メインメニューの差別化の重要性
飲食店の成功を語る上で、欠かせないのがメインメニューの存在です。メインメニューは、看板料理とも言い換えることができるでしょう。メインメニューはお店のコンセプトを表現する目的以外にも、集客や差別化にも大きな力を発揮する非常に重要なアイテムです。最近では面白いメニューがSNSで拡散されて、一気に人気を集めるお店が登場することも珍しくなくなりました。以前にも増して、メインメニューの重要性が高まっているからこそ、納得のいくものをぜひ開発しましょう。
メインメニューの作り方のポイント
メインメニューの作り方については、いくつかの方法があります。代表的なものはマーケットインとプロダクトアウトです。マーケットインは、市場を起点に支持される商品・サービスを開発して投入する手法を指します。一方で、プロダクトアウトは、自店の強みを起点に商品やサービスを開発し、市場に投入する方法です。
飲食店に置き換えると、マーケットインの場合、市場環境を分析して、何が受けるかを突き止めた上でメニューの開発を行っていきます。ここ数年の流行を振り返っても、唐揚げやフルーツサンド、寿司、焼き肉、中華、おにぎりなど、さまざまな料理が注目を集めました。そうした流れの共通項を取り上げたり、流行ったお店のエッセンスを落とし込んだりして、多くの人の心を惹きつけるメニューを開発します。
一方のプロダクトアウトは、自社の強みが商品開発のスタートです。人によっては、寿司店の修行で培ったスキルや、焼き肉店で磨いた焼きの技術などが開発の起点になるかもしれません。また、生産者との関係性をはじめとした独自の仕入れルートも強みにはずです。そうやって開発したメニューにマッチした立地を探せたら、お店の成功確率を高めることができるでしょう。
どちらにしても必要なのは、マーケティングです。市場環境がどのようになっていて、その中で自分たちの強みは何で、どう戦っていくのかを描くことが、成功させるための必須条件になるといっても過言ではありません。
メインメニューに必要なストーリーとは
昨今、たくさんの情報に触れるようになり、流行り物や人気を博している商品に出会ったとき、なぜそれが人気なのかを調べる傾向が強くなっています。手元のスマートフォンで調べ、その結果に納得できて初めて、それを「体験したい」「食べてみたい」という気持ちになることが多いです。メディアなどからの情報を鵜呑みにせず、自身で検索して、情報を取捨選択している人が増えているともいえるでしょう。それを踏まえて、一番やってはいけないのは、食べてもらえば分かるという姿勢で臨むことです。
現在、飲食店はおいしくて当たり前です。そもそも日本の飲食店はレベルが高く、インバンド客が日本に期待することのランキングでも「食」が必ず上記にランクインしています。また、ミシュランガイドでは、東京の三つ星の数は世界1位を誇り(2024年時点)、世界的な美食都市の一つです。おいしいのが前提の上で、各店がサービスなどにも注力するとともに、有名店や人気店でもPRに力を入れているケースが少なくありません。その中で「来てくれたら分かる」という姿勢で臨んでいたら、多くのお店の中に埋もれてしまい、市場からの撤退を余儀なくされるでしょう。
そこで大切になるのが、メインメニューのストーリーです。食べるときにメインメニューのシナリオをきちんとお伝えし、なぜおいしいのか、なぜこれを勧めるのかを伝えられるように設計をしましょう。例えば、こだわりの産地を使ったメニューであれば、なぜそこの産地でなければならないかをしっかりと説明するといいかもしれません。また、何時間も煮込んだシチューや煮込みなどだったら、なぜそんなに長い時間煮込み、その結果、どんな味わいが生まれているのかを伝えていきます。
メインメニューのストーリーはPRをするときにも役立ちます。リリースを配信し、それが魅力的なストーリーであれば、メディアに取り上げられる可能性も高まるでしょう。お客様もストーリーに納得感があれば、ある程度の金額でも支払ってくれますし、おいしかったらリピートをしてもらえます。商品を売るのではなく、ストーリーを売るといってもいいかもしれません。ぜひ自店のこだわりが伝わる、ストーリーを設計してください。
一点注意が必要なのが、ストーリーには価値がないといけないということです。価値を生むには、ある程度の原価をかける必要があります。珍しい食材なら原材料費が、煮込み時間なら人件費が、それぞれかかってくるでしょう。ただ、どこにでも手に入る、誰でもできることには価値を見出しづらく、多くの人を惹きつけるストーリーにもなりません。また、最初は原価をかけていたものの、コストの上昇などで食材の質を落としたり、調理にかける時間を削減したりする場合も注意が必要です。意外と、以前との違いに気づくお客様は多くいらっしゃいます。そうなると、お店に裏切られたと感じ、二度と来店しなくなってしまうでしょう。品質をキープするためには、コストコントロールも欠かせません。価値あるストーリーをつくりだすためにも、メインメニューには原価をかけるとともに、しっかりとコストをコントロールしていくことをお勧めします。
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メインメニュー開発のヒント
メインメニューの開発に関しては、どんなものにするべきか迷う人も多くいるでしょう。基本的にアウトプットの質は、インプットの量に比例します。ライバル店や人気店をリサーチして、メインメニューを開発するためのヒントをつかんでください。
特にライバル店のリサーチは重要です。もし同じような体験価値を、よりリーズナブルに提供をしていたら、あなたのお店に来店する動機は著しく低下してしまいます。また、価格は同じにもかかわらず、似たようなメインメニューを、よりボリュームたっぷりに提供している場合でも同じです。ライバル店がどのような提案をしているかは、メインメニューづくりに迷っていなくても、必ず実施してください。
メインメニューの開発で迷っているときは、複数の近隣店舗を回る中で、そのエリアで提供されていない料理やサービスがあることに気が付くと思います。それをきっかけにメニューを開発し、ストーリーをつけることができたら、集客効果を期待できるものが開発でしょう。ある意味、ライバル店や近隣店のチェックは、マーケティングリサーチになっているといえるかもしれません。
また人気店からも学ぶべきことは多いです。人気店には、必ず人気の秘密があります。そもそもなぜ人気なのか、どんな人がどういった料理をオーダーしているのかを見るだけでも、メインメニューの開発のヒントを得られるのではないでしょうか。加えて、近年はSNSの活用が当たり前となり、飲食店の集客ツールとしても機能しているため、どのようなメニューが上がっているかを見るだけでも、大きな気づきを得られます。
繰り返しになりますが、メインメニューはお店のコンセプトを表現する目的以外にも、集客や差別化にも大きな力を発揮する非常に重要なアイテムです。お店の命運を左右するといっても過言ではない存在だからこそ、ぜひ力を入れて開発を行ってください。
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