 物件の立地エリアや取り扱うメニューによってはこれ以上の資金が必要になる可能性が高いでしょう。

カフェ開業資金の目安

カフェ開業前に具体的な資金計画を立てるためにも、開業資金の全体像のなかでどのようなことにどれくらいの資金が必要なのか、目安を知っておきましょう。

物件取得費

物件取得費とは、カフェ店舗の家賃や敷金・礼金、仲介手数料などの物件契約時に必要な費用のことを指します。一般的に保証金には家賃の10ヵ月分程度が必要とされており、これに加えて礼金や仲介手数料も発生するため、物件取得費の目安は家賃の12ヵ月分と考えることができます。

例えば家賃が月額20万円の場合は、物件取得費として240万円の資金を準備する必要があるということになります。物件は地域や物件の条件によって金額がバラバラで、人気のエリアほど高額になる傾向がありますが、150〜300万円が物件取得費の目安といえるでしょう。家賃は毎月金額が変わらない固定費なので、開業後のランニングコストも意識して慎重に物件を選ぶことが大切です。

内外装費・備品費

物件取得費と同じく、カフェ開業資金の中でもウエイトが大きくなるのが内外装費・備品費です。

カフェの内外装工事費の目安は1坪あたり20〜70万円ですが、希望するカフェのコンセプトやデザインの複雑さ、使用する素材の種類などによって変動します。シンプルな内装ならコストを抑えることができますが、デザイン性にこだわり特別な装飾を施す場合は、費用が大きく膨らむことがあります。また、内装費に加えてテーブルや椅子などの備品費も考慮する必要があります。 内外装費・備品費はこだわればどこまでも費用が膨らみます。物件取得費や初期在庫費、設備投資などほかにどのくらいお金がかかるかによってどこまで内外装にお金をかけられるのか予算を決めるなど、開業資金の計画をしっかりと立てることが重要です。

初期在庫費

初期在庫費は、コーヒー豆や紅茶の茶葉などの原材料や飲料、食材、トイレットペーパーや紙ナプキンなどの消耗品が含まれます。初期在庫費の目安は平均で30万円です。食材にこだわったカフェを開業したい場合は初期在庫費の割合も大きくなり、50万円ほどになる場合もあるでしょう。

カフェの1ヵ月の食材費は、平均30万円です。カフェでは新鮮な食材を使用することが求められるため、食材の回転率を考慮して在庫を管理する必要があります。さらに、季節やイベントに合わせたメニュー展開を行う場合には、それに応じた追加の在庫も必要になることがあるでしょう。これらを踏まえて初期在庫費をしっかりと確保しておくことが、スムーズなカフェ運営の鍵となります。

設備投資

カフェ運営のためには必要不可欠な、冷蔵庫などの厨房設備や空調設備といった設備を整えるための費用を設備投資といいます。主な設備の金額の目安は以下のとおりです。

  • コールドテーブル(作業台):10万円
  • シンク:3~5万円
  • 食器洗浄器:20~50万円
  • 厨房機器:10坪程度で約150万円、16〜17坪で約250万円
  • エスプレッソマシン:10~20万円
  • オーブン付きガスレンジ:10~30万円
  • 電気フライヤー:10万円
  • 冷凍冷蔵庫:25万円
  • 製氷機:15万円

いずれも新品の最新機器を導入すると費用がかさみます。中古品やリース契約、レンタルを活用することで、費用を抑えることができます。しかし、長期的な視点で考えると、信頼できるメーカーやアイテムを選ぶ方が低コストですむ場合もあります。衛生面や安全面、設備の寿命や省エネ性も考慮して検討するのがおすすめです。

広告・宣伝費

開店準備では物件取得費や内外装費に多くの予算を割くために、広告・宣伝費の予算を削ってしまいがちです。しかし、開店初期の店舗の知名度を上げるためには効果的なプロモーションが不可欠です。開業資金としての広告・宣伝費の目安は50万〜100万円です。限られた予算内で効果を見込める方法を選択し、費用対効果を最大化することが重要です。

