いまや活用は常識!? スポットワーカー活用の勧め
以前までは求人広告を出せば、社員やアルバイトの採用はできていました。しかし、ここ数年、いくらお金を掛けても採用が成功せず、最悪の場合、一回の求人広告の掲載では面接に誰も来ないケースさえあります。一方で、人件費は高騰を続けていて、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県に関しては、最低時給が1000円を超えました(※2024年5月時点)。その影響もあり、以前と同じ人数で営業ができなくなったケースも目立ちます。人手が足りないがために、営業時間を短縮したり、定休日を増やしたりする飲食店も少なくありません。
こうした背景を受けて、注目を集めているのが、自分の好きな時間、場所、職種を選んで働くスポットワーカーです。スポットワーカーを募集できるサービスも軒並み伸びていて、特に有名なのが、株式会社タイミーの提供する「Timee(以下、タイミー)」ではないでしょうか。
タイミーは代表取締役の小川嶺氏が20歳の頃に立ち上げ、18年8月にサービスをスタートさせました。2024年2月時点で、登録者は700万人を超えており、マッチング率は90%以上を誇っています。人材が欲しい時間帯や求めるスキルを指定するだけで、即戦力のスポットワーカーを確保できるとあって、事業規模の大小を問わず、活用している飲食店は多いです。
今後、タイミーのようなサービスを前提とした店づくりが当たり前になる可能性があります。その理由を解説した上で、上手なスポットワーカーの活用法をみていきましょう。
解決が難しい外食業界の人手不足の現状
外食業界の人手不足が深刻な理由には、二つの原因があります。それが人口減少と、就職先として外食業界が選ばれない現状です。この機会に、それぞれの現状をデータから押さえておきましょう。
まず人口減少から見てみると、日本は 2008 年の 1 億 2808 万人をピークにして、人口が減少に転じました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると 2048 年には 9913 万人となり、1 億人を割り込む見込みです。その後、2060 年には 8674 万人まで減少し、2100 年には 5000 万人を下回るといわれています。総人口が減っているので、当たり前ではありますが、生産性人口も減少しています。生産性人口とは、生産活動の中心にいる 15 歳から 64 歳人口のことです。生産年齢人口は 1995 年をピークに減少に転じており、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると 2030 年には 6773 万人、そして 2060 年には 4418 万人となり、2015 年比で 45.9%も減少する見込みです。
生産性人口が激減すると、その影響は全産業に広がり、人材の奪い合いが起こります。そのとき外食業界は著しく不利な立場に立たされる可能性が高いです。それが2つめの原因の、就職先として外食業界が選ばれない現状につながります。ここ数年、大学生に人気の業界は、メーカーや商社、銀行、IT、コンサルなどで、残念ながら外食は上位に入ってきていません。転職市場でも同様です。自身のキャリアを踏まえて、外食業界で培ったスキルを生かそうとされる方はあまり多くありません。
それに加えて、コロナ禍を契機にアルバイト先としての人気も著しく低下してしまいました。当初は、新型コロナウイルスの感染を避けるためという理由が目立っていたのですが、現在は、時給で選ばれないケースが多いです。人材の獲得競争が起きて、外食業界では時給を上げています。しかし、他の業界ではそれ以上にアルバイトの時給を上げているため、相対的に外食業界の魅力が低下してしまっているです。
上記の結果、時給の高騰だけでなく、採用したアルバイトが他へ流出しないように抱え込む必要が生まれ、変動費であったはずの人件費が固定費になってしまっています。ただ、原材料費や賃料といったコストが高騰している中、固定費としてアルバイトの人件費を抱えてしまうと、利益が出づらくなってしまうのも事実です。そこで変動費に戻してくれる手段として、タイミーに関心が集まっている側面もあります。
タイミーのワーカーは優秀な人が多い?
タイミーの活用を検討するとき、一番の懸念点は、スポットワーカーのレベルではないでしょうか。結論からいって、スポットワーカーのレベルは申し分ありません。実際、多くの大手飲食チェーンでも活用されていて、中にはサービスレベルの高いお店も含まれています。
なぜワーカーのレベルを担保できるかというと、タイミー側でしっかりとした仕組みを構築しているからです。まず直前キャンセルしたスポットワーカーにはペナルティポイントを加えるなど、最低限のレベルが担保できるような仕組みをつくっています。その上で、勤務後にお店側がスポットワーカーを評価する仕組みがあるので、確かな能力を持ったスポットワーカーが可視化されているので、能力の高くないスポットワーカーとマッチングするケースはほぼありません。
タイミーのこうした特徴を踏まえて、必要最低限のアルバイトだけ確保し、人手が足りないときにスポットワーカーの力を借りて運営を行う飲食店も出てきています。また、所得税と扶養に問題から生まれる103万円の壁と、社会保険加入が必要になる130万円の壁の存在も、タイミーの活用を加速させています。年末年始に繁忙期を迎えたものの、103万円と130万円の壁によって、優秀なアルバイトがシフトに入れなくなるケースは珍しくありません。そのときもタイミーのスポットワーカーを活用すれば、スムーズな店舗運営をすることができるでしょう。
ただ、タイミーの活用で注意が必要なのは、業務が明確になっていないといけないことです。基本的にスポットワーカーには、アルバイトと同じ業務を任せることはできないため、バッシングや食器類の洗浄など、決まった業務をお願いすることになります。ですので、あらかじめどの業務を任せるかを決めて、活用するようにしましょう。
求人手段としてのタイミーの活用術
タイミー活用の大きなメリットは、スポットワーカーを無料で引き抜くことができる点でしょう。タイミー側も引き抜きを承認しているため、能力の高いスポットワーカーがいたら、「うちのアルバイトとして働きませんか」と、どんどんアプローチをして問題ありません。
冒頭で触れたように、昨今、高い掲載料金を払ってアルバイトの募集媒体に広告を出しても、採用に結び付かないケースが多いです。応募が集まらないため、基準を下げて採用を行ってしまった結果、サービスレベルが落ちてしまったお店も散見されます。また、採用に掛かるコストとして、教育コストが占める割合も大きいです。しかし、時間を割いて教育をしたにもかかわらず、ミスマッチが原因で早期離職してしまう事例も後を絶ちません。
一方で、タイミーならお店側はワーカーの能力を把握している一方で、スポットワーカー側も職場の雰囲気や求められているスキルがあらかじめ分かっているため、双方に認識の違いがなく、スムーズに定着します。高い採用費用がかからないのはもちろん、教育コストも抑えることができるので採用方法としてのメリットは大きいです。
スポットワーカーのマッチングサービスは、今後、さらに盛り上がっていく可能性があります。現に、2024年4月には株式会社メルカリが空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」を開始し、1ヶ月で250万人の登録者を集め、話題を集めました。Z世代を中心に、自由な働き方を求める層も一定以上存在しています。そうした動向もチェックしながら、スポットワーカーの活用を検討してみてはいかがでしょうか。