飲食店の運転資金はどれくらいあればよい?用意しておく金額の目安
飲食店を開業後、安定した経営を続けていくには、運転資金の確保が非常に重要です。本記事では、用意しておくべき運転資金の目安や計算方法、資金の調達方法について解説していきます。家賃などの固定費はとくに、開業後には調整しにくいものですから、事業計画や資金調達の段階から運転資金を意識しておく必要があります。飲食店開業予定の方はぜひ、本記事を参考にしてください。
飲食店の運転資金とは
飲食店の運転資金は具体的にどのようなものでしょうか。まず、運転資金に当てはまる費用や運転資金の重要性について解説していきます。
運転資金の内訳
飲食店の運転資金とは、お店の家賃、仕入れ、人件費、販促費などお店の運営にかかる費用のことです。その中には、お店の売上にかかわらず毎月固定でかかる「固定費」と、お店の売上に連動してかかる「変動費」があります。
【固定費】
家賃、設備のリース代、融資の返済、正社員の人件費など
【変動費】
食材などの仕入れ、備品などの消耗品、販売促進費、アルバイトなど流動的に勤務するスタッフの人件費、水道光熱費など
変動費はお店の売上に応じて増減しますが、固定費は売上が仮にゼロでも同じ額を支払う必要があります。お店の売上規模に対して、この固定費が大きすぎると、当然、経営が厳しいものとなりますので、初めて飲食店を開業する場合は、最初から固定費をかけすぎないようにすることが重要です。
運転資金の重要性
開業前から運転資金についてもしっかりと計画しておかないと、開業後、資金繰りに苦労することになります。飲食店の60%が、開業後2年以内に廃業するという厳しい現実がありますが、運転資金の不足が廃業の原因になることも多いといいます。
当然ですが、飲食店は商品を仕入れないと売上が立ちません。運転資金が不足していると、仕入れの量や質を落としたり、最低限の人員で回したりなどの対処をせざるを得なくなるでしょう。その結果、商品とサービスの質が落ちて、客足が遠のいてしまうという悪循環にも陥ってしまいます。
また、近年は現金よりもクレジットカードで決済するケースも増え、売上が入金されるまでにタイムラグが生じやすくなりました。必要な支払いが生じたタイミングで、現金が手元にないケースもあります。そのために、運転資金を確保する必要があるのです。
飲食店の運転資金は何にどれくらい必要?
飲食店の運転資金は、具体的にどれくらい準備しておく必要があるのでしょうか。ここでは、具体的な運転資金の目安や計算方法について解説していきます。
運転資金の目安と算出方法
運転資金は、一般的に3~6か月分を用意しておくのが望ましいとされています。
運転資金を考えるにあたって重要なのが、飲食店の経営にかかる経費の中でも大きなウエイトを占めるFLRコストです。F(仕入れ)L(人件費)R(家賃)、この3つのコストは、売上の70%以内におさめるのが目安とされています。
とくに、家賃のような固定費は、開業後の調整が難しい経費です。開業前に売上目標と運転資金のバランスもしっかりと検討しておきましょう。
FLRコストをうまくコントロールしないと、売上をあげても利益が残らない構造になってしまいます。
売上高の目標は、家賃の10倍が目安といわれていますから、家賃20万円の物件であれば、200万円の売上を目指すことになり、FLRコストは70%の140万円以内の計算になります。
開業時に必要な運転資金を算出するには、まず、固定費(家賃、正社員の人件費など)+変動費(食材の仕入れ、アルバイトの人件費、光熱費、販促費など)の1か月分を出してみましょう。
それに、×3カ月、×6カ月と計算をします。そのうえで、事業計画や資金調達の計画、自己資金の状況などから、開業時に必要な金額を算出していきます。
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開業時に運転資金を準備しておくべき理由
飲食店を開業後は、計画通りに売上が上がることはない、と考えておいた方がよいでしょう。日本政策金融公庫 のデータによると、開業後、軌道に乗るまでに半年以上かかったお店が全体の6割です。開業後、お店の利益から運転資金をまかなうという計画は実現しにくいのが現実です。
また、お店のオープン直後は、友人や知人がきてくれる機会も多いことでしょう。しかし、それは一時的な盛況に過ぎません。それが落ち着くと途端に厳しい状況に追い込まれることもあります。オープン後、お店の経営が軌道に乗るまでは、売上ゼロでも乗り切れる資金を備えておくことが大事です。
開業後、運転資金に困ってから融資を申請しても、審査通過できる確率は極めて低いといえます。開業後の実績も審査対象になるため、売上が思わしくなく、資金繰りに厳しい状況では、審査を通過しにくくなるでしょう。
開業前の資金調達の段階で、運転資金も計画しておく必要があるのです。
運転資金の調達方法
飲食店の開業には、設備にかかる資金以外に、オープン後の運転資金も準備しておく必要があります。設備資金と運転資金を合わせると多額の資金が必要になりますので、融資を受けるケースが多いでしょう。次に、飲食店の開業資金の調達方法についてご紹介します。
日本政策金融公庫
飲食店を開業する際に、多くの事業主が活用するのが政府系金融機関の日本政策金融公庫の融資です。
日本政策金融公庫は、民間の金融機関では融資を受けにくい個人事業主や中小企業をサポートしています。無担保・無保証も融資が受けられ、実績がなくても融資を受けられるチャンスがあります。
創業時に活用できる融資制度として「新創業融資」と認定支援機関を通して申し込む「中小企業経営力強化資金」の2つの制度があります。
無担保・無保証で融資を受けられるといっても、厳しい審査を通過する必要があります。実際に審査を通過できるのは50~60%といわれています ので、「創業計画書」など、万全に準備をして審査に臨みましょう。
融資の審査には自己資金も重要視されますので、飲食店開業をお考えの方は、前もってコツコツと自己資金を貯めておく必要もあります。
信用保証協会による保証付き融資
創業時の個人事業主や中小企業は、一般的に貸し倒れリスクが高いことから、民間の金融機関の融資の審査は通りにくいものです。ただし、信用保証協会の保証がつく保証付き融資であれば、融資を受けられる可能性があります。
保証付き融資は、万が一、返済が出来なくなった場合に、信用保証協会が代わりに支払う仕組みです。ただし、返済義務がなくなるわけではありません。
保証付き融資は、地方自治体と保証協会、民間の金融機関の3者が連携するケースと、保証協会と金融機関の2者の連携で進めるケースの2種類あります。いずれも保証協会を利用する場合には、保証料を負担する必要がありますが、保証料の一部を補助してくれる自治体もあります。
助成金や補助金
運転資金の調達には、自治体の助成金や補助金を利用する手もあります。自治体のホームページなどを確認し、利用できる制度がないかチェックしてみましょう。
助成金や補助金は、借入ではないので返済不要なのがメリットです。しかし、申請に多くの手間がかかり、審査を通過したとしても入金までに長い期間を要するケースが多く、緊急の資金調達には向いていません。
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まとめ:安定した経営には運転資金の確保が重要
今回は、飲食店の経営に必要な運転資金をテーマに解説しました。
安定して飲食店を経営するには、運転資金の確保が鍵を握ります。とくに開業後、経営が軌道に乗るまでの期間の運転資金の確保が重要になりますので、開業資金の調達の段階から、しっかりと計画を立てておきましょう。
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