飲食店のリスク管理:未来のトラブルを未然に防ぐ方法
飲食店を経営すると、様々なトラブルが発生する恐れがあります。
例えば業務遂行中に怪我をするリスクや、提供した料理によってお客様が体調を崩すといった事態が起こることがあります。ときにはお店の存続に関わるようなトラブルに発展する可能性も。事前に考えうるトラブルに対しては、未然に防ぐためのリスク管理が求められます。
この記事では、飲食店に起こり得るトラブルを未然に防ぐためのリスク管理方法を解説します。
飲食店に潜むトラブルの種類と対策
飲食店に潜むトラブルの種類と対策をいくつかピックアップします。もちろんこれだけではありませんが、以下で紹介するものを参考にしてトラブルを未然に防げるように対策を検討しておくと安心です。
では、トラブルになるリスクと対策を見ていきましょう。
リスク➀-食品の衛生管理
食品の衛生管理を怠ると食材に含まれる細菌などが増殖してしまい、食中毒等が発生してしまう恐れがあります。食中毒とは細菌や有毒物質の混入している食物を食べることにより、主に急性の胃腸炎を起こす病気で、嘔吐、腹痛、発熱等の症状があります。食中毒は健康被害も大きく、拡大する可能性があるので、正しい知識を習得し、防止に努めることが重要です。
食中毒を予防するための、四原則をお伝えします。
四原則 | 内容 |
持ち込まない | ・期限切れの食材、温度不良の食材などを仕入れない・安全が確認されている原材料を仕入れる・従業員の健康管理を徹底する |
つけない | ・調理器具の使い分けや洗浄と消毒の徹底を行う・冷蔵庫内や作業工程での二次汚染を防ぐ為に食品は種類ごとに場所を決めて保管する |
増やさない | ・保管時の温度と時間を守る・細菌に増える温度と時間を与えない(十分な加熱や素早い冷却が重要です) |
やっつける | ・75℃で1分(二枚貝類は85~90℃で90秒)以上、中心部まで加熱する・調理器具は洗浄後、熱湯や塩素剤などで消毒し、十分乾燥させる |
上記はほんの一例ですが、安全な食事を提供できるような調理環境を整えておくことや、食品衛生管理を適切に行うことが大切です。
衛生管理について、厚生労働省が飲食店向けにガイドライン等を公開していますので、確認してください。(ガイドライン等のリンク)
リスク②-労災等
飲食業は労災が多数発生する恐れが高い業態で為注意しなければなりません。事前に注意喚起をしておいても、一時の気の緩みから労災につながることがあります。
労災が発生してしまう前に、労務管理を徹底し、万が一労災が発生してしまった場合の対応を明確にしておきましょう。例を挙げると、以下のような労災が発生しやすくなっています。
調理に伴うやけどや切り傷
油の飛び跳ねによる火傷や鋭利な調理器具による切り傷は、それぞれ飲食店で発生しやすい労災の一つです。まずどちらも調理場の整理整頓、清掃清潔を行い、安全に作業できる環境を整えることが重要です。厨房内は暑熱な環境になりがちですので、熱中症の発生のおそれもあることに留意しましよう。
移動中に転倒
飲食店内では、料理を配膳する際や調理の際に移動することが多くなります。
移動する導線上に邪魔なものを配置しないことや定期的に清掃して床面の水濡れ・油汚れをなくすこと、狭い場所を少なくすることが大切です。「滑り」や「つまづき」の原因を取り除くようにしましょう。
リスク③‐火災・地震などの災害
災害が発生した際、パニックに陥ると従業員やお客様に怪我をさせてしまうリスクが高まります。そのような場合にも落ち着いて対応できるように、緊急時対応のマニュアルを作成と定期的な模擬訓練の実施が効果的です。
金銭面のリスクに関しては、火災保険への加入を検討するとよいでしょう。
リスク④‐お客様トラブル
飲食店内に滞在するお客様の数が増えるとトラブルの発生リスクも上がります。
例えば、以下のようなものがあります。
- お客様同士の揉め事
- 不当なクレーム
- 駐車場内での交通事故
- 従業員が誤って飲食物をこぼして、お客様の衣服等を汚す
- 従業員が誤って熱い飲食物をこぼしてお客様にやけどを負わせる
- 料理への異物混入
これらのトラブルに迅速に対応するには、予め対応フローを用意しておき、トラブル発生時もスムーズな対応が行えるようにすることが重要です。
リスク⑤‐人手不足
飲食業界において人手不足は大きな問題となっています。多忙なオペレーションをワンオペや少人数でこなすことは可能かもしれませんが、その状態が続けば最終的には限界に達し、サービスの質が低下したり、過度なストレスによって従業員の健康に影響が出てくる可能性もあります。その結果、お客様にも迷惑が掛かることになります。
対策としては以下のような方法が考えられます。
- アルバイトやパートを採用する
- オペレーションをマニュアル化する:業務の標準化により効率的な作業を促進する
- 働きやすい環境を整える:短時間勤務を許可などで幅広い労働力を得る
- 運営を効率化する:オンラインシステムの活用により、注文や在庫管理を自動化し業務効率化する
これらの対策を実行するには資金面でのリスクがありますが、適切なリスクをとりつつ、必要となる投資を行うことも重要です。
また、従業員のスキルアップによって効率化が上がり、必要人員を少なくすることも可能になることがあります。従業員一人ひとりと向き合い、モチベーションを高められるような育成環境づくりも必要です。
リスク⑥‐資金不足
資金不足は飲食店の経営を続けるために最も深刻な影響を与えます。特にキャッシュフローの管理が重要で、将来の予算と来客数見込みを基に資金計画をしっかりと立てましょう。
一般的に、開業後、経営が軌道に乗るまでに半年以上はかかると言われており、自己資金だけで運営見通しが厳しい場合は、開業前の時点で運営資金の為に融資の借り入れを検討した方が良いでしょう。
リスク⑦‐法規制違反
飲食店の運営は多くの法令に則って行わなければいけません。食品衛生法や労働基準法などの法律に違反してしまった場合、事業の存続だけでなく店舗の信用の喪失にもつながります。自身の飲食店の提供サービスに合わせて法令を確認し、必要に応じて行政にも確認することをお勧めします。
トラブルを未然に防いで心地よい店づくりを!
飲食店は開業前も開業後も準備が重要です。起こりうるトラブルを想定し、確実な対処法を事前に準備することで、お店の継続的な発展が見込めます。安全で快適な環境を提供することで、顧客の信頼を得て、ビジネスの安定した展開を実現しましょう。