飲食店は価格設定が重要!価格設定のポイントや注意点とは?
飲食店のメニュー作りの最重要ポイントともいえる価格設定。適性価格に設定するには、どのような点に配慮するべきなのでしょうか。
本記事では、初めて飲食店を経営される方に向けて、価格設定のポイントや注意点について解説していきます。価格設定に迷われている方やメニュー作りを進めている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
飲食店の価格設定の重要性
各メニューの価格が売上と利益に直結しますから、飲食店にとって価格設定が重要なのはもちろんです。加えて、価格設定によってお客様に与える印象や満足度も大きく変化するという点も重要なポイントです。
お客様は、比較しやすい商品で、お店が提供する価値やポジショニングを判断します。
たとえば、アルコールを扱うお店であればビール、カフェであればコーヒーのように、どのお店でも扱っている商品の価格はわかりやすく比較しやすいものです。それが他のお店より高い価格であれば、「高価なお店」、安い価格であれば「リーズナブルなお店」という印象を持ちます。
一方、飲食店にとっては、全ての商品を相場よりも安価に抑えていると、お店の利益につながりません。定番商品はリーズナブルな価格に設定し、主力商品ではしっかり利益を取る、といったメリハリをつけた価格設定が必要になります。つまり、全体を通して価値と見合った価格設定であれば、お客様に納得感がうまれリピートにつながりますし、お店にとっては利益を残すことにつながるのです。
飲食店の原価率の目安と考慮するべきコスト
価格設定には、当然、原価を気にする必要があります。ここでは、飲食店の原価率の目安や考慮するべきコストについて解説していきます。
飲食店の原価率の目安
一般的に、飲食店の原価率の目安は30%といわれています。原価率は、売値に対する原価の割合のことで、次の計算式で算出できます。
原価率=原価÷売値×100
しかし、一律で原価率が30%になるように価格設定をしても、それが適正価格とは限りません。飲食店のメニューには、相場があるからです。相場より高いと売りづらくなりますし、安いと利益が残りづらくなります。お店全体のメニューの原価率平均として30%を目指すとよいでしょう。
業態別原価率
飲食店の原価率は30%が目安というのはお伝えしました通りですが、業態によって、目安は少し異なります。日本政策金融公庫の「創業の手引き」 によると、各業態の原価率の目安は以下の通りです。
お店のコンセプトによっては、必ずしも以下の目安が当てはまるとは限りませんが、参考にしてみてください。
- すし店 44%
- 一般食堂 37%
- 日本料理店 37%
- 酒場・ビヤホール 32%
- 西洋料理店 34%
- 中華料理店 34%
- 料亭 37%
- そば・うどん店 33%
- 喫茶店 32%
- バー・キャバレー 19%
- スナック 19%
FLRコスト
飲食店の経営には、料理の原材料だけでなく、FLRと呼ばれるコスト全体を意識することが重要です。Fは食材などの原材料費、Lは人件費、Rはお店の家賃を意味します。
飲食店が安定して利益を生み出していくには、FLRの3つを合わせたコストの比率を、全体の経費の70%以内におさめるのが目安といわれています。人件費や家賃も考慮したうえで、利益を残せる価格設定になっているかも意識しましょう。
FD比率
価格設定をする際に、「FD比率」も考慮するべき重要な目安です。FD比率とは、売上に対する食べ物(Food)と飲み物(Drink)の比率です。業態によるFD比率は以下の通りです。
- レストラン F80% : D20%
- 居酒屋 F60% : D40%
- カフェやバー F20%:D80%
飲食店で利益率が高いのは、食べ物よりも飲み物です。さらに、飲み物は食べ物よりもロスが出にくく、また料理に比べて加工にかかる人件費をおさえられます。適性価格を設定して、売上に対する飲み物の比率を高めることが利益率アップにもつながります。
お客様に飲み物のお代わりをおすすめするタイミングなど、接客でプラスワンをする工夫も必要です。
原価率の計算での注意点
飲食店の原価率の計算には、注意が必要な点もあります。料理には調理する人の人件費や調味料、油など、加工にかかる原材料費も考慮する必要があります。
レシピ通りに料理を作った場合の原価を「理論原価」といいますが、理論原価と実際の原価には、ずれが生じることがあります。このずれが多いほど、食材のロスや「オーバーポーション」といって、レシピよりも多く材料を使っているケースが起きていることになります。
飲食店がきちんと利益を残していくには、製造にかかる原価やロスも考慮した価格設定と、緻密な原価管理が重要です。
飲食店の価格設定のポイント
次に、飲食店がメニューの価格設定をする際に重要なポイントや手順についてみていきましょう。
相場を把握する
価格設定をする際は、出店するエリアの同じ業態や競合店の価格帯をチェックして、相場を把握することが非常に重要です。
居酒屋のケースでいえば、たとえばビールやソフトドリンク、枝豆など、どのお店でも出しているような定番商品は、お客様が比較しやすくお店の印象に影響を与えやすい商品です。
特別な戦略や付加価値をつけられるとき以外は、定番商品は、周囲のお店と価格帯を合わせる方が無難です。その他、主力メニューやオリジナルメニューの価格帯、価格設定のレンジなどもチェックしておくとよいでしょう。
一律の原価率にしない
繰り返しになりますが、飲食店の原価率の目安が30%だからといって、一律で原価率が30%になるように価格設定をしても、お客様に受け入れられるとは限りません。商品によって、原価率に差をつけて、トータルで原価率30%を目指すとよいでしょう。
利益をしっかりとっていく看板メニューや、お得感のあるメニュー、お店オリジナルのメニューなど、お客様に受け入れられる価格を考慮し、メリハリをつけて原価率を設定しましょう。
「790円」「980円」など大台割れの価格設定も、お客様に値ごろ感を与える演出として活用できます。
また、安値の価格帯と高値の価格帯のレンジが大きすぎると、お客様にお店のコンセプトやポジショニングが伝わりにくくなります。「リーズナブルなお店なら日常使いに」「高級なお店なら特別な日に」といったように、お客様は価格帯からも利用シーンを使い分けていることを念頭に置きましょう。
客単価を想定する
メニューの価格設定では、単品の価格だけではなく、どの組み合わせでお客様が注文するかなど、客単価を想定することも重要です。
レストランでは多くのお客様が単品だけでなく、ドリンクやサイドメニューを注文するでしょう。サイドメニューやデザートをリーズナブルな価格帯に設定すると、客単価のアップが期待できます。
また、居酒屋の場合は、1人のお客様がドリンク2杯、フード3点といったように、複数のメニューを注文します。定番のドリンクを安価に設定することで、お代わりの注文やおつまみの注文が増えて、結果的に客単価のアップにつながる可能性があります。
主力商品に付加価値をつける
一般的なドリンクや定番のメニューは、ある程度、近隣の店舗と価格帯を合わせる方が売りやすくなります。しかし、主力商品や看板メニューは付加価値をつけたうえで価格設定をし、利益を獲得していくことも重要です。
相場よりもリーズナブルな価格設定にして、たくさんの数を売る戦略や、プレミアムをつけて高い価格設定をする戦略などが考えられます。また、食材のこだわりや珍しい調理法、盛り付け、限定数など、さまざまな工夫でメニューに付加価値をつけていきましょう。
まとめ:価格設定には、相場と利益率をバランスよく考慮することが大事!
今回は、飲食店の価格設定のポイントや注意点について解説しました。
各メニューの価格設定には、相場と利益率をバランスよく考慮することが大事です。原価率は一律で考えるのではなく、メニューによって、メリハリをつけて設定するとよいでしょう。
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