飲食店の利益率はどれくらい?計算方法と営業利益の上げ方について解説
飲食店の成功には、売上を立てるだけでなく、適正な利益率を維持することも重要です。本記事では、飲食店を経営するうえで目標とする利益率の水準と、各コストの目安、営業利益率の上げ方について解説していきます。
これから飲食店開業をお考えの方、初めて経営をされる方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
飲食店の利益とコストとは
飲食店を経営するうえで、どれくらいの利益率を目指せば、安定して経営ができるのでしょうか。最初に、飲食店の利益とコストについてみていきましょう。
飲食店の利益とは
目標とする利益率を把握するにあたり、まずは2種類の利益と、利益率の計算方法をみてみましょう。
■粗利益とは
飲食店の場合、お店の売上から食材などの原価を引いたものが粗利益です。「売上総利益」と呼ばれることもあります。
粗利益=売上-原材料費
■営業利益とは
粗利益から、お店の家賃や従業員の人件費などの経費を引いた残りが営業利益です。
営業利益=粗利益-経費
■営業利益率とは
売上高に対する営業利益の割合を営業利益率といいます。
営業利益率=営業利益÷売上高×100
この営業利益率が、安定経営を目指す際の重要な目安になります。
飲食店のコストとは
飲食店開業後には運営経費がかかります。運営経費には、固定費と変動費があります。
■固定費
家賃、正社員の給与、リース料など。売上高に関わらず、毎月固定でかかる費用です。
■変動費
食材などの原材料費、パート・アルバイトスタッフの人件費、販促費など。売上によって変動する費用です。
■FLRコストとは
Fは、Foodの頭文字で、食材などの原材料費、Lは、Laborの頭文字で労働、つまり人件費をさします。飲食店では、仕入れた食材を組み合わせて調理加工をし、提供していますので、原材料費だけでなく人件費も商品のための経費といえます。
また、RはRentの頭文字、家賃を表しています。毎月の家賃も全体の経費の中で、大きな割合を占めています。
飲食店の経営では、経費の中で大きな割合を占めるFLRコストの管理が非常に重要です。
飲食店の利益率の目安
ここまで、飲食店の利益やコストについてみてきました。次に、飲食店の利益率の目安をみていきましょう。自店の状況と比較すれば、課題がどこにあるかがみえてくるでしょう。
利益率の目安
安定した経営をするための飲食店の利益率は、一般的に10~15%が目安といわれています。業態によってもこの目安は変わりますが、利益率が10%を下まわっている場合には、コストの見直しなど課題の改善に向けて対策をしましょう。
FLRコストの目安
売上に占めるFLRコストの割合をFLR率といいますが、FLR率は70%以内におさめることを目指しましょう。
FLRコストの目安は以下の通りです。
F(原材料費)30%、L(人件費)30%、R(家賃)10%
物件探しをする際にも、家賃は売上の10%を目安とすることが多いです。
飲食店の営業利益を高くするには
ここでは、営業利益を高くするための方法をご紹介します。
営業利益をあげるには、FLRコストの削減と売上UPの両面からの対策を検討するとよいでしょう。次にご紹介するポイントを参考に、改善点のヒントにしてください。
原価を下げる
利益率をあげるには、原価を見直してみましょう。飲食店の原価率は、一般的に30%が目安といわれています。
原価を見直すには、次のことが必要です。
- 仕入れ先を見直す
- 使用する食材の数を減らす
- 正確な原価を把握する
今よりも、安価で仕入れられる先はないか検討してみましょう。ただし、単に食材の質を下げるだけでは、商品の質が下がり、顧客満足度も下がってしまうでしょう。
メニューの数をしぼって、使用する食材の数を減らすなどの工夫もしてみましょう。
また、食材の歩留まり(ぶどまり)についても、意識を向けることが大切です。食材全体のうちに実際に使用できる部分の割合がどれくらいあるかということです。使用できる部分が少ない食材で作るメニューは、実質の原価がその分高くなります。
食材ロスを減らす
仕入れの見直しだけでなく、仕入れた食材のロスを減らすことも重要です。食材ロスを減らすには、以下の点がおろそかになっていないかの確認をしましょう。
- 在庫管理
- 賞味期限の管理
- 適量の仕入れ
在庫管理がずさんになっていると、過剰仕入れにもつながります。
特に、生鮮食材など賞味期限が短い食材を多く扱っている場合は、廃棄が出やすくなります。賞味期限が短い食材を使用するメニューは、数量限定にするなど、確実に材料を使い切る工夫が重要です。
また、売上予測は感覚値ではなく、データに基づいた予測をたてましょう。過剰な仕入れを防ぐことが、利益アップにもつながります。
人件費削減
アルバイトやパートタイマーの従業員を雇っている場合には、シフトを見直してみましょう。人件費がかさんでいる場合は、お店がすいている時間帯の人員が過剰になっている可能性があります。
曜日や時間帯別に混雑状況を把握し、状況に見合った人員体制を組みましょう。とはいえ、コストを抑えたいからと、極端に少ない人員体制で運営しようとすると、サービスの質が下がり、客足が遠のいてしまう恐れもあります。加えて、従業員の満足度も下がると離職につながり、人員不足に陥る場合もあります。人員削減のバランスには注意しましょう。
水道光熱費をおさえる
FLRコストに比べると水道光熱費が占める割合は小さいものですが、見直す余地がないか検討してみる価値はあります。契約プランの見直しや、営業時間帯の見直し、来客数の少ない曜日を定休日に設定するなどすると、コストがおさえられます。
店舗スペースの貸し出しをする
近年では、お店の定休日や営業時間外にお店のスペースを別の事業者に貸し出すことも活発に行われるようになりました。
たとえば、レストランの定休日だけコーヒーを中心とするカフェを開業することや、アートの展示会を開催することなどです。貸す側は、定休日にも収入が得られるメリットがあり、借りる側は、低コストでビジネスを始められるなどのメリットがあります。
ただし、スペースの貸し出しには、物件のオーナーの許可を得る必要がありますので、その点は注意しましょう。
回転率と稼働率をあげる
飲食店は、物販などの小売業とは異なり、お店の座席数によって、売上の上限がある程度は決まってきてしまいます。そこで重要なのが、客席の回転率と稼働率です。
安価なメニューが中心のラーメン店などのような業態では、回転率を上げて客数を増やすことが売上アップにつながります。それには、注文から商品提供までをスムーズにすることが重要ですので、券売機などを導入し、注文にかかる時間を短縮する工夫をしましょう。
一方、客単価が高く、お客様が長く滞在をするレストランなどは、回転率をあげることは難しいため、稼働率が重要になってきます。4人用のテーブル席に2人客が座ると、2席分が稼働していない状態になってしまいます。テーブル席は、2人席をベースとして4人以上のグループには2人席をくっつけるなど、流動的に使える客席配置が望ましいでしょう。
また、客席が荷物の置き場となって稼働出来ていない状態にならないように、荷物入れのカゴなどを準備しておくとよいでしょう。
まとめ:飲食店の安定した経営には利益率の把握と改善が大事
今回は、飲食店の営業利益をテーマに、目安となる水準や利益をあげるためにできる対策についてお伝えしました。営業利益を上げるには、コスト削減と売上アップの両方の視点から対策をするとよいでしょう。
利益率には、物件選びや座席の配置など、開業前の準備も大きく影響します。物件や什器は簡単には変えにくいため、準備の段階からしっかりと損益をシュミレーションしておきましょう。
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