ラーメン屋の内装デザイン|ポイント、注意点、費用を徹底解説

ラーメン屋の内装デザイン|ポイント、注意点、費用を徹底解説

ラーメン屋の開業において、魅力的なメニュー開発はもちろん、内装デザインも成功を左右する重要な要素です。内装は、お客様の居心地や店舗の回転率、さらにはスタッフの作業効率にも大きな影響を与えます。

そこで、今回の記事ではラーメン屋の内装デザインで重視すべきポイントのほか、失敗しないためのコツを詳しく解説します。記事の後半ではラーメン屋の内装にかかる費用の目安、費用を抑える方法も紹介するので併せて参考にしてください。

ラーメン屋はお客様の回転率が重要

まず、飲食店の内装デザインでは、提供するメニューによって重視すべきポイントが異なります。特にラーメン屋では、限られた席数でいかに回転率を向上させ、売上を最大化できるかが成功の鍵となります。

回転率を上げるためには、以下の3つの時間を意識的に短縮する必要があります。

  • お客様の入店から注文
  • 注文から提供
  • 食事の終了から会計

もちろん、スタッフの迅速な対応も重要ですが、内装デザインやオペレーションなど、店舗の仕組みづくりからこれらの効率性を意識しておくことが重要です。

具体的には、空席状況が一目でわかるような間取りや、着席後すぐに注文できる環境を整えることで、注文までの時間を短縮できます。また、券売機を入口近くに設置することで、注文と会計にかかる時間を同時に短縮できるでしょう。

さらに、メニュー提供までの時間を短縮するためには、厨房内の什器や備品の配置を効率化することが重要です。また、厨房から客席までの動線がスムーズになるよう工夫しましょう。

ラーメン屋の内装デザインのポイント

お客様の回転率を上げるべき理由や、回転率の上がる工夫について触れてきました。もちろんメニューの提供や会計がスムーズになればお客様の満足度は上がりますが、ほかにも満足度向上のための内装にはポイントがあります。

お客様が一人でも入れるデザインにする

ラーメン屋は、お一人様や少人数で来店されるお客様が多いのが特徴です。そのため、外から店内の混雑状況や座席配置が確認できるよう、ガラス張りにしたり、窓を大きくしたりする工夫は、集客に効果的です。

また、入口付近が混雑していたり、入りにくい雰囲気があると、入店をためらってしまうお客様もいるでしょう。そのため、入口は広めに設計し、待ち時間が発生する場合には、入口付近が混雑しないよう、待機スペースを確保するなどの工夫が必要です。

さらに、ボックス席よりも一人用のカウンター席を多く設けたり、カウンター席に隣席との仕切りを設置したりすることで、お一人様でも気軽に入店しやすい雰囲気を演出できます。

オープンキッチンで調理工程を見せる

お客様から厨房内が見えるオープンキッチンは、調理のライブ感を楽しんでもらうための有効な手段です。調理中の湯気や香りが店内に広がることで、メニューの提供を待つお客様の期待感が高まるでしょう。

また、オープンキッチンは、清潔な厨房環境やスタッフの手際の良さをアピールする機会となり、お客様の信頼感向上に繋がります。

内装の色は汚れが目立ちにくい色を選ぶ

ラーメン屋では、スープや油が飛び散りやすく、壁や床が汚れやすいという特徴があります。もちろん、汚れた部分は清掃し、清潔に保つことが重要です。しかし、営業時間中に壁や床を頻繁に清掃することは難しいでしょう。

そのため、内装には、汚れが目立ちにくい中間色やダークカラーなどを選ぶと良いでしょう。ただし、全体を暗い色で統一すると、清潔感が損なわれる可能性があります。汚れの目立ちにくさと、デザイン性のバランスを考慮することが重要です。

床の素材は防水性・防酸性を重視する

床材は、油やスープがこぼれることを想定し、慎重に選ぶ必要があります。汚れの目立ちにくさはもちろん、防水性、耐酸性に優れた素材を選ぶことで、清掃の手間を軽減し、店舗を長期間美しく保つことができるでしょう。さらに、滑りにくい素材を選ぶことで、お客様やスタッフの安全性を高めることができます。

素材や加工にこだわると初期費用がかさむ場合もありますが、毎日の清掃の手間や長期に営業した場合のメンテナンス費用を考えれば、最初にメンテナンスしやすく長持ちするものを選ぶのは悪い選択ではないでしょう。

壁紙は凹凸の少ないものにする

壁は、お客様の目に入りやすい場所にあるため、汚れが付いていると店舗全体の印象を損ねてしまいます。特に、オープンキッチンの場合、厨房付近の壁はお客様から良く見えるため、注意が必要です。

凹凸が多く、防水性の低い壁紙は、汚れが溜まりやすく、清掃に手間がかかります。また、清潔な状態を維持できず、お客様からの印象も悪くなるでしょう。このような問題を避けるために、凹凸が少なく、清掃しやすい素材を選ぶことが大切です。特に、調理場付近の壁には、防水性の高い壁材を使用しましょう。

カウンター席の数と配置を工夫する

飲食店では、お客様とスタッフがスムーズに移動できるよう、十分な通路幅を確保しながら、できるだけ多くの客席を配置することが求められます。特にラーメン屋の場合、お一人様や少人数で来店されるお客様が多いため、カウンター席を効果的に配置することで、限られたスペースを有効活用できるでしょう。

カウンター席は、限られたスペースを有効活用し、できるだけ多くのお客様が利用できるよう配置しましょう。同時に、隣り合うお客様同士が快適に過ごせるよう、十分なスペースを確保することも大切です。さらに、スタッフが食事を終えた席をすぐに把握できれば、迅速に清掃を行い、次のお客様をスムーズに案内できます。

ラーメン屋の内装デザインの注意点

ラーメン屋の内装デザインの注意点

それでは、内装をデザインするうえで注意すべき点はあるのでしょうか?以下で詳しく解説します。

動線と回転率を意識する

内装をデザインする際には、座席数や厨房機器の配置など、スペースを最大限活用することに意識が向きがちです。しかし、回転率を向上させるためには、スタッフやお客様の動線を考慮し、人がスムーズに移動できるスペースを確保することが重要です。座席の配置や数はもちろん、通路幅なども十分に検討し、効率的な動線を実現しましょう。

におい対策を徹底する

ラーメンの香りは魅力の一つですが、過度なにおいは、お客様に不快感を与えてしまう可能性があります。そのため、内装を設計する段階で、「どの工程でどのようなにおいが発生するのか」「効果的に換気するためには、どのような設備が必要か」などを十分に検討しましょう。

におい対策の基本は、高性能な換気設備を設置することです。特に、調理中に発生するにおいの中でも、不快感を与えやすいものは、速やかに排出する仕組みが必要です。具体的には、厨房に直結した高性能な換気扇や、排気ダクトの設置が効果的です。

さらに、空気清浄機や脱臭機を導入することで、店内の空気循環を促し、におい対策を強化できます。これらの機器は、油や煙の粒子を吸着し、空気を清浄化する効果があります。加えて、壁や天井に防臭効果のある素材を使用することで、においの染みつきを抑え、長期的なにおい対策となります。

また、定期的な換気設備の清掃も重要です。汚れを放置すると、換気性能が低下するだけでなく、蓄積した汚れや劣化した油から不快なにおいが発生する原因となります。お客様に快適な空間を提供するためにも、定期的な清掃を行い、設備を適切に管理しましょう。

ガス使用容量の制限に注意する

ラーメン屋では、強火調理を行うことが多く、ガスの使用量が多くなる傾向にあります。ガスの使用量を直接制限する法律はありませんが、高圧ガス保安法、消防法、建築基準法などの安全基準によって、間接的に制限を受ける可能性があることを理解しておきましょう。

特に、ガス供給設備と換気設備が、店舗の規模やガスの使用量に対して適切に設計されているかどうかが重要なポイントとなります。例えば、都市ガスを使用する場合、ガスの使用量によっては、ガスメーターや配管の容量を増強する必要があります。プロパンガスを使用する場合は、ガスボンベの設置場所や容量に関する規定を遵守しなければなりません。

さらに、安全基準を満たすためには、厨房内のガス機器の適切な設置、防火対策、十分な換気設備の設置が必須です。これらの設備を整えることで、火災や不完全燃焼による一酸化炭素中毒などの事故リスクを軽減できます。

ガス設備の設置や使用計画については、ガス会社、厨房機器メーカーなどと十分に協議し、消防署の検査基準をクリアできるよう、事前に準備しておきましょう。

ラーメン屋の内装にかかる費用の相場

ラーメン屋の内装にかかる費用は、店舗の規模、デザイン、使用する素材などによって大きく異なります。一般的な目安として、10坪のラーメン屋を開業する場合、内装工事費用はおおよそ300万円から700万円程度です。この金額には、壁紙や床材の施工、厨房設備の設置、照明器具の設置、カウンター席の造作などが含まれます。

ただし、高級感のあるデザインにしたり、特注の設備を導入したりする場合は、1,000万円以上の費用がかかることもあります。内装工事費用が予算を超過すると、開店後の運転資金にも影響を及ぼします。そのため、資金計画を立てる際には、内装工事費用だけでなく、物件の賃料、保証金、広告宣伝費なども含めた総事業費を考慮し、余裕を持った予算設定をすることが重要です。

ラーメン屋の内装費用を抑える方法

上記のとおりラーメン屋の内装には大きな金額が必要ですが、工夫次第で削減することができます。最後に、内装にかかる費用を抑える方法を4つ紹介します。

既存物件の排気ダクトを流用する

ラーメン屋の厨房では、大量の蒸気やにおいが発生するため、高性能な換気設備が不可欠です。そのため、換気設備そのものを妥協することはできません。しかし、新しく排気ダクトを設置するとなると、高額な費用がかかってしまいます。

そこで、費用を抑えるために、以前も飲食店として利用されていた物件、つまり居抜き物件を選び、既存の排気ダクトを流用することを検討してみてはいかがでしょうか。特に、飲食店向けの居抜き物件であれば、排気ダクトだけでなく、厨房設備などもそのまま利用できる可能性があり、大幅なコスト削減に繋がります。

カウンター席を活用して施工面積を減らす

一般的に、カウンター席はテーブル席に比べて、一席あたりのスペースが小さく、シンプルなデザインで済むことが多いです。そのため、カウンター席の比率を高めることで、内装工事のコスト削減に繋がります。特にラーメン屋では、回転率が経営を大きく左右するため、カウンター席の活用は、内装工事費用だけでなく、ランニングコストの削減にも効果的です。

ただし、ファミリー層やグループ客をターゲットとする場合は、ボックス席を設けることも検討しましょう。周辺環境やメニュー内容などを考慮し、ターゲットとする客層のニーズに合わせて、カウンター席とボックス席のバランスを調整することが大切です。

なお、カウンター席は回転率を高める効果がある一方、お客様一人ひとりが利用できるスペースは限られます。そのため、カウンターや椅子の高さ、カウンターの奥行き、足元の荷物置きスペースなどに配慮し、限られたスペースでもお客様が快適に食事を楽しめるよう工夫しましょう。

厨房設備には中古品も使う

厨房設備にかかる費用は、内装工事費用の中でも大きな割合を占めます。新品の設備を揃えると数百万円かかることも珍しくありません。しかし、中古品やリース品を活用することで、設備投資費用を大幅に抑えられる可能性があります。

特に、冷蔵庫、ガスレンジ、シンクなどは、中古品でも十分に使えることが多いです。希望に合う中古品を、インターネットやリサイクルショップなどで探すのも良いですが、業務用厨房機器を専門に扱う業者に相談するのも有効な手段です。

ただし、中古品を購入する場合は、購入後の修理や買い替えのリスクも考慮する必要があります。結果的に、新品を購入するよりも費用がかさんでしまう可能性もあるため、購入前には、動作確認はもちろん、過去の故障歴やメンテナンス状況などを十分に確認し、状態の良いものを選ぶことが重要です。

照明デザインをシンプルにする

照明は、店舗の雰囲気を大きく左右する重要な要素です。しかし、凝ったデザインの照明器具は高価なものが多く、導入コストがかさむ傾向にあります。ラーメン屋では、明るく清潔感のある雰囲気が求められるため、過度にデザイン性の高い照明は必要ない場合もあります。

もちろん、店舗のコンセプトに合わせた照明デザインを考えることは重要です。しかし、シンプルなLED照明や既製品をベースに、間接照明やデザイン性の高い照明は、必要最低限の数に留めることで、コストを抑えながら、洗練された空間を演出できます。

また、照明にかかる電気代は、ランニングコストに大きく影響します。そのため、初期投資だけでなく、長期的な視点から、消費電力の少ないLED照明などの省エネ製品を選ぶことも、コスト削減に効果的です。

まとめ

飲食店の内装デザインでは、提供するメニューによって、重視すべきポイントや、経営効率を高めるための工夫が異なります。特にラーメン屋では、回転率を高めつつ、お客様にいかに快適に食事を楽しんでもらうかが重要なポイントとなります。

今回ご紹介した内装デザインのポイントやコスト削減の工夫を参考に、お客様視点を忘れずに、お客様から選ばれる魅力的なラーメン屋を目指しましょう。

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