人件費の適切な管理が飲食店成功のカギ!営業の質を落とさないコスト削減のコツとは?
飲食店を経営するには、さまざまな「経費」が必要になります。飲食店経営に必要な経費のなかでも、経営状況に大きな影響を与える経費のひとつが「人件費」です。
飲食店の営業は、厨房での調理やホールでの接客など「人」が行う作業によって成り立っており、多くの従業員を必要とします。そのため、飲食店経営における経費のなかで人件費が占める割合も少なくありません。
飲食店経営に必要な経費のなかでも大きな割合を占める人件費を適切にコントロールすることは、飲食店のコスト管理において影響が大きく、営業利益の最大化にとって重要です。
本記事では、飲食店の安定した経営に欠かせない「適切な経費管理」に関して、人件費をどのようにコントロールすべきかの考え方などを解説します。
飲食業界を巡る人材不足と賃金の高騰
現在の日本社会では、少子高齢化による労働人口の減少によって業界を問わず深刻な人材不足が課題となっています。
飲食業界では、コロナ禍の影響から休業や廃業に追い込まれた飲食店が数多く存在し、多くの飲食店スタッフが解雇される事態に陥りましたが、2022年にコロナ禍の規制等が解除され、休業中だった飲食店が営業を再開したり、飲食店の新規開業が増えたりするなかで、飲食業界の人材不足が再び問題となってきています。
一方で、日本経済の状況もデフレからインフレに変化してきており、物価だけでなく賃金水準も高騰してきています。このような社会状況から、飲食業界では貴重な人材確保のために賃金水準が高騰してきています。
飲食店にとっての「人件費」とは
日本では、社会全体が人材不足に陥っており、貴重な人材を確保するために飲食業界でも賃金が上昇傾向にあります。
飲食店における従業員の賃金上昇は、人件費の上昇に繋がるため経営状態を圧迫する要因にもなるため、営業状況に応じて適切にコントロールする必要があります。
人件費には賃金以外にもさまざまな費用が含まれており、人件費としてどのような費用が必要となるのか、人件費の内訳を把握して管理することが求められます。
人件費の内訳
「人件費」とは、お店の従業員に対して支払われる全ての費用の総称です。
人件費と言うと、単純に従業員の「給与」として考えてしまいますが、実際には給与以外にも以下のような費用が含まれています。
- 基本給
- 賞与
- 役職手当
- 残業手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 扶養手当
- 健康保険料
- 厚生年金
- 雇用保険料
このように、従業員を採用すると多くの費用がかかるため、人件費のコントロールが飲食店経営の安定には欠かせません。
人件費は売上の30%が目安
飲食店において、人件費をどの程度に管理することが理想なのでしょうか。
一般的には、売上の30%程度を目安にすると良いとされています。飲食店を経営するためには、人件費以外にもさまざまな経費が必要となります。
飲食店の営業によって、お客さまから支払われる代金は「売上」として収益になりますが、売上のなかから人件費などの経費を支払い、残る利益をどれだけ確保できるかが、飲食店経営の安定にとって重要です。
飲食店の経費には、人件費以外に「食材費」「光熱費」「家賃」などがありますが、主な経費のなかでも、特に「食材費」と「人件費」が飲食店にとっては重要です。
FLコストとは?
飲食店の経費を考える上で欠かせないポイントが「FLコスト」です。
FLコストとは、「食材費(Food)」と「人件費(Labor)」を合わせたコストのことです。飲食店を経営する上で、食材と人材は欠かせないため、食材費と人件費を中心に経費を考える必要があります。安定した飲食店経営を目指すためには、FLコストを売上の60%以内に抑えることが重要です。
また、食材費と人件費のバランスも重要で、業態に応じて食材費と人件費の比率が変わります。
人件費をコントロールするポイント
飲食店は、調理や接客を行う従業員が欠かせないため、人件費をコントロールすると言っても簡単に従業員数や労働時間を短縮することができません。
人の手が欠かせない飲食店において、人件費をどのように管理することが大切なのでしょうか?
人件費のコントロールに必要な3つの観点
飲食店の人件費を適切にコントロールするためには、適切な人件費がどの程度であるかを把握しなければなりません。
現在支出されている人件費が、経営状況に対して適正な範囲に収まっているのかを判断するための「3つの指標」を紹介します。
人時売上高
人件費を評価する指標のひとつが「人時売上高」です。
「人時売上高」とは、従業員1人の1時間あたりの売上で、「売上÷労働時間」で算出できます。たとえば、1日当たりの人時売上高を算出する場合は「1日の売上金額÷1日の総労働時間」となります。
人時売上高を考える上で目安となる金額が「5000円」で、人時売上高が5000円以下の場合、スタッフ数が多過ぎる可能性があるため、スタッフ数の見直しが必要です。
ただし、人事売上高が高過ぎる状況は、スタッフの数が少なすぎる場合もあるため、注意が必要です。
時間帯売上
飲食店の経費管理上、重要な考え方のひとつに「時間帯売上」があります。
飲食店は、1日のなかで時間帯により売上が大きく変化します。営業時間のなかで、特に売上が集中する時間帯を「ピークタイム」と呼び、反対に来客がほとんどない時間帯を「アイドルタイム」と呼びます。
ピークタイムにより多くの人員を配置し、アイドルタイムには必要最低限の人数に調節して人件費を適正化します。
時間帯売上を適切に把握し、適正な人員数を配置するためには、日々の売上と配置したスタッフ数を時間単位で管理し、曜日や時間帯毎の適性人員数を正確に把握することが重要です。
労働分配率
飲食店の人件費管理を考える上でもうひとつ重要な指標が「労働分配率」です。
「労働分配率」とは「粗利に対する人件費の割合」のことです。粗利は、売上から食材や光熱費などの原価を差し引いた飲食店に残る利益を指しますが、労働分配率はこの粗利に対して人件費が占める割合を示す数値です。
労働分配率は、飲食店が創出している利益に対して、適切な人件費が支出されているかを示す指標です。労働分配率を算出する計算式は、「人件費÷粗利×100%」になります。
飲食店の適切な労働分配率の目安は40%程度と言われており、40%以上の分配率になっていると利益に対して人件費が高すぎる可能性があります。
反対に、40%以下の場合には創出している利益に対して人件費が低すぎるリスクがあり、スタッフの貢献度に対して適切な利益還元がなされていない可能性があるため、従業員満足度の低下などに注意が必要です。
人件費をコントロールする方法
適切な人件費を検討するために重要な3つの指標をもとに、具体的な人件費のコントロール方法を紹介します。
業務効率化
人件費を適切にコントロールするための方法のひとつが「業務効率化」です。飲食店において業務効率化を進める方法には以下のようなものがあります。
- オペレーションのマニュアル化
- ITシステムの活用
- セルフサービスの導入
- 一部業務でのロボット導入
業務効率化は、調理や接客、配膳、後片付けなどの作業を効率的に行うことで作業工数を削減し、無駄な人員を削減するために大切です。
業務効率化のスタンダードな方法として、「業務のマニュアル化」があげられます。
調理や接客の手順やポイントを標準化することで、誰でも同じ品質のサービス提供が可能となります。
また、注文や会計などの対応に関してITシステムを活用すると商品オーダーや会計作業を無人化することができます。
ファミリーレストランなどではお馴染みとなっているドリンクバーは、お客さま自身がドリンクを用意するセルフサービスとして普及しており、ドリンク配膳の工数削減によるホールスタッフの削減効果が期待できます。
また、一部のファミリーレストランでは料理配膳をロボットが実施しており、ロボットによる人件費対策も今後さらにひろがると思われます。
適切な人員配置
より効率的な売上創出に向けた業務改善や生産性の向上と同じく大切なことが「適切な人員配置」です。
売上が集中するピークタイムや繁忙期により多くの人員を配置し、アイドルタイムや閑散期には人員数を抑えることが重要です。
また、雇用形態にも注意をし、正社員とパート社員やアルバイト社員の割合なども注意し、全体の給与バランスを適性に保つことが必要です。
コスト削減重視のリスク
多過ぎる人件費は、経営状況を圧迫するため注意が必要なため、基本的にはコストは少なく抑えるほうが望ましいとされています。
しかし、コスト削減ばかりを重視してしまうと、経営状況の悪化を招くこともあります。
サービスの質低下
人件費を抑えるために、配置するスタッフの人数を減らし過ぎてしまうとサービスの質が低下します。
より少ない人数で、より高い売上を上げたほうが高い生産性を実現できますが、料理の質や接客の質が低下する恐れがあるため注意が必要です。
お客さま目線も忘れずに、料理や接客の質を一定水準以上に保つために必要なスタッフの人数に関する見極めが重要です。
労働環境の悪化
人員削減は、従業員1人当たりの業務負担を増加させるため、業務量に対して過度な人員削減を実施すると労働環境の悪化を招きます。
労働環境の悪化は、離職率を上昇させるため、過度な負担が掛からない労働環境を維持することが重要です。
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飲食店の営業活動において、従業員による人的業務が欠かせません。
そのため、より高いサービス品質を目指すと人件費が過剰となり、経営状況を圧迫するリスクがあります。
飲食店を安定して経営するためには、人件費を適切に管理し、一定水準以上のサービス品質を維持しつつ、事業経営の継続に必要な営業利益を創出するための工夫が欠かせません。
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