飲食店開業に必要な申請はいつから準備が必要?一般的な申請スケジュールをご紹介
飲食店を開業するには、開業前までに必要な許可の取得や届出を済ませなければなりません。特に営業許可の申請は、内装工事が始まる前から動く必要があり、必要となる資格取得にもスケジュールを確保しなければなりません。
本記事では、飲食店開業にあたり、各種申請を順序立てて進めるためのスケジュールについて解説していきます。
飲食店開業に必要な申請と届出
まずは、飲食店開業に必ず必要な申請について、みていきましょう。
営業許可
営業許可は、開業予定地の管轄の保健所へ申請します。営業許可を取得するには、開業予定の施設が定められた基準を満たしているか、保健所による検査を通過しなければなりません。それには、工事前に施設基準の確認をしておく必要があります。
また、営業許可の申請には、店舗ごとに【食品衛生責任者】をおくことが義務付けられています。食品衛生責任者の設置は食品衛生法で定められており、飲食による健康被害の発生を防止するため、営業者の指示に従って衛生管理にあたる役割をします。
栄養士や調理士等の免許を保持している方以外は、指定の講習(食品衛生責任者養成講習)を受講のうえ、資格を取得しなければなりません。その講習を受けるためのスケジュールも確保する必要がありますので、早めの計画が重要です。
講習の開催頻度や必要な費用も異なるため、事前に管轄する自治体や食品衛生協会などのWEBサイトを確認しその講習を受けるためのスケジュールも確保する必要がありますので、早めの計画を立てるようにしてください。
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消防署への届出
消防署へ必ず提出が必要になるのが、以下の2つの届出です。
■必ず提出
【防火対象物工事等計画届出書】
建物や建物の一部を工事する際に必要な届出で、内装工事に着手する前の提出が必要です。
飲食店のような人が多く集まる場所ではとくに、万が一火災が起きた場合に大きな被害が発生する可能性があります。消防用設備の設置状況などを事前に専門家が審査および指導することで、不適切な工事を防ぎ、安全性を確保するために届出書の提出が必要になります。
必要な書類は以下の通りです。
・防火対象物工事等計画届出書
・防火対象物の概要表
・案内図
・平面図
・詳細図
・立面図
・断面図
・展開図
・室内仕上表及び建具表
・火気使用設備等又は火気使用器具等を設置する場合は、その位置、構造等の状況を示した図
【防火対象物使用開始届出書】
建物や建物の一部を使用する際に必要な届出です。
防火対象物の工事等計画の届出を行った場合についても、防火対象物使用開始の届出が必要です。使用を始める7日前までに消防署に提出をしてください。
■その他、条件によって届出が必要
【防火管理者選任届】
開業予定地の収容人数が30人以上の施設の場合には、防火管理者の選任が必須です。防火管理者の資格取得には、種別によって1日または2日の講習を受ける必要がありますので、前もってスケジュールを確保しておく必要があるでしょう。
届出書は、「消防署保管用(正本)」、「事業所様保管用(副本)」が必要になりますので、同じものを2枚用意してください。
ほか、選任される方の防火・防災管理講習修了証(手帳)(コピー可)が必要になります。
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他には、厨房でコンロなど火を使う予定がある場合には、以下の届出が必要です。
【火を使用する設備等の設置届】
設置する7日前までに管轄消防署に届出する必要があります。
届出書のほか、届出対象の火を使用する設備の種別に応じて「概要表」の提出が必要になります。
なお、届出後、原則として消防署の検査を受ける必要がありますので、そのことも念頭に置いておきましょう。
予定通りに飲食店を開業するためには、これらの手続きを内装工事等と同時並行で進める必要があります。内装会社と相談しながら予めスケジュールを立てて動くことが大事です。
営業許可の申請の流れ
ここでは、営業許可の申請の流れをご紹介していきます。
1.事前相談
お店の内装工事着工前に管轄の保健所へ相談にいきましょう。その際は、設計図面を持参してください。工事完成後に施設基準に適していなかったことが発覚すると、追加工事が必要になってしまいますので、この段階できちんと確認しておくことが重要です。
2.申請書の提出
工事完成予定日の10日くらい前の時期が提出の目安です。このときに、施設検査の日程についても打ち合わせをするとよいでしょう。
申請には、食品衛生責任者をおくことが必要ですので、それまでに資格を取得しておくようにしてください。
3.保健所による施設完成後の確認検査
完成した施設が、基準を満たしているか実際に保健所の職員が確認します。その際は、立ち会いが必要になります。
4.許可書の交付
保健所の検査をクリアすれば、許可書が交付されます。許可書の交付には検査後、数日かかりますので、そのことを踏まえて開店日を設定してください。
営業許可を申請してから交付までは、約2週間程度が目安ですが、内装工事前の事前相談から考えると開店予定日の2~3カ月前から動く必要があるでしょう。
営業許可申請に必要な書類
次に、営業許可に必要な書類について、みてみましょう。
保健所によって、必要な書類の数や申請料が異なりますが、ここでは、東京都を例にご紹介します。
■必要な書類
・営業許可申請書 1通
・施設の構造及び設備を示す図面 2通
・食品衛生責任者の資格を証明するもの
※食品衛生責任者手帳など
・水質検査成績書
※井戸水や貯水槽を利用する場合、1年以内に検査した成績書の提出が必要
・許可申請手数料
※東京都の場合は、新規18,000円(令和6年6月1日~)
・営業許可申請書に法人番号を記載しない場合は登記事項証明書が必要
※法人の場合
保健所の検査でみられるチェクポイント
飲食店営業許可の取得には、保健所の立ち入り検査を通過しなくてはなりません。立ち入り検査でチェックされるポイントについて解説していきます。保健所によって規定が異なることもありますが、検査では、衛生的な環境で安全に食品を提供できる施設であるか否かが問われていますので、そのことを念頭に入れておくとよいでしょう。
お店の構造
■区画
・厨房と客席を隔てる区切りがあること(ウエスタン扉や跳ね上げカウンターなど)
・住居など、食品等を取り扱うことを目的としない場所が区画されていること
■天井、床、壁
・清掃しやすい素材と構造であること
・天井は結露しにくく、カビの発生を防止できる構造
・床は不浸透性材質で作られ、水はけが良いこと
・内壁は、高さ1メートル まで防火効果のある素材で腰張りがされていることを推奨
■照明
・作業や清掃等に十分な照度を確保できる照明設備
■換気扇
・調理場には必ず換気扇の設置が必要。客席にもあることが望ましい
店内の設備
■食器棚
・食器は扉付きの棚で保管し、埃や害虫の侵入を防げる環境であること
■シンク
・最低2槽以上のシンクがなければならない。ひとつは食材を洗うため、ひとつは食器や調理道具を洗うためのもの
※例外として、食器洗浄機を設置している場合は、それを1槽分とみなされます
・消毒や洗浄のため、60℃以上のお湯が出ること
■害虫等の防除
・ねずみや昆虫等の侵入を防ぐため、窓には網戸、排水溝には鉄格子や金網張などを設置する
■トイレ
・厨房から離れた場所に、従業員の人数に応じて設置する
■手洗い場
・従業員専用とお客様専用の2種類を設置する
・水道の蛇口は、センサー式やハンドルタイプ、踏み込み式などでなければならない
・ひねるタイプの蛇口は、一度洗った手で蛇口をしめなければならないのでNG
■ゴミ箱の設置
・清掃がしやすい素材で十分な容量があるもの、且つ悪臭や害虫の侵入を防ぐために蓋つきのもの
■更衣場所
・従業員の数に応じて、十分な広さがあること。厨房内に更衣場所 があるのはNG
■冷蔵庫と冷凍庫
・温度計の設置が義務付けられている
・冷蔵庫や冷凍庫が厨房の外にあるのは基本NGだが、蓋が締まる飲み物の保管であれば厨房の外でもOK
消防署に提出する書類のスケジュール
消防署に提出する書類の準備も、営業許可の申請と同時並行で進めていく必要があります。
消防署に提出する書類のスケジュールは以下の通りです。
【防火対象物工事等計画届出書】
工事に着手する7日前までに提出
【防火対象物使用開始届出書】
その施設を使用する7日前までに提出
【火を使用する設備等の設置届】
設備を設置する7日前までに提出
以上を踏まえると、保健所に営業許可の事前相談に行き、内装工事の計画が基準を満たしていることが確認できた工事前の段階で、消防署にも防火対象物工事等計画届出書を提出する必要があるということです。
また、営業許可の申請書類を提出する頃には、防火対象物使用開始届出書と火を使用する設備等の設置届も提出しなければなりません。
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まとめ:営業許可申請には内装工事前から動く必要あり!
今回は、飲食店開業に必要な許可や届出の申請スケジュールについて、ご紹介しました。営業許可をスムーズに取得するには、内装工事に着手する前に保健所に相談にいくことがポイントです。計画的に進めないと、開業予定日までに営業許可がおりないだけでなく、内装工事の手直しまで必要になる可能性がありますので注意が必要です。開業予定日から逆算して、しっかりと計画を立てましょう。
また、申請までのスケジュール管理には、オミセクラフトの開業TODO をチェックするのもおすすめです。ぜひ、活用してみてください。