飲食店の開業に借金をするのは悪いこと?融資を受けるメリットについて

私たち日本人の中では「借金=悪」という考え方が根強く浸透しています。飲食店を経営するうえで、借金をすることは本当に悪なのでしょうか。

本記事では、飲食店経営において借金をすることの意義と無借金経営のデメリットについて解説していきます。飲食店開業に向けて融資を受けることに抵抗や不安がある方、自己資金のみで開業を予定している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

飲食店は無借金経営の方がいい?

飲食店を経営するには、無借金経営が望ましいのでしょうか。まず、飲食店を経営するにあたり、借金をどうとらえるべきかについて解説していきます。

借金=悪ではない

借金に関してネガティブなイメージを持っている方も多いことでしょう。とくに、我々日本人にとっては、根強い価値観といえるかもしれません。

しかし、一概に「借金は悪だ」と言い切れるものではありません。借金の質により、「良い借金」と「悪い借金」があり、それは借金の使い道によって決まるのです。

良い借金であれば、借りたお金によってリターンが得られるはずです。借りたお金によって将来、借りたお金以上の価値が得られるのであれば、それは良い借金といえるでしょう。

一方、借りたお金を浪費に使うまたは、浪費を補填するために使うのであれば、将来も借金以上の価値を生み出すことはありません。それは良い借金とは言い難いでしょう。

ビジネスと借金

ビジネスにおいては借金を「資金調達」として捉えることが重要です。
調達した資金で投資をして、利益として投資したお金を回収するのです。借りたお金に利子をつけて返し、その実績をもとに更に資金調達をし、投資をすることで利益を拡大していくというサイクルを繰り返すのです。借金をすることは、事業への先行投資であり、選択肢を増やすことでもあるのです。

資金調達をしないと、手持ちの資金以上に事業も利益も拡大していきません。少ない手持ち資金にレバレッジを効かせるための借金なのです。
また、無借金経営にこだわっていると、せっかくのチャンスを逃してしまうこともあります。

たとえば、飲食店開業を考えている方が、予定していたエリアに理想の物件を見つけたとしましょう。
飲食店での実務経験も十分に積んであります。

しかし、手元にある資金は300万円で、その物件でお店を開くには到底足りません。あきらめてお金が貯まるまで開業のタイミングを待つのか、300万円の自己資金をもとに融資を受け、開業に向けて準備を進めるのかでは、どのような違いがでるのでしょうか。
チャンスを活かせるのは、後者ではないでしょうか。

飲食店の開業時に借金をした方がいい理由

飲食店を経営する際は、必要に迫られてから借金をするよりも、開業時に借金をしておく方がよいでしょう。その理由を解説していきます。

資金ショートが廃業の原因

飲食店は、60%が開業後2年以内に廃業するといわれています。その廃業の主な理由は、赤字だからではなく、資金ショートによるものなのです。現に、日本の企業の3分の2は赤字企業と言われている通り、赤字だからといって倒産するわけではないのです。

資金がショートしてしまう原因は、開業時の運転資金の確保が不十分だったからです。飲食店を開業後は、思い通りに売上が上がらないのが普通です。実際に、開業後、経営が軌道に乗るまでに半年~1年かかった事業者が全体の半数を越えるというデータもあります。

しかし、開業直後の売上を楽観視しすぎてしまう事業者が、運転資金が不足して廃業に追い込まれてしまうことがよくあるのです。

開業後、半年間はお店の利益から運転資金を生み出すことはまず不可能と考えて、半年程度は売上ゼロであっても乗り切れる運転資金を予め確保しておくことが重要です。

資金繰りが悪くなってからでは、銀行はお金を貸してくれません。銀行にとっては、返済能力が低い相手にお金を貸すメリットがないからです。仮に、借りられたとしても、高い利率が課せられるでしょう。
厳しい状況になる前に借金をしておくことは、いざとなったときの備えでもあるのです。

金融機関との関係づくり

開業時に融資を受けておくことで、のちに資金が必要になったときに、融資を受けやすくなります。

融資は初回のハードルが一番高く、融資を受けた実績がないと、なかなか借りられません。無借金で長年飲食店を経営していた事業主が、いざ資金が必要になって借りようとしても簡単には借りられないでしょう。

銀行にとっての信用は、融資を受けた実績であって、無借金であった実績ではありません。金融のプロである金融機関から、その金額の返済能力があると判断されたこと、返済した実績があることが信用につながるのです。

多くの事業主が、開業資金の調達に日本政策金融公庫や保証協会が間に入る保証付融資を利用しますが、それらは返済期間に「措置期間」を設けることができます。開業直後の経営が不安定な期間に、元本の返済を待ってもらい利息だけの返済でよい措置期間があれば、資金がショートするリスクも減らせるでしょう。

創業融資は比較的、低金利で借りられるのもメリットです。開業時にかかる初期費用を自己資金で用意できている場合でも、資金調達をしておくことをおすすめします。いざ、厳しい状況になったときにその資金が役に立つだけではなく、2号店の開業のチャンスなど、事業拡大の際にも資金調達がしやすくなります。

飲食店開業のサポートはオミセクラフト、まずは無料会員登録

飲食店開業時にはいくら借り入れておくべきか

チェーン店以外の、比較的小規模な飲食店を開業する際の開業資金は、1000万円程度が目安です。自己資金で全てをまかなえる人は、そう多くはないでしょう。仮に自己資金で用意できる場合も、資金調達をした方がよいのは、先にもお伝えしました通りです。

では、いくら借入しておくべきかといいますと、その答えは「借りられるだけ」です。

「そんなにたくさん借入して返せなくなったら、どうしよう」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。金融機関は、返済能力を超える金額は貸してくれませんから、その心配はあまりいらないでしょう。

融資を受けられる限度額まで借りておいて、開業後、借り入れた金額に手をつけずに経営できれば、それはそれでいいのです。返済期間があまり長期間に渡ると金利が負担になりますので、バランスをみながら返済をしていきましょう。

経営が安定して余剰資金ができると、残りを一括返済することを考えることもあるかもしれません。無駄な利息を払いたくないという発想もあるでしょう。
ですが、前倒しの返済は、銀行にとっては予定していた金利が入らないことになりますから、違約金などが発生する可能性もありますので、確認が必要です。

仮に経営が好調で一括返済できる状況になっていたとしても、できるだけ手元に資金を置いておくことをおすすめします。震災や新型コロナウィルスの感染拡大のように、不測の自体に備えるためです。
自力ではどうにもならないことが起きたときに、赤字を埋める資金があれば、苦しい状況を乗り切ることができるからです。

繰り返しになりますが、事業において借金は、いざとなったときの備えになるのです。

まとめ:借金は悪ではない!飲食店経営には融資を受けることが重要

今回は、飲食店経営における借金をテーマに解説しました。
借金に対してネガティブなイメージを持たれる方も多いですが、事業拡大や倒産リスクの備えとして、借金をするメリットは非常に大きいといえます。安定した経営のためにも、戦略的に資金調達をし、金融機関と良好な関係を築きましょう。

【無料ツール】飲食店開業にどのぐらいの費用がかかってどのぐらい利益がでるの?簡単シミュレーション