飲食店の投資回収期間とは?一般的な期間の目安と計算方法
飲食店を開業するには、大きな資金が必要です。融資を受けるケースが多く、開業後は、借りたお金の返済もしていかなければなりません。初期投資を回収し、安定した経営を続けていくには、資金を集める段階で回収計画を立てておくことが大事です。
本記事では、一般的な初期投資の回収期間や計算方法、早期回収の重要性についてお伝えします。
投資回収期間の目安と計算方法
飲食店の開業時に支出した初期投資は、どれくらいの期間で回収するべきなのでしょうか。一般的な回収期間の目安と計算方法をみていきましょう。
飲食店開業資金の目安
個人経営の飲食店を開業する場合、開業資金の目安は1,000万円といわれています。
開業資金とは、店舗にする物件の取得費用や内装工事費用、備品購入費用など、主に設備投資にかかる費用です。開業する飲食店の業態にもよりますが、一般的に自己資金で200~300万円程度、融資で700~800万円程度の資金調達が目安となります。開業後は、この初期投資にかけた費用をお店の収益から回収していく必要があります。
投資回収期間とは
内装や設備など初期投資にかかった費用を営業利益で回収し、黒字化するまでの期間のことを、投資回収期間といいます。とくに飲食店は初期費用が大きくかかりますので、予め投資回収の計画をしっかりと立てておくことが重要です。
お店の売上規模に対して、大きすぎる初期投資をすると、投資額以上の利益をあげていくこと自体が難しくなりますので、そのバランスにも注意が必要です。
投資回収期間の目安
飲食店の投資回収期間は、3~5年が目安といわれています。一般的に居抜き物件の方が早く投資回収できるとされています。内装が全くされていないスケルトン物件に対し、居抜き物件は、前の借主の設備を引き継げるため、初期投資をおさえられるからです。
ただし、初期投資をおさえようとして居抜き物件を選んでも、設備の状況によっては、かえって工事費がかさんでしまったなどということもあるので要注意です。物件選びの際によく確認することが大切です。
また、投資回収は早い方が望ましいですが、無理な計画を立てても実現できませんので、実態に基づいた計画を立てましょう。
投資回収期間の計算方法
投資回収期間は、以下の計算式で求められます。
投資回収期間(年)=初期投資額 ÷ 店舗の年間利益
たとえば、初期投資が1,000万円、年間の利益が200万円の予測だった場合、1000÷200=5で、回収期間は5年と算出できます。
投資回収を計画するには、お店の売上予測や、お店経営にかかるコストを把握しておくことも必要です。
飲食店では、坪あたり1か月で15~20万円の売上を目指すのがひとつの基準です。20坪のお店であれば、300~400万円が月あたりの売上目標となります。
飲食店経営にかかるコストで大きな割合を占めるのが「FLコスト」と呼ばれる経費です。
Fは、食材などの仕入れ、Lは人件費をさします。FLの両方を合わせて、売上の60%程度におさめないと利益を残すことは難しいとされています。最近では、FLコストに家賃のRも合わせてFLRコストと呼ばれることもあります。FLRコストは売上の70%以内におさめるべきとされています。
月の売上300万円を目指すお店であれば、毎月のFLRコストは200万円程度におさめる必要があります。売上からそれら経費をひいた利益から、初期投資を回収していかなければなりません。
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飲食店の投資回収のためのポイント
次に、飲食店の初期投資回収におけるポイントや早期回収のためにできることをみていきましょう。
早期回収が重要なわけ
飲食店開業後、すぐに経営が軌道に乗ることは稀です。日本政策金融公庫のデータによると、軌道に乗るまで半年以上かかったというケースが全体の6割程を占めています。そのような現状の中でも、初期投資をできるだけ早期に回収していくことが重要です。
開業資金の借入をしている場合、開業後の利益から返済をしていかなければなりません。返済に追われて利益を出せていないと、新しいメニューの開発や人材の確保など利益を生み出すための計画を立てにくい状態が続いてしまいます。早期に投資回収し、資金繰りを安定させていくことが、その後の経営の安定にもつながります。
投資の回収計画をシミュレーションしておく
早期の投資回収を目指すために、開業時の資金調達の段階で、回収計画をシミュレーションしておくとよいでしょう。初期投資をする段階で、現実的に回収可能かどうかを見極めることが大事です。
投資回収計画を立てる際には、まず損益分岐点を考えてみましょう。損益分岐点は、いくらの売上で黒字化できるかの境目をいいます。
■損益分岐点の計算式
損益分岐点は以下の計算式で求められます。
損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 – (変動費 ÷ 売上高)
経費、変動費は食材などの仕入れや販促費、アルバイトなどパートタイムで稼働するスタッフの人件費等、売上や時期により変動する経費です。
20坪、月の目標売上が300万円、固定費が110万、変動費が150万円かかるお店があったとしましょう。そのお店の損益分岐点は以下のように計算できます。
損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 – (変動費 ÷ 売上高))
=110÷(1-150÷300)
=110÷(1-0.5)
=110÷0.5
=220
損益分岐点は220万円。それ以上の売上を立てれば利益が残ります。
次に、このお店が1,000万円の初期投資をしていた場合の回収計画を立ててみましょう。計画は、売上予測を下回るケース、現実的なライン、理想のケースのように複数のパターンで想定することをおすすめします。
① 売上予測を下回るケース
月240万円売上 月の利益20万円 年間利益20×12=240万円
1000÷240=4.1
投資回収期間は約4年となります。
② 現実的なライン
月250万円売上 月の利益30万円 年間利益30×12=360万円
1000÷360=2.7
投資回収期間は2年以上3年以内となります。
③ 理想のケース
月300万円の売上 月の利益80万円 年間利益80×12=960万円
1000÷960=1.01
投資回収期間は約1年となります。
開業後、すぐに売上が安定することは難しいですから、そのことも念頭に置いて計画を立てるとよいでしょう。
早く回収するためにできること
初期投資を早く回収していくためには、
・開業資金をおさえる
・固定費を下げる
・利益率をあげる
ことが重要です。
■開業資金をおさえる
想定している売上規模よりも過剰な設備投資をすると、当然ながら回収が困難になります。経営が軌道に乗ったら、その利益でメニュー開発や人材確保、店舗の改修など追加投資も可能になりますので、最初から投資しすぎないことが重要です。
居抜き物件を利用する、内装に凝り過ぎない、などの工夫をしましょう。
■固定費を下げる
固定費は開店後には変更しにくいものですから、開業前に固定費を下げる意識を持つことが重要です。立地や物件はもちろん重要ですが、より小さな物件でも、想定しているお店の実現は可能かなども検討してみるようにしましょう。
経営が安定するまでは、正社員を雇わずに家族の協力を得るのもひとつの手です。
■利益率をあげる
利益をあげるには、売上を上げることはもちろんですが、変動費の見直しで利益率を改善することもできます。
食材が過剰仕入れになっていないか、ロスは出ていないか、原価率の高い商品が主力になっていないか等、データをとって見直してみましょう。アルバイトなどパートタイムのスタッフは、混雑する時間帯や曜日に適切に人員配置できているかも大事なポイントです。
まとめ:飲食店の投資回収は開業前から計画を
今回は、飲食店の投資回収について、目安となる期間や計算方法について解説しました。飲食店の開業には多額の初期投資が必要になります。開業前からしっかりと回収計画をたてて、早期回収を目指すことが、安定した経営にもつながります。
初めての経営でご不安な方は、プロのアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。