デジタル化とはどう違う!? DXの基礎から徹底解説

人手不足や原材料費をはじめとしたコスト高騰など、現在、外食業界を取り巻く課題は山積しています。都心を中心に家賃の高騰も続き、コロナ禍を境にし、飲食店の重要な経営指標である「FLR(原価率、人件費率、家賃比率)」の考えが通用しなくなりました。

そうした背景を受けて、よく耳にするようになったのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というキーワードです。しかし、その意味をしっかりと理解している方は少ないのではないでしょうか。現に「最近、ガチャレジからタブレット型のPOSレジを導入してDX化した」といった声を聞くことがあります。しかし、その言葉こそ、IT化やデジタル化と、DXを混同している例に他なりません。

今や、DXは飲食店が生き残るために必須の取り組みです。それは個店のオーナーでも変わりません。あらためて内容を理解し、着実に推進していきましょう。

テクノロジーの活用=DXの推進ではない?

まず結論からいうと、DXは明確な定義がされた言葉ではありません。その状況が、DXという言葉が一人歩きしてしまう大きな原因にもなっていますが、一つの指針になっている定義があります。それが、経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」です。そこには下記のように記されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

平たくいうと、「データとデジタル技術を活用」し、「ビジネスモデルを変革」した上で、「競争上の優位性を確立する」ことです。この説明を聞いて、「なんだ、やっぱりタブレット型のPOSレジを導入したらDXの推進になるじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、少し待ってください。確かに、テクノロジーの活用はDXを推進させるための重要な要素の一つです。ただ、そこにデータの活用が入って初めて、タブレット型のPOSレジの導入に意味が生まれます。

そもそもガチャレジからタブレット型のPOSレジへの転換は「アナログデータのデジタル化」に過ぎないので、デジタイゼーションです。世間でよく使われる「デジタル化」も、ここに含まれる言葉です。一方で、タブレット型のPOSレジを導入したことで、レジ締めをする必要がなくなったのでDXだろうと思う方もいるかもしれません。しかし、それも業務プロセスをデジタル化しただけなので、デジタライゼーションとなります。IT化と呼ばれる言葉も、デジタライゼーションのことを指しているケースが多いです。

それでは、どうすればDXの推進になるのでしょうか。タブレット型のPOSレジの例でもう一歩踏み込んで解説をしていきましょう。ガチャレジではなく、タブレット型のPOSレジを活用すると、リアルタイムの売上状況を把握できます。また、1日の売上データや月間の商品の販売数も自動で算出してくれるでしょう。そうしたデータを活用し、新商品を開発したり、既存商品をブラッシュアップしたりして、売上アップやコスト削減を実現し、他店よりも選ばれる店づくりができたら、DXの推進ということができます。

POSデータの活用でよくあるのが「売れているメニューだと思ったら、そうでもなかった」というものがあることです。反対に、それほど期待をしていなかったのに、データを見ると、意外と売上に貢献しているメニューを発見することもあるでしょう。そうしたデータを分析することで、お客様が自店に何を求めていて、どんな提案なら受けるのかも把握できるようになります。注意すべき点は、テクノロジーを導入して満足しないことです。導入してからが本番だと思って、積極的にデータの活用を進めてください。

DX推進のつまずきを超えるコツ

DXの推進には、まずテクノロジーの活用が必要不可欠です。しかし、ここで手間取ってしまい、うまくDXを推進できずにいる飲食店もたくさん存在します。その原因の一つが、スタッフの抵抗です。せっかくテクノロジーを導入したのに、従来のオペレーションの方がやりやすいからという理由で、現場であまり活用されないケースも少なくありません。

そのとき有効な手段がスタッフを巻き込むことです。例えば、タブレット型のPOSレジの導入に合わせて、アルバイトも売上を確認できる環境を整え、経営改善のアイデアを募っている飲食店もあります。アルバイトに売上を開示することに躊躇する方もいるでしょう。しかし、タブレット型のPOSレジならリアルタイムで売上が分かるので、それをアルバイトにも開示することで「目標まであと少しだからお客様にドリンクをお勧めしよう」と自主的に動き出すチームをつくることも不可能ではありません。実際、お店によっては、テクノロジーをもっと上手く活用するにはどうすればいいのかはもちろん、今以上にお客様からオーダーされる料理のアイデアや、顧客満足度を高めるサービスのやり方などを提案されています。それがスタッフのモチベーションがアップとなり、DXのゴールでもある「競争上の優位」を作り出すこと大きな役割を果たしているのは間違いありません。

Z世代のスタッフは、幼い頃からスマートフォンをはじめとしたデバイスに慣れ親しんでいるため、テクノロジーの活用が進んだお店で働きたいと思っている傾向が高いです。また、就職活動では“ガクチカ”と呼ばれる、学生時代に力を入れたことが必ず聞かれるため、どうせアルバイトをするのなら、自分の成長につながる職場で働きたいとも思っています。その意味で、DXを推進するということは、お店やお客様だけでなく、スタッフにとっても大きな意義があるといえるでしょう。人手不足の時代に、学生から選ばれる店づくりができるメリットは計り知れません。

数多くあるサービスから、最適なものを選ぶコツ

現在、タブレット型のPOSレジやキャッシュレス決済端末、シフト作成サービス、モバイルオーダー、予約台帳など、さまざまなサービスが登場しています。その中から、自店に合うサービスを選ぶのは、非常に難しい作業です。そこで最後に、どの会社のサービスを導入すべきかのヒントをお伝えします。

そもそも、近年、多様なサービスがリーズナブルに活用できるのは、SaaS(サーズ)型のサービスが増えたからです。SaaSとは「Software as a Service」の略で、必要なサービスを必要なだけ利用できるモデルを指します。身近なSaaS型のサービスの例は、GmailやZoomなどです。SaaS型のサービスは、端末にソフトウェアをインストールする必要がありません。数年前まで、ワードやエクセルをパソコンで使うため、Microsoft Officeのソフトをインストールする必要がありましたが、現在は「Microsoft Office 365」を活用すれば、インターネット上で必要なソフトを必要なときに利用できます。しかもサブスクリプションモデルなので、コストもリーズナブルです。アップデートもベンダー側が必要に応じて自動で行うため、常に最新のサービスを使い続けることができるようになりました。

つまり、システム部門を持たない個店でも、使いたいサービスを気軽に導入できるようになったということです。しかし、だからこそ、サービスを導入する際は、アフターサポートの体制がしっかりとしている業者を選ぶことをお勧めします。DXの盛り上がりに合わせて、サービスを売ることだけを目的にしたベンダーが増えているのも事実です。いかに二人三脚で歩んでくれる業者を見つけるか。システム部門がなければないほど、そうした業者の存在は貴重です。DXの成否は、そこにかかっているといっても言い過ぎではないでしょう。

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