フードテック最前線!大手チェーンの具体的なノウハウを大研究
外食業界での人手不足問題は、ポストコロナとなった今でも深刻な状況です。そのため人材の採用から教育までの各フェーズにおいて、時代の変化に応じた店づくりが必要です。
人手不足の中、外国人採用や異業種からの採用に取り組んだ企業もあるでしょう。しかし、戦力化までは時間がかかります。
そうした背景から今、厨房のテクノロジー化が進化してきています。ここでは、厨房のテクノロジー化の2つの事例をご紹介します。将来、避けて通れない課題解決の一例として、参考にしてください。
職人の技術を超える「I-Robo」のポテンシャル
外食業界が抱える課題に対し、いち早く取り組んだのが株式会社イートアンドホールディングス傘下の株式会社大阪王将が経営する「大阪王将」です。厨房のテクノロジー化で、特に注目を集めているのが、TechMagic株式会社が開発した炒め調理ロボット「I-Robo」を導入した店づくりです。
2023年10月にリニューアルオープンした「大阪王将 西五反田店」でテスト稼働を行い、少しずつ他の店舗での活用も始めています。
I-Roboの活用を決めた背景には、中華ならではの理由がありました。それは、企業が求める職人のクオリティ、つまり中華鍋で炒めたからこそ生まれる料理の高品質化です。炒飯や麻婆豆腐など、料理によって鍋の動きも火力の温度帯も違うため、おいしい料理を仕上げるには、職人の繊細なコントロールが必要でした。
I-Roboは、こうしたテクノロジーとは一線を画しており、職人の技術を覚え込ませることができます。加えてブラッシュアップを重ねたことで、職人の技術が高い水準で再現可能となりました。
職人の技術をI-Roboに覚え込ませるために、まずTechMagicの担当者が大阪王将の研修センターへ行き、実際に鍋を振るう職人の様子を動画に撮り、各工程の鍋の動きや温度帯をデータ化。それをTechMagicに入力し、職人の味を再現できるまで細かな調整を積み重ね、最終的に驚くほどのレベルまで到達させたというわけです。
大阪王将では、それぞれのスタッフの調理の技術を1級、2級、3級と等級で分けています。そのうち、一番上の1級は、ほんの一握りのスタッフしか獲得していません。I-Roboは、大阪王将の85%のメニューで、1級レベルのクオリティとスピードを再現できるまでになっています。
I-Roboを活用すると、今までのように火力を使う必要がなくなるため、厨房の温度が上がらず、体力の消耗を防げます。また、I-Roboだと厨房が油で汚れることもないため、掃除などの手間がかかりません。その結果、スタッフの働き方改革につながっているのです。
大阪王将は、全国さまざまな立地で展開しているため、中には人手不足が深刻な地域もあります。今後さらに人手不足が進むと、調理の技術の等級が高くないスタッフが調理をせざるを得なくなることが懸念されます。そうなるとブランドのクオリティが保てなくなるといった弊害も生じます。
そこでI-Roboがあれば、調理の技術の等級が高いスタッフがいなくても、安定したクオリティで料理を提供することができます。また、I-Roboが炒飯を作っている間、餃子を焼いたり、フライヤーに食材を投入したりと、マルチタスクをこなせるので、必要以上の人材を抱える必要もありません。さらに、I-Roboには自動洗浄機能があるため、作業効率が向上し、提供スピードを上げることができます。
I-Roboの導入により、売上が上がって忙しくなったものの、これまでと同じスタッフ数で問題なく回せており、FL比率が大きく改善しました。特にお客様が一気に集中するランチタイムでも、シフト人員数を変えることなく回転率を上げられ、チャンスロスも防ぐことができています。また、I-Roboがあることで、人は人にしかできないサービスに集中でき、それがお客様満足度の向上につながり、結果として売上アップに結びついているのです。
店舗展開にあたり、高いレベルで中華鍋を振れる人材の確保が必須でしたが、I-Roboの活用で新規採用したアルバイトの教育の時間も短縮できます。その分、理念教育などに力を入れることができるので、より高いホスピタリティを持ったお店の展開を実現します。
将来的には、ロボットだからこそできる料理の提供も計画中。例えば、人だと調理が難しい高火力の商品は。I-Roboならそうした料理もスムーズに提供できるので、お客様満足度を上げながらブランドの価値を上げていくことができるのです。
業態の選択肢を広げる「クールフライヤーCFT-7」
居酒屋の厨房で必須機器であるフライヤーが、進化を遂げています。中でも注目なのが、クールフライヤー株式会社が提供する「クールフライヤーCFT-7」です。
ワタミ株式会社が運営する「和民のこだわりのれん街」で導入されており、ワタミグループ初の本格そば業態で、天ぷらなどの揚げ調理に活用され、非常に高いパフォーマンスを発揮しています。
和民のこだわりのれん街では、従業員の労働環境の改善に注力しています。その一つが外国人労働者をはじめ、アルバイトも固定の人からスポットワーカーまでが活躍する多様化の実現です。そのためには、厨房の改革が必須でした。あらゆる人が働きやすい環境づくりを行う中で、非常に重要な役割を果たしているのがクールフライヤーCFT-7です。
クールフライヤーCFT-7導入の理由は主に3つあり、1つ目は食用油の高騰。今後、さらなる高騰も考えられ、商品の品質を守るためにも油を継続的に使える機器の導入が必須となっていました。だからこそ、油の劣化を防ぐ機能が非常に優れている点が、導入の決め手となりました。
2つ目は、お客様の目の前で揚げている姿を見せるライブ感の実現。天ぷらは技術を要しますが、クールフライヤーCFT-7は温度の設定が簡単で、誰でも天ぷらを均質に揚げることが可能です。
そして3つ目が、清掃の手軽さ。天ぷら鍋は油ハネが多く掃除が大変で、スタッフに大きな負担がかかってしまいます。しかし、クールフライヤーCFT-7は油ハネが少ないため、大掛かりな掃除の必要がない点も選ばれる理由となりました。
そもそもクールフライヤーCFT-7は、独自の冷却構造とヒーター構成およびその制御で、油ハネや油の劣化を大幅に抑制することに成功した業務用フライヤーです。また、7ℓと従来の機器よりも小型で、省スペース化をかなえます。一般的なフライヤー調理による、味わいの比較をしたところ、「クールフライヤーで揚げた方がおいしい」という声が少なくありませんでした。
機器を開発する上では、安全性を重視しており、それが誰にでも使えるのはもちろん、厨房を汚さないという特徴の実現に結実しています。さらに、フライヤーは火災のリスクや、高温の油を扱うことによる怪我なども心配されます。しかしクールフライヤーCFT-7は、油の濾過が不要で、後片付けは専用の油回収装置を使用すれば、スタッフが行う必要がありません。また使用前にしっかりと清掃さえすれば、すぐに使えるので労働時間の短縮にもつながります。
温度管理しやすいのも、特徴です。天ぷらは食材を入れると温度が下がるため、管理が難しいとされます。しかしクールフライヤーCFT-7は7ℓという小型なので、温度が下がってもすぐに上げることができ、商品の品質を保つという点では最適なサイズです。また、温度が下がったらデジタル表示で教えてくれるため、アルバイトで天ぷらの提供ができるのです。
ワタミ以外にも多くの外食チェーン店で、クールフライヤーCFT-7が活用されています。最近では、食材を分けることでニオイ移りを防ぐといった目的で、1店で複数台導入されるケースが増えています。また、カフェバーといった揚げ物メニューが少ない店でも、クールフライヤーCFT-7の活用が進んでいます。簡単な調理で、クオリティの高い料理を提供できるので、業態の可能性を広げるツールとしても重宝されているようです。