最近ではSNSが発達しているため、低コストで作成できるホームページやSNSでの広告宣伝からスタートさせる方法がおすすめです。売上の目処が立ってきたらグルメサイトへの掲載やチラシのポスティングといった方法を視野に入れるといいでしょう。ショップカードやチラシのデザイン、ロゴの作成も、委託する場合は費用がかかります。効果的な広告・宣伝でよいスタートダッシュを切れるようにしっかり予算を組みましょう。

人件費

人件費には、従業員の給与、社会保険料、福利厚生費などが含まれます。軌道に乗るまでは自分一人で運営するという場合には人件費を抑えることができます。 アルバイトを時給1,000円で週5日、一日8時間勤務で雇用する場合の1ヵ月の給与は16万円ほどです。人件費を抑えるためには、繁忙時間に絞ってアルバイトを雇用することや、効率的なシフト管理を行うことが求められます。ただし、必要なスタッフ数を確保できないとお客様の利便性を損ねることにつながります。人件費をしっかりと確保して、繁忙期やピークタイムには十分なスタッフを配置し、お客様にとって居心地の良い空間を作れるように準備しましょう。

運転資金はどのくらい必要?

運転資金とは、カフェのオープン直後からお店が軌道に乗るまでの予備の資金のことです。オープン後に売上が安定せずに赤字の期間が続いても、運転資金があれば経営を続けていくことができます。そのためカフェ開業では、開業資金だけでなく運転資金を準備しておくことがとても重要です。

家賃や水道光熱費、人件費、仕入れ費、備品費など、カフェを1ヵ月経営するために必要な費用を運転資金として3〜6ヵ月分ほど準備しましょう。金額の目安を算出するときは、入出金を予測して資金繰り表を作成する方法が効果的です。

また、資金繰り表を参考にする方法とは別に、家賃の10ヵ月分を運転資金として計算する方法もあります。例えば先述の物件取得費と同じく家賃が月額20万円の場合、運転資金として200万円の運転資金が必要ということになります。

カフェ開業に必要な資金の調達方法

カフェ開業のためにまとまった資金を準備するために、どのような調達方法があるかご存知でしょうか。ここからは、自己資金や融資など一般的な調達方法のほかに、助成金や補助金、クラウドファンディングの活用について解説します。

自己資金

貯蓄や退職金などを自己資金として活用してカフェを開業する方法があります。全額ではなくてもまとまった金額を用意できる場合は、借入れのリスクを軽減することができます。自己資金での開業は、資金提供者や金融機関からの制約を受けることが少なく、自分のビジョンに沿った店舗作りができるのが大きなメリットでしょう。

しかし、カフェ開業には多額の資金が必要です。生活のために必要なお金を開業資金にしてしまわず、必要に応じてほかの調達手段で補完することも検討する必要があります。

融資

融資とは、国や地方自治体、金融機関などの制度を利用して資金を調達する方法です。資金の調達方法として融資が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

融資を受けるためには、必要な書類を準備して面談などの審査を受ける必要があります。融資が実行されると、原則として融資実行の翌月より返済が始まります。

カフェを含む飲食店の開業資金への融資には、創業融資や制度融資を利用することができます。創業融資は日本政策金融公庫などが提供している制度で、新規事業を始める方が融資を受けやすい制度です。

制度融資は、地方自治体や市区町村が提供している融資です。融資制度の仕組みや金利には違いがあるため、ご自身に適した制度を選べるようしっかり確認しましょう。 金融機関での融資を検討する際は、経営革新等支援機関の認証を受けた公認会計士や税理士への相談を検討するのがおすすめです。公認会計士や税理士に事業計画や返済計画を作成してもらうことで、審査対策を講じることができます。

助成金・補助金

国や自治体からの助成金・補助金を活用するのもおすすめの方法です。

助成金は要件を満たせば受給できる可能性が高いですが、補助金は件数や金額が制限されていることが多いため必ずしも受給できるわけではないことが特徴です。また、補助金は後払いなので事前に資金を準備しておく必要がある点には注意が必要です。 どちらも返済の必要はありませんが、一定の資格、審査、申請が必要で、多くの申請書類を提出したり、入金まで比較的時間がかかったりするなどのデメリットもあります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングという言葉を聞いたことがある方も少なくないでしょう。

クラウドファンディングとは、プロジェクトを立ち上げた人や法人に対して、インターネットを介して開業のアイデアやコンセプトに共感した不特定多数の支援者から小口の資金を集める方法です。リターンの設定やプロジェクト運営が必要で、成功するとは限らない点には注意が必要です。

ただし、プロモーション効果があったりファンを獲得できたりするというメリットもあります。自己資金や融資では賄いきれない資金を補うなど、他の資金調達手段と組み合わせて上手に活用することでよいスタートを切ることができる可能性がある調達方法です。

カフェ開業の資金を抑える方法

カフェ開業と安定した経営のためには、しっかりと予算を組むことが重要です。しかし、準備できる資金では足りない……ということもあるでしょう。ここからは、カフェ開業の資金を抑える方法についてポイントを解説します。

物件取得費や内装費を抑える

カフェの開業資金で金額が大きくなる費用には、大きく物件取得費と内装費があります。この二つに頭を悩ませることも多いでしょう。 物件取得費と内装費を抑えるポイントは次のとおりです。

  • 家賃が安い物件を探す
  • フリーレント(一定期間賃料が無料)の交渉
  • 居抜き物件の活用
  • 中古品やアウトレット品、リース契約の活用
  • DIY

店舗内の内装や備品などが残っている状態の物件のことを居抜き物件といいます。床や壁、厨房などの設備や内装をそのまま使用できる可能性があるため、居抜き物件を利用することで、一から作り上げる場合と比較して時間とコストを大幅に削減できます。

ただし、内装や設備が無料でついてくるとは限りません。売却の形をとる場合は内装・設備などの造作を売買するという意味で造作譲渡代が必要です。譲渡契約の際には、使わないものが含まれていないか、譲渡物が壊れていないか、リース契約のものが含まれていないかなど、しっかりと確認しましょう。

また、先述しましたが、設備や備品は中古品やアウトレット品、リース契約を活用することで費用を抑えることができます。近年ではDIYで店舗を作り上げることも増えてきました。可能であればDIYを上手に取り入れることで、ご自身の好みの店舗を低価格で作り上げることができるかもしれません。 空き物件の期間が長い店舗や立地条件によっては、フリーレントの交渉が有効な場合もあります。タイミングを逃さないようこまめに情報収集して、必要に応じて交渉してみましょう。

カフェの業態を見直す

カフェの業態を見直すことも一つのポイントです。

まず、既存のお店が営業していない時間や使っていないスペースを借りて出店する間借りという方法があります。すでに店舗があるため、実店舗を構える必要がありません。

ガソリン代や自動車保険料、車検料、出店料など別の費用がかかりますが、キッチンカーは実店舗に比べて初期費用を安く抑えられます。新車だと250〜600万円ほどかかりますが、中古車やレンタルを利用することでさらに費用を抑えることができます。 また、大手カフェチェーンのフランチャイザーになるというのも一つの方法です。フランチャイズを活用することで、すでに確立したノウハウや商品の仕入ルートなどを活用できるため、加盟金やロイヤルティを支払う必要はあるものの、時間がかからずスピーディーに営業を開始することができます。

まとめ

カフェ開業に必要な資金の目安と、調達方法、資金を抑える方法を解説してきました。

カフェの開業には、店舗・調理設備・什器・人件費など、多くの費用がかかります。安定して経営していくために、運転資金を準備することも大切です。

開業資金を確保するためには、自己資金や融資、助成金・補助金などを組み合わせることが一般的です。クラウドファンディングは、プロジェクトを運営する時間や手間をかけることで、プロモーションに役立てることもできます。居抜き物件や中古品を活用しながら開業資金を抑える工夫をすることで、無理のない返済計画で資金を準備しましょう。

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この記事を監修した人


宮本翔

宮本翔

公認会計士/税理士
KPMGあずさ監査法人では国際系クライアントを中心に40社以上の監査業務を経験後、スポーツ庁や経済産業省の調査案件に従事し社内特別賞(KPMG Japan Chairman Award)を受賞。