利益を左右する重要ポイント! キャッシュレス端末の注意点
近年、飲食店で多様なキャッシュレス決済ができることが一般的になっています。数年前まではクレジットカード決済に対応していても利用できる銘柄が限られていることが多くありました。しかし、最近では対応ブランドが増え、QRコード決済や交通系電子マネーにも対応する飲食店が多く見られます。このような環境を実現するために重要な役割を果たしているのが、一つの決済端末で多様な支払い方法に対応するキャッシュレス決済システムです。
従来、自店で利用したいクレジットカードの銘柄がある場合、オーナー自身が申請して審査を受ける必要がありました。しかし、決済手段がこれほど多様化した現在、各社に個別に申し込むのは非常に手間がかかります。また、どの決済手段を用意すべきか見極めるのも難しいです。そこで、キャッシュレス決済システムを導入すれば、自店で申し込むことなく、クレジットカード、交通系電子マネー、QRコード決済など、多くの決済手段を利用できます。対応する決済手段が70種類を超えるシステムもあり、以前は大手飲食チェーンのみが整備できた環境を、個店でも簡単に実現できるようになりました。
開業前に決済システムを導入しておけば、メニューやオペレーションの改善に専念できます。開業後も、特定の決済手段が使えないことによる機会損失がなくなります。さらに、コロナ禍以降、再び増加しているインバウンド客はキャッシュレス決済の需要が非常に高いため、こうした背景からもキャッシュレス決済システムの需要は急速に高まっています。

キャッシュレス決済システムの選び方
キャッシュレス決済システムを導入する際には、主に4つの重要なポイントを考慮する必要があります。それは、決済手段の多さ、決済手数料、売上入金の早さ、そしてシステムの連携です。それぞれのポイントがなぜ重要なのかについて詳しく解説していきましょう。
決済手段の多さ
キャッシュレス決済システムには、それぞれ対応している決済手段の数に若干の違いがあります。多くのシステムでは、一般的なクレジットカードやQRコード決済、交通系電子マネーに対応していますが、差が出るのは海外の決済手段に対応しているかどうかです。例えば、キャッシュレス決済が盛んな中国で広く使われている「Alipay(アリペイ)」や「WeChat Pay」に対応しているサービスもあります。自店のターゲットに合わせて、導入するシステムを選定することが重要です。
決済手数料
決済手数料は、キャッシュレス決済システムによって異なります。同じQRコード決済でも、A社とB社で手数料に0.3%ほどの差があることも少なくありません。このわずかな差でも、キャッシュレス決済が主流となっている現在では、総額で大きな影響を与えることがあります。そのため、決済手数料のわずかな違いが、最終的には大きな差となって表れるのです。自店のキャッシュレス決済の比率を考慮しながら、適切なシステムを選ぶことが重要です。
売上入金の早さ
キャッシュレス決済では、会計から実際の入金までに時間がかかることがあります。キャッシュレス決済が増える中で、売上があっても資金繰りが苦しくなる飲食店も少なくありません。各システムがどのタイミングで売上を入金してくれるのかを確認しましょう。また、振り込み手数料の有無や自動入金の可否なども、キャッシュレス決済システムによって異なりますので、併せて確認することが重要です。
連携の良さ
キャッシュレス決済システムを選ぶ際には、POSレジとの連携の良さも重要なポイントです。もしPOSレジとキャッシュレス決済サービスの連携が悪いと、レジで表示された会計金額をキャッシュレス決済端末に手動で入力する必要があり、その際に入力ミスが生じることもあります。これにより、実際よりも少ない金額しかお客様から受け取れない場合があり、お店にとって大きな損失となります。
POSレジとキャッシュレス決済サービスが連携している場合、レジの金額を再入力する手間が省けます。お客様に端末を差し出して決済してもらえば会計が完了するため、会計のスピードが向上し、スタッフの作業負担も軽減されます。これにより、連携のメリットは非常に大きくなります。

キャッシュレス手数料の考え方
キャッシュレスが普及するにつれて、飲食店には新たな課題が生じました。それは手数料の高さです。クレジットカードの場合、手数料は最低でも3%がかかります。飲食店において、利益率が10%であれば繁盛店、5%でも非常に優秀とされる中、3%の手数料が引かれると、ほとんど利益が残らず、経営が厳しくなります。このため、ある有名飲食チェーンでは、最近まで現金払いのみで営業していました。それでも最終的には、キャッシュレス決済を導入せざるを得ないほど、その需要は高まっています。
キャッシュレスが普及した背景には、ポイントやマイルが貯まることも大きく関係しています。飲食店をはじめ、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど、キャッシュレス決済が可能な場所が増え、スマートフォンだけを持って外出する人も珍しくなくなりました。
しかし、決済手数料が大きな負担になると、店舗側はキャッシュレス決済システムの導入を躊躇してしまいます。この背景には、外食業界で長年価格への転嫁がタブー視されてきた歴史があるのも一因です。最近では、原材料費の高騰に伴い、値上げを行う飲食店が増えましたが、客離れを恐れて十分な値上げができない店舗も少なくありません。原材料費だけでなく、人件費や家賃などのコストも上がっている中、さらにキャッシュレスの手数料が加わると、安定した経営が難しくなるでしょう。それでは本末転倒です。
重要なのは、お客様に価値あるサービスを提供し、適正な価格を設定することです。キャッシュレス決済システムを導入する目的は、さまざまな決済手段を用意してお客様の利便性を高めることです。したがって、キャッシュレス手数料を価格設定に織り込み、その分の価値を提供できる店舗作りを行うべきです。
今後、歴史的な円安の影響もあり、原材料費の高騰はしばらく続くでしょう。その中で、価格を見直さなければならない場面もあると思います。しかし、単なる値上げではお客様の理解を得られません。付加価値を高めながら価格を上げることができれば、多くのお客様に納得してもらえるでしょう。キャッシュレス決済システムの導入も、付加価値を高める一つの方法であることは間違いありません。