飲食店を開業するとき、あなたはどれだけの融資を受けられる?
飲食店開業には、まとまった資金が必要になりますので、多くの方が開業の際には金融機関からの融資を検討されます。自分がどれだけ融資を受けられるのか、気がかりな方もいらっしゃることでしょう。
本記事では、融資金額を左右する要素や希望の融資を受ける秘訣について解説していきます。飲食店開業にあたって融資を検討している方、いくら融資を受けられるか知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
融資を受けられる金額は人によって違う
創業時に実績がないのは皆に共通しているはずですが、融資を受けられる額は人によって違うのはなぜなのでしょうか?その理由を順にみていきましょう。
必ずしも上限金額の融資を受けられるとは限らない
受けられる融資の金額は、事業計画や人によって異なります。各融資制度には融資限度額が設定されていますが、最大の金額の融資を希望したとしても、審査が通るとは限りません。
まずは、自分にとって妥当な借入額を見極めることが重要です。妥当な金額とあまりにもかけ離れた金額を希望すると、計画性や返済能力を懸念され、減額どころか1円も融資を受けられないこともあります。
融資を受けられる額は自己資金が影響
融資を受けられる額の目安は、自己資金のおよそ2~3倍が現実といわれています。
日本政策金融公庫の創業融資の要件には、融資希望額の10分の1の自己資金が必要とされていますが、これは申請のための最低限の要件で、審査基準とは異なります。現実には300万円の自己資金に対して、3,000万円の融資を受けられる可能性は低いでしょう。
また、日本政策金融公庫のデータによると、開業資金として事業主が受けた融資額の平均値は約800万円 です。あくまで平均値ですので、実際は、それよりも下回ることも上回ることもあります。
一般に飲食店の開業資金は、1,000万円が相場といわれていますから、300万円以上の自己資金に対して、800万円程度の融資を受ける、というのが飲食店開業における資金調達の目安といえるでしょう。
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新創業融資では1000万円までが現実
飲食店開業時に多くの方が利用する日本政策金融公庫の新創業融資では、融資限度額を3,000万円としていますが、実質は1,000万円が上限と考えておくとよいでしょう。なぜなら、限度額3,000万円というのは本店決裁の限度額だからです。
支店決裁の上限1,000万円を超える融資の申し込みには、支店決裁の次に本店決裁が必要になります。開業資金を調達する段階では、本店決裁に進めるケースはそう多くはありません。融資を申し込みする際には、1,000万円までを心得ておきましょう。
もうひとつ、創業したての企業だけでなく、既存の企業も利用できる日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金についても同様です。制度上の融資上限額は7,200万円ですが、その金額は本店決裁の上限額で、実質的には、2,000万円までが上限となるでしょう。
融資額を左右するポイントは
金融機関が融資の審査をするときに考慮する最大のポイントは、返済能力です。実績がない開業準備の段階で、金融機関が事業主の返済能力をどのように見極めるかというと、自己資金や経験値、事業計画などの要素から、総合的に判断しています。
それぞれの項目ごとに具体的に解説していきます。
自己資金額
前述のとおり、自己資金の2~3倍が現実に融資を受けられる金額の目安です。必要な開業資金から逆算して、自己資金を準備しておく必要があります。
また、自己資金は金額だけでなく、資金の集め方もチェックされるポイントです。事業主がコツコツと貯めた自己資金であれば、計画性や事業に対する本気度が高いと受け止められるでしょう。
ただし、自己資金を多く見せようと、一時的に借りたお金を口座に入金しても自己資金とは認められません。「見せ金」と見破られてしまいますので、注意しましょう。
飲食業界での経験
飲食業界での経験値も重要な判断材料です。経験値で高い評価を得るには、3~6年程度業界経験があるととする担当者もいるようです。経験の長さだけでなく、マネージャーや店長などのマネジメント経験も評価ポイントとなります。
未経験の異業種で開業する場合には、最低でも半年~1年の経験を積んでおくことが望ましいです。未経験の状態に比べて融資を受けやすくなります。
事業計画
事業で得た利益が返済の財源になりますので、事業計画の内容も厳しくチェックされます。設備投資は相場にあったものか、希望の融資額と事業規模に矛盾はないか、売上に根拠はあるか、原価率は妥当か、などが調べられます。
設備に必要な資金は、見積書の提出も必要です。売上見込みには客単価や見込み客数など、根拠となる具体的な数字を記載しましょう。
借入状況
融資を申し込んだ本人の借入や金融事故の有無もチェックされます。過去5年以内に、破産や債務整理などの金融事故を起こしていると、融資の審査通過は難しくなるでしょう。
また、カードローンや消費者金融からの借入は融資に影響する可能性もあります。融資を申し込む直近過去2年くらいは、消費者金融からの借入がないことが望ましい です。住宅ローンや教育ローンは、遅延や延滞がなければ、不利になることは少ないでしょう。
経営者としての資質と人間性
融資面談では、経営者としての資質があるかなどの人間性も見られます。面談には、きちんと見える服装で臨み、礼儀正しい言葉遣いや態度を心がけましょう。
事業計画書の作成には、専門家のアドバイスを受けたとしても、事業主が自分の言葉で事業計画を語れなくては審査の通過は難しいでしょう。自己資金や経歴などの条件だけでなく、経営に関する資質や事業に対する熱意も重要な判断材料になります。
希望の融資を受けるために+αでできること
希望通りの融資を受けるには、自己資金の準備や業界経験値が大切なのはもちろんですが、審査のアピールとなる材料をそろえておくことも大切です。ここでは、融資の審査を通過するための+αでできることについてご紹介します。
創業計画書のブラッシュアップ
創業計画書は、必要事項を漏れなく記載しただけでは、十分ではありません。売上の根拠となる具体的な客単価や客数、現実的な事業の見通しを算出できていることが重要です。
また、創業計画書のフォーマットに書ききれないことは、別紙を添えて補足してもよいでしょう。開業予定地の立地の特性や近隣施設がわかる資料、ターゲットとなる層の通行量などのデータも添えると、売上根拠に説得力が増します。競合調査や分析結果、予定している販促計画なども評価につながる可能性があります。
経歴書のアピール方法を工夫
経歴書は、所属や年数などの事実の羅列だけでなく、経験を通して何を習得したのか、任されていたポジションや担当範囲も記載するとアピールになります。開業後に活かせる資格なども、合わせて記載しておくとよいでしょう。
融資面談の練習
初めて開業する方は特に、融資面談にも不慣れでしょうから、緊張して当然です。面談で失敗をしないために、イメージトレーニングやロールプレイングなどで、面談を想定した受け答えの練習をしておくことをおすすめします。
お店を軌道に乗せて、借りたお金を返済できることをアピールするための機会ですので、売上の根拠となる数字を示しながら、ご自身の言葉で語れることが重要です。
まとめ:融資金額を左右するのは自己資金・経験値・事業計画
今回は、融資金額を左右する要素や、希望の融資を受けるための秘訣についてご紹介しました。創業融資の審査には、自己資金や経験値、事業計画が重要な判断基準となります。融資を申し込む前にしっかりと準備をしておきましょう。
融資の審査には、初めて開業する方にとっては、わからないことや不安なことも多いでしょう。その場合は、プロのアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。事業計画書など、書類作成のサポートも受けられます。
